HIV/エイズの世界的流行と闘う バラク・オバマ、ジョー・バイデン

 (解説)米国の次期大統領、バラク・オバマ氏の選挙キャンペーンのサイトに掲載されていたHIV/エイズ政策のペーパーです。日本では、首相や野党党首がこれほどきちんとHIV/エイズに関する見解を述べているのを見た記憶は、残念ながら私にはありません。厚生労働大臣ですら、ごくまれに、それもおざなりの見解を明らかにする程度でしょう。エイズの流行状況の違いということでしょうか。

 米国内の対策と地球規模の対策の2つに分かれており、国内対策では就任後1年以内に《包括的なHIV/エイズ国家戦略の策定》を約束しています。治療、支援、予防にバランスよく目配りがされているのではないかと思います。《少数者コミュニティに対する不公正との闘い》にも一項目があてられています。《すべての妊婦を対象にした出産前のルーティン検査》が明記されている点も注目されています。いわゆる医療機関主導型検査に関しては日本も導入の是非、導入する場合に整備しておくべき条件などを明確にしておく必要があると思います。

 地球規模の対策では7月にブッシュ政権下で再承認された大統領エイズ緊急救済基金(PEPFAR)に基づく地球規模のHIV/エイズ・プログラムに対する資金拠出の増大をオバマ氏も約束しています。《新PEPFARのための法律は、HIV/エイズに対する資金はイデオロギーではなく、効果の上がっている対策に使うことを確認している》という記述は重要ですね。純潔教育重視でコンドーム使用促進やリプロダクティブヘルスには冷淡だったブッシュ政権とはかなり異なるエイズ政策が推進されることになりそうです。

英文は
BARACK OBAMA AND JOE BIDEN: FIGHTING HIV/AIDS WORLDWIDE
http://www.barackobama.com/pdf/issues/FactSheetAIDS.pdf


 日本語の仮訳は以下の通りです。

HIV/エイズの世界的流行と闘う バラク・オバマ、ジョーバイデン

 《私たちの誰もがエイズの影響を受けています。そして、この危機によって試されているのです。対策に取り組むつもりがあるかどうかということだけでなく、人が生み出す分断や論争を乗り越え、対策を形成していく能力を試す試験でもあります。アフリカのような場所に行き、深刻な事態を目の当たりにすれば、これは治療と予防のどちらを優先させるかとか、どんな予防がいいかといった問題ではないことが分かるはずです。科学か価値観かという問題ではないのです。両方が重要です。そうです。この病気と闘うためには、もっと多くの資金が必要です。しかし、同時に、意識の変革、文化や物事の受け止め方の変革も必要です。社会事業家も科学者も、そして政府も教会も、単独でこの問題を解決することはできません。すべての人が力をあわせてエイズに立ち向かう必要があります》(バラク・オバマ 2006年12月1日、カリフォルニア州レイクフォレストにおける世界エイズデーのスピーチ)

【HIV/エイズの世界的流行と闘うためのバラク・オバマとジョー・バイデンの政策】

 世界には現在、推定で3300万人のHIV陽性者が生活している。米国内のHIV陽性者だけでも100万人を超えている。そして、平均すると世界で毎日6000人がエイズのために死亡している。HIVに関しては多くのことが解明され、効果的な治療法も開発されているにもかかわらず、HIV感染は減っておらず、特定の人種、民族グループでは実のところ、劇的に増加しているのだ。バラク・オバマとジョー・バイデンはHIV/エイズの世界的流行、およびマラリア、結核との闘いにもっと力を入れて取り組まなければならないと考えている。バラク・オバマは2006年、ケニアを訪問し、ミシェル夫人とともにHIV検査を受けた。アフリカの男女に検査を受けるよう勧めるためだ。バラク・オバマとジョー・バイデンは、この流行と闘うために党派を超えて協力しなければならないと考えている。バラク・オバマはイリノイ州および米上院の議員として、HIV/エイズ対策への理解を呼びかけるとともに、米国内、および海外のエイズ対策予算の増額を求め、活動してきた。米国大統領になったら世界の指導者としてエイズとの闘いに取り組み続けるであろう。

