国際エイズ学会(IAS)年次報告書2019から


(解説)国際エイズ学会(IAS)の公式サイトに今年度の年次報告書(2018-2019年7月)がPDF版で掲載されています。
 https://www.iasociety.org/Web/WebContent/File/IAS_Annual_Report_2019.pdf
 最初のページのケビン・オズボーン事務局長によるOPENING LETTER(はじめに)と13ページのDIFFERENTIATED SERVICE DELIVERYの部分の日本語仮訳です。
    ◇
国際エイズ学会(IAS)年次報告書 2018-2019年7月
はじめに
 HIV流行の初期には、二つの流行がありました:一つはウイルスそのものの流行、そしてもう一つは恐怖と嫌悪と非難の流行です。この二つの流行は30年を経て、いまなおはっきりと残っています。
 差別をするのはHIVとエイズではありません;人なのです。
 エイズの登場以来、新規感染とエイズ関連の死亡を減らすことに関しては大きな成果を上げてきました。しかし、スティグマと差別、社会的排除に対する闘いは十分ではなく、そのことがHIVの診断や治療、そしてこのウイルスを抱えて生きる人たちのケアを妨げてきました。HIVに関連した根強いスティグマは、多くの人に厳しい苦難をもたらす原因となり、グローバルコミュニティの成立を妨げてきたのです。
 スティグマと差別について考える際に、私たちはスティグマを二次的な問題として扱いがちです。国際機関がリップサービスでスティグマ対策の重要性を強調することはあっても、効果的かつ十分な規模の資金が確保されたことはなく、様々な状況に応じた適切な対応もできずにいます。たとえば、HIVの予防と治療という世界的課題の中で、スティグマは常に成功を妨げる最大の障壁でした。しかし、確固としたエビデンスに基づき効果的な政策やプログラムを実現できるだけの資金を配分するという意味で言えば、スティグマが対策の中心課題になっていたことはありません。
 HIVの流行の開始以来、スティグマと差別を混同する傾向が続いてきました。関連はあるものの、この二つは分けて考える必要があります。スティグマは社会現象です。特定の集団を取り上げ、その集団に属する人たちを着実に貶めていきます。
 スティグマは様々な形で現れます。最も多いのは外部要因がスティグマを生み出し、強化するケースです。ジェンダーや人種、セクシャリティ、経済力、そしてHIV関する根拠のない恐怖心など、すでに存在していた偏見がそうした外部要因になります。スティグマが強く内在化されることもあります:恥や汚辱、恐怖の意識により、社会から孤立していくこともあるのです。
 それでもなお、過去30年の流行を振り返れば、希望はあります。:HIVは復元力と勇気と決意を生み出すものでもあるからです。私たちHIVコミュニティ、自らの人生の中で専門的もしくは個人的に心を動かされた人たち、HIV陽性者、HIVに対し脆弱性を持つ人たち、HIVに影響を受けている誰かを知っている人たちのコミュニティは、どうしたら言葉だけでなく、行動でスティグマの核心と取り組むことができるのでしょうか。
   ケビン・オズボーン
   事務局長

分化型(患者に合わせた)サービス提供(P13)
 HIV陽性者の多様なニーズを認識することは、これまで同様、いまも極めて重要なことです。分化型サービス提供(DSD)は、カスケードの各段階を通じ、HIV陽性者のニーズと期待に合わせて保健システムにかかる不必要な負担を軽減できるようにHIVサービスを簡素化し、柔軟に対応するクライアント中心のアプローチです。IASの分化型サービス提供構想は、世界中の3700万人のHIV陽性者が生きていくために必要な良質のHIVケアを受けられるようになることを目指し、国やコミュニティのアドボカシーを促すとともに、ベストプラクティス事例やツール、エビデンスの国際的な普及を進めることでDSDを支援していきます。
 DSD構想は2018年に拡大をはかり、分化型(患者に合わせた)抗レトロウイルス治療提供を継続すると同時に、HIV検査サービス、およびキーポピュレーションへのDSDにも焦点をあてるようになりました。さらにこの計画は、各国が国内でDSD政策を取り入れ、ガイドラインを作成すること、コミュニティ主導でDSDの導入を求めることも支援しています。
実施事例(政策)
 DSD構想は、エチオピア、ガーナ、シエラレオネで患者に合わせた抗レトロウイルス治療提供政策の導入を支援しています。地球規模の政策レベルでは、世界保健機関(WHO)、米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の技術指導書で参照されています。

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