◇アメリカのHIV/エイズ対策
HIV/エイズ国家戦略の実施:バラク・オバマは、大統領就任の最初の1年ですべての連邦政府機関が関わる包括的なHIV/エイズ国家戦略を策定し、実行に移すことを約束してきた。その戦略はHIV感染を減らし、ケアへのアクセスを拡大し、HIV関連の保健に関する不公正をなくしていくものになるだろう。測定可能な目標と達成期限を示し、説明責任を果たすメカニズムが盛り込まれることになる。イリノイ州でオバマは、HIVスクリーニング検査促進のための公的なサービスを求める法律に賛成している。大統領として、オバマはエイズ啓発の充実に取り組み続ける。

 国の医療保健システムの確立:米国では約4600万人が健康保険のない状態である。バラク・オバマは最初の任期中にすべてのアメリカ人が質の高い医療を経済的な面からも受けられるようにする国皆健康保険法案に署名すると約束している。オバマ-バイデン保健プランは、すべてのアメリカ人に包括的で受けやすい医療保健を提供することで、典型的な米国家庭が年間2500ドルの医療支出を節約できるようにする;米国の医療保健システムを改革して医療費の増大を抑え、医療ケアの質の向上をはかる;疾病の予防と自然災害、人為災害の防止のために公衆衛生を強化する。オバマ-バイデン保健プランは、HIV陽性者に生命を守るための治療とケアのアクセスが確実に確保できるようにする。

 低所得のHIV陽性者に対するメディケイドの適用:オバマは、もっと多くの低所得のHIV陽性者にメディケイドを適用するためのHIV早期治療法の共同提案者である。この法案はHIV感染の治療に必要な薬を得られる人を増やすことにもなる。

 少数者コミュニティに対する不公正との闘い:HIV/エイズは他の人たちより厳しい状況に置かれているコミュニティを襲う。たとえば、アフリカ系米国人が米国の人口に占める割合は13%だが、年間のHIV/エイズ新規症例では49%に達している。エイズは25-34歳のアフリカ系米国女性の最も大きな死亡原因であり、同年齢層の男性の死亡原因としても3番目である。2005年にはHIV陽性の女性の64%が黒人だった。首都においては、HIV感染の新規報告の81%、エイズ患者の84%がアフリカ系米国人で占められている。バラク・オバマとジョー・バイデンは、マイノリティのコミュニティにおける革新的なHIV/エイズ検査計画促進への資金の重点的投入、教会からコミュニティ組織に至る幅広いコミュニティの指導者との協力強化を約束している。一方でHIV感染とエイズ発症を大きく拡大させる貧困の厳しい現実とも闘わなければならない。バラク・オバマとジョー・バイデンはエイズの流行の大きな拡大要因となる貧困やホームレスの状態の解消に向けて継続して闘っていく。エイズが最も急速に拡大している有色人種のコミュニティの人たちに焦点をあて、より良いケアを提供していく必要がある。バラク・オバマとジョー・バイデンは、健康保険へのアクセスや予防対策と公衆衛生の改善に取り組むことで、保健分野における不公正の根本的な原因と闘っていく。また、医療の質的な評価と報告、患者のナビゲーション・プログラムや医療従事者の多様化といった効果的な介入の実施により、医療システムの改革にも挑んでいく。

HIV陽性者の生活の質の改善:バラク・オバマは、米国の低所得層のHIV陽性者50万人以上に対し、延命治療とケアの重要なアクセスを提供するライアン・ホワイト・ケア法(RWCA)の強力な支持者である。RWCAはHIV陽性の患者に対するプライマリー・ヘルスケアと支援サービスのための連邦政府の最大の資金源のひとつとなっている。通学の権利を求めて勇気ある闘いを続け、HIV/エイズに関して国民に大きな教育の機会を与えたインディアナ州の十代のHIV陽性者、ライアン・ホワイトの死後、彼にちなんで制定された法律である。最近のRWCAの再承認を通し、オバマはRWCAサービス提供者、シカゴ市公衆衛生当局、イリノイ州公衆衛生当局と協力して、イリノイ州および全米におけるプログラムの改善に関する分析を行い、その方法を見いだした。バラク・オバマとジョー・バイデンは、RWCAの受益者が依拠している多角的なケアを守り続けていく。

 エイズ予防の促進:治療のアクセス確保に加え、バラク・オバマとジョー・バイデンは、新規感染の予防に力を入れる必要があると考えている。予防に力を入れない限り、治療の需要に対応し続けることはできない。しっかりとした科学的な根拠に基づき、何が有効に機能するかを見極めて戦略を立てる必要がある。バラク・オバマとジョー・バイデンは、年齢に応じた包括的な性教育を支持する。科学的な知識に基づくHIV予防プログラムへの政府資金の拡大を支持する。受刑者に対する刑務所内でのHIV感染を防ぐためのJUSTICE法を支持する。また、薬物注射使用者とその配偶者、子供に対するHIV感染を減らすための針交換プログラムに対し、現在禁止されている政府資金援助の解除法案も支持する。

 HIV陽性者に対する適切かつ安全な住居の確保:バラク・オバマとジョー・バイデンはHIV陽性者の住居確保(HOPWA)その他の適切なハウジングプログラムに対する資金助成の増額を支持する。これらのプログラムは、障害を抱えていたり、低所得だったりする米国のHIV陽性者のために快適で安全な住居を保証することを目的としている。

 研究資金の拡大:バラク・オバマとジョー・バイデンは研究資金、とりわけワクチン、マイクロビサイドなど予防の選択肢を広げるための研究資金を増額する。マイクロビサイドは現在、HIV感染や他の性感染症の予防のために女性が利用できる手段として開発が進められている。バラク・オバマはオリンピア・スノー上院議員(共和党、メリーランド州選出)らとともに、エイズとの闘いにおいて女性を力づける製品の開発を促進するため、マイクロビサイド開発法案の提出の努力を続けてきた。米国では過去20年でエイズ患者に占める女性の割合が4倍に拡大している。今日では、新規のHIV/エイズの診断の4分の1以上が女性である。

 妊娠女性に対するHIV/エイズ検査のアクセスの拡大:米疾病対策センター(CDC)は自発的なHIVスクリーニング検査の中に、すべての妊婦を対象にした出産前のルーティン検査を含めるべきだと提言している。イリノイ州上院議員として、バラク・オバマは、出産前HIV予防法の提案者となった。この法律は、妊娠女性に医療保健サービスを提供するすべての医療専門家に対し、妊婦に対するHIVカウンセリングを提供し、HIV検査を受けることを提案するよう求めている。彼はまた、イリノイ州に対し、イリノイ保険規則、保健管理組織法、出産前HIV検査もカバーする自発的保健サービスプラン法に基づく健康保険の整備を求める法律を通している。


【地球規模のHIV/エイズ対策】

 地球規模のHIV/エイズとの闘いに向けた普遍的アクセスの提供:21世紀において達成すべき自由は、政治的自由に限るものではなく、恐怖からの自由、欠乏からの自由も意味していることをバラク・オバマとジョー・バイデンは理解している。エイズと闘うための包括的で長期にわたるアプローチは、我々が共有すべき安全保障と人間性の確保に必要とされる重要な投資であるとバラク・オバマとジョー・バイデンは信じている。このため、地球規模のHIV/エイズとの闘いに対し、世界基金に対する応分の負担を含め、2013年までの5年間で少なくとも500億ドルの拠出を行うことを約束している。この資金によって、治療を受けられるHIV陽性者の数を2倍に増やし、生存するための治療を緊急に必要としている人の3分の1が治療の機会を得られるようになる。また、この資金により、エイズで両親を失って孤児になったり、弱い立場に置かれたりしている何百万人もの子供たちを助け、少なくとも100万人の保健医療従事者を増員し、女性や少女に対する暴力を防ぎ、米国の支援が十分に有効に生かされるよう保健医療システムを強化することなど、米国がブッシュ政権時代に行った約束を果たすことも可能になる。

 PEPFARの再承認と強化:米国は大統領エイズ緊急救済基金(PEPFAR)により地球規模のHIV/エイズ・プログラムに対する資金拠出を大幅に増やした。しかし、そのプログラムに対しては批判も大きかった。バラク・オバマは最近署名された新PEPFARの実行が第一の優先課題だと考えている。バラク・オバマが長い間支持してきた新PEPFARのための法律では、HIV/エイズに対する資金はイデオロギーではなく、効果の上がっている対策に使うことを確認している。

 保健基盤の強化:バラク・オバマとジョー・バイデンは、貧困国におけるHIV/エイズの予防と治療、基本的な保健医療の提供、マラリアと結核の拡大防止、鳥インフルエンザその他の感染症の世界的流行の予防と必要なら封じ込めなどのために求められる保健基盤の整備を可能にする能力の強化に対し、米国の投資を増やすことを約束している。

 世界基金に対する拠出の増額:バラク・オバマとジョー・バイデンは、米国の援助資金が他国政府および民間からの資金とあわせて効果的に生かされ、途上国の背負った過重な負担を軽減できるようにするため、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)に対する米国の拠出の増額を支持する。

 購入可能な医薬品のアクセスの拡大:バラク・オバマとジョー・バイデンは、途上国のHIV陽性者に対し、HIV/エイズ治療のための安全で購入可能な価格のジェネリック薬に対するアクセスを保証すべきだと考えている。少数の巨大製薬会社と保険会社が生命を救うのに必要な薬にかけてきた締め付けを解くつもりである。WTOのTRIPS協定(知的財産権の貿易関連の側面に関する協定)のもとで、主権国家が公衆衛生上の必要から品質の保証された低価格のジェネリック薬に対するアクセスを確保する権利を有しているとの考え方を支持している。バラク・オバマとジョー・バイデンはまた、米国の納税者のお金で開発された医薬品を途上国に対し特許料なしで提供できるようにする人道特許政策を支持している。

 きれいな水に対する投資:多くの人が購入可能な医薬品へのアクセスを確保できるようにすることとあわせ、先進国は生命を救う薬を飲むために必要となるきれいな水の確保のためにも投資をしなければならない。世界で10億人以上がきれいな水に対するアクセスをすでに欠いており、その数は気候変動により増加している。年間13億ドルに投資を増やすことと「ポンプと遊ぶ」のような革新的プログラムによって、バラク・オバマとジョー・バイデンはきれいな水へのアクセスを拡大し、衛生環境を整備する。

 教育の格差解消:世界中で1億人の子供(うち6000万人は女の子)が学校に通えない。2010年までにこれらの子供たちが学校に通えるようにするには年間100億ドルが必要である。米国が応分の負担をするため、バラク・オバマとジョー・バイデンは少なくとも20億ドルを世界教育基金に拠出する。

 ミレニアム開発目標(MDGs)の達成:大統領として、結核の死者とマラリアの患者を半減させることを含むミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けて応分の負担を行うため、バラク・オバマは対外援助を年間250億ドルから500億ドルへと倍増させる。2005年には、オバマはミレニアム開発目標達成のための国際協力法の共同提案者となった。バラク・オバマは、世界の最も弱い国々において、健康で教育の行き届いたコミュニティを作り、貧困を減らし、市場を育て、富を生み出すのを助けるための戦略的ゴールにこの新たな支出を役立てる方針だ。彼はまた、弱い国々がテロリズムと闘い、殺戮兵器の拡散を防ぎ、HIV/エイズの予防・治療や鳥インフルエンザの調査と封じ込めに必要な保健基盤を整備強化するのを助ける。

 死をもたらすすべての病気との闘いを助ける包括的な貧困削減策に投資:HIV/エイズがもたらした大きな痛手に加え、マラリアと結核が途上国で何百万もの人の命を奪い、経済の生産性を引き下げている。HIV/エイズと闘うための投資は、病気の予防や子供の健康の改善と生存など他の主要な開発分野に必要な資金を削って持ってくることはできない。バラク・オバマとジョー・バイデンは、米国が包括的な貧困対策プログラムに取り組む約束をしていることを確認する。

 途上国の債務削減:途上国は驚くほど莫大な対外債務を背負っており、それが自国の経済的発展を妨げ、保健、教育、社会基盤整備への投資を極めて困難なものにしている。サハラ以南のアフリカ諸国の債務は2350億ドルで、域内の国内総生産(GDP)の44%に達しており、1990年より33%も増えている。バラク・オバマとジョー・バイデンは他の先進国、国際機関と協力して、途上国が財政破綻を脱するよう改革を求めていく一方で、残された有償資金協力の債務は免除する方針だ。バラク・オバマとジョー・バイデンは、途上国が世界貿易システムから利益を得られるようになるよう米国の経済的パワーを活用して貿易と開発政策の改善をはかっていく。オバマは、重債務貧困国に対し、多国間の債務救済を実施するため、2005年の多国間債務救済法の共同提案者となった。


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック