国際医療品購入ファシリティ(UNITAID)

(解説) エイズ、マラリア、結核薬の購入メカニズムとして10月に発足したUNITAIDの憲章(prospectus) の翻訳。邦訳にあたった日本リザルツ、校正を担当したオルタモンドの両団体のご了解をいただき、転載しました。日本リザルツの担当者によると、「憲章の最終版は9月1日発行分ですが、当翻訳はそのひとつ前の最終草案8月23日付けのものを訳しています」とのことです。




国際医療品購入ファシリティ(UNITAID)
2006年8月23日

国際医療品購入ファシリティUNITAID ― 歴史的な発足

飢餓と貧困問題解決のため、安定的な資金の供給を可能にする機能について、国際社会は長い間苦慮してきた。2004年の飢餓と貧困と闘うニューヨーク宣言を100カ国以上が支持し、2005年9月14日に国連で採択された、途上国支援のための革新的な開発資金源に関する宣言も、79カ国が支持した。このような合意は、このような資金供給が重要であり、また技術的にも政治的にも可能であることから実現したものである。

疾病と貧困は解決不可能な問題ではない。蔓延している疾病についても治療法は存在する。途上国支援のための資金の供給は、グローバリゼーションにより、より革新的な方法で行うことが可能になった。フランス、ブラジル、チリ、ノルウェー、英国が、WHO、UNAIDS、UNICEFや世界エイズ・結核・マラリア対策基金などの国際機関と連携し、またNGOや、クリントン財団などの私設財団が、と治療薬と診断薬の費用を下げることにより、途上国の貧しいエイズ、マラリア、結核患者の治療を拡大するための取り組みに参加している。

 途上国に住む最低でも600万人のHIV感染者が、抗レトロウィルス薬(ART)を緊急に必要としているにも係わらず、2005年に実際に供給されたのは130万人のみであった。子どもを含め、必要な人すべてに医薬品を供給することは必要不可欠である。安定的な供給のためには、必要とされている治療薬や診断薬を、現在施行されているアクセスの中でさらに供給しやすくしていくことが重要である。多面的な予防プログラムや、セラピーの実施、新しい技術の導入や国家レベルでのキャパシティビルディングが重要であることはすでに認識されている。
 マラリアについても問題が多い。予防可能な病気であるにも係わらず、アフリカの5歳以下の子どもたちが30秒に1人の割合で死亡している。WHOの試算では、年20億ドルの投資で、この被害は半減できるとしている。さらに、マラリアは現状の治療法に耐性ができることによりコストが上昇し、アルテミシニンを組み込んだ新たな治療法(ACT)が必要になってしまう。
 結核も予防と治療が可能な病気に係わらず、特にHIV感染者にとって、公衆衛生の大きな問題として残り続けている。毎年170万人以上が結核によって亡くなっており、900万人(95%が途上国に居住しており、そのうちの10%は子どもである)が新たに感染している。多剤耐性結核(MDR-TB)が毎年50万人の割合で増加しており、治療にはコストの高い治療薬を組み合わせて使用しなければならない(第2選択薬
抗結核薬)。

エイズ・マラリア・結核対策にとって、近年の政治的取り組みや資金の増加は大変喜ばしい。現場の資金が増加しただけでなく、アフリカ、ラテンアメリカなどの国々による取り組みも見られ、2002年の世界基金の設立、フランス、英国、ヨーロッパ委員会、米国(PEPFAR)による二国間の資金供給、WHO、世界銀行、UNAIDS、UNICEFを中心とし、クリントン財団やゲイツ財団などの私設財団などによる多国間の供給も活発に行われている。このような取り組みにより、ユニバーサルアクセスは現実味を帯びてきているが、複雑な面もある。UNITAIDは、現状の治療メカニズムを複雑化せず、強化することを明確に打ち出している。UNITAIDは、価格を下げることにより、長期的かつ計画的に治療薬と診断薬を供給し、現状では殆どの途上国で購入不可能な治療薬へのアクセス上昇を目標としている。

このようなメカニズムを支援し、また拡大を目指する国々により「連帯とグローバリゼーション:疾病の蔓延防止と開発のための革新的資金調達」という国際会議が2006年2月28日から3月1日まで開催された。短期間にも係わらず、44カ国による資金調達のためのパイロット・グループが確立された。UNITAIDによって進められている取り組みにならい、これまでに18カ国が国際的な連帯のための貢献(国際連帯税)による参加を表明している。

UNITAID共同宣言は、ミッション、行動指針、目標の概要を含め、2006年6月2日にニューヨーク国連本部にて、ブラジル、チリ、フランス、ノルウェーにより発表された。

この宣言後、UNITAIDはその活動により重要な成果をあげてきた。機動力を確保するため、ブラジル、チリ、ノルウェー、フランス、英国による中心国のグループは、それぞれの疾病において重要度の高い活動を特定し、連携パートナーと進めるプロジェクト内容の原則を示し、設立時には資金運用部と事務局をWHO内に置くと決めるなど、医療品の購入前に必要な手続きを行った。UNITAIDは関係機関すべてとこれらの議題を共有するよう希望している。

以下のミッション、行動指針、目標について、中心国グループが同意

UNITAIDのミッションは、途上国の貧しい人たちのために、HIV/エイズ、マラリア、結核の診断のスピードを上げ、また高品質な治療薬を安価に供給することにより、治療のアクセスを向上させることである。

UNITAIDは、安定的かつ予測可能な資金源を基盤とし、これらのエリアにおける長期的な支援を行う独自性を持つ。永続的で信頼性の高い機能は、航空券連帯税のような革新的な資金調達メカニズムによる資金源により保障されている。任意の寄付やODA(政府開発援助)も、予測可能性、追加性、安定性という包括的な原則から、資金源として考慮することができる。

ミッションを達成するために、UNITAIDは以下の重要な原則を考慮する
 UNITAIDは連携パートナーと相互補完的な活動を行う。国および国際レベルの活動を支援することにより、現状の国際援助機関を補足する。既存の機関やメカニズムと重複する活動は行わない。
 UNITAIDは連携と効果的な援助の原則を遵守する。
 UNITAIDは順応性が高く、独立した透明性のある機関である。

これらの原則に従い、以下の目標が定められた。安定性が高く、予測可能で追加の余地のある資金源により、治療薬と診断薬の需要に答え、また製薬市場に影響を与えることにより、以下を試みる。
 治療薬及び診断薬の価格を低下させる
 治療薬及び診断薬の供給量を増やす
 治療薬及び診断薬の価格低下のための戦略は、市場競争を基盤とする。知的所有権により価格を下げることが難しい場合には、貿易関連知的所有権(TRIPS)協定と公衆衛生に関するドーハ宣言の枠組みに基づき、強制実施を行う国々を支援する。また、その他の革新的解決策を用いて途上国における治療薬使用の障害を取り除く。

途上国の人々の医薬品へのアクセスを大幅に拡大するため、これらの目標に向け活動を行う。

UNITAIDは最もインパクトの大きい活動を集中して行う

このような問題の解決のためにも、連携パートナーはUNITAIDが機能的であるよう求めている。最初から、効果的かつ効率的で、結果のでる活動が重要であると強調している。UNITAIDは実用的なアプローチを採用するため、必要な場合には方法を変更することも可能である。

連携パートナーを通じて、UNITAIDは国家保健システムの手続きに則り、それぞれの国レベルで必要とされている医薬品を購入する。この活動は世界的な公衆衛生の観点から行われるものである。

中心国グループは2006年に具体的なプログラムを開始することが重要との認識で一致し、2006年4月20日と21日ジュネーブに集まったパイロット・グループはこれを支持した。このためUNITAIDは
WHO、世界基金、UNICEF、UNAIDS、クリントン財団といった中心となる専門的パートナーと連携し、2006年第4四半期から開始するプログラムの作成を行っている。中心グループは、以下のプログラムにおいて関係機関に早急に次のステップへの「認可」を与えるという合意に至った。

 HIV/エイズ
• 小児抗レトロウィルス剤(ARVs):UNITAIDは2007年に30カ国において10万人の子どものための抗レトロウィルス剤購入資金を支援する。このプログラムのために2006年第4四半期に170万ドル、2007年に2550万ドルが必要になると見られている。
• 第二抗レトロウィルス剤(ARVs):16カ国の10万人の患者に第二抗レトロウィルス剤を供給する。2007年には6800万ドルが必要と見られている。
 マラリア
• アルテミシニン(ACTs)による治療の拡大:世界基金により資金拠出が行われているアルテミシニンによる治療を、2006年末までに8カ国2830万ドルまで増加させる。このプログラムには2006年に3410万ドルが必要と見られ、資金が確保できれば2007年に開始の予定である。
 結核
• 小児結核(TB):UNITAIDは2007年に80%が5歳以下と想定される15万人の子どもの治療を支援する。UNITAIDにより治療を受ける子どもは、結核を発症していると推定される90万人の子どものうちの17%を治療することになる。このプログラムには2006年に82万5千ドル、2007年に490万ドルが必要と見られている。
 プリクオリフィケーション(事前評価)
• UNITAIDの活動分野に合わせ、早急かつ効果的に新製品を購入できるよう、WHOのプリクオリフィケーション・プログラムを支援する。2006年第4四半期に100万ドル、その後は全体の2-3%を負担する方向で理事会にて審議の予定である。

中心国グループは、最初の役員会議において報告が行えるように、いくつかのプログラムにおいて、迅速に準備し施行するという合意を行った。

 PMTCT(母子感染予防):PMTCTに対し包括的な取り組みを行い、妊娠中の女性がPMTCTに入る場合に子どものケアを行うことにより、感染した幼児の治療につなげることが出来る。
 多剤耐性結核(MDR-TB):第二選択薬へのアクセスを上昇させ、また価格を下げることにより、事実上治療不可能な多剤耐性結核の蔓延を防ぐことができる。
 世界的なアルテミシニン(ACTs)による治療の支援:製造者に直接支援を行うことにより、アルテミシニンの価格を下げる。
 緊急事態に備えたアルテミシニン(ACTs)の備蓄:マラリアの新たな流行が起こった場合に、早急かつ柔軟に対応するため、アルテミシニンを備蓄する。

UNITAIDは既存の団体と連携し活動を行う

これらの目標を達成するため、UNITAIDは既存の他団体と建設的に連携し活動を行う。具体的な技術パートナーは、WHO、UNAIDS、UNICEF、世界基金、クリントンHIV/エイズイニシアティブなどである。UNITAIDは、医薬品の調達、価格の交渉、運搬と供給、監視などのUNITAIDの活動分野において、より経験のある他団体と密に連携し、また必要によっては依頼するという活動体制を取る。

 WHO(世界保健機関)は国連の保健分野担当機関である。WHOの目的はすべての人々の健康を保障することである。WHOの持つ権限とその責任は、加盟国の保健分野において、保健内容の標準化、疾病についての監視と評価(M&E)、保健システム、及び技術的な支援について指導的な立場にあることである。
WHOは必須医薬品、薬品の供給、保健システムの構築、結核・HIV・マラリアプログラムの構築と施行といった、UNITAIDと関連のある分野において豊富な経験を持っている。
 UNICEFは国連の技術的支援による各国レベルにおけるHIV/エイズ治療薬の調達と供給の分野において、UNITAIDの指導的な役割を果たしている。UNICEFは医薬品配給システムを利用し、患者に薬を届ける豊富な経験を持っている。治療薬調達の分野においてUNITAIDとUNICEFは緊密な連携を取る。
 世界エイズ・結核・マラリア対策基金の目的はUNITAIDのミッションを支援し補完するものである。特に世界基金は各国レベルとの直接的な連携関係のもとに活動を行っている点に独自性がある。効果的な活動のためには国レベルとの連携関係が不可欠である。両機関とも治療へのアクセスの上昇を目指しており、世界的な市場の改善を求めている。世界基金は支援プログラムの選択と監視のためのシステムをすでに構築している。UNITAIDの活動分野である三大感染症を対象としたこの活動システムを利用することにより、活動資金を早急に供給し、必要な患者に医薬品を提供することができる。このためUNITAIDと世界基金は、プログラム施行のパートナーとして重複を避けて相互補完的に活動し、最大の効果を上げることが出来る。
 クリントン財団は製造者および各国政府と連携することにより、HIV/エイズ患者に必要な製品の市場を形成し、治療薬及び診断薬の価格を下げ、また各国政府への技術的な支援によりそれを保障する。クリントン財団はUNITAIDと連携し、購入予定の薬医薬品の価格を下げるため活動する。UNITAIDの目標達成のため小児エイズ患者の分野でも活動を行う。
 NGOおよび市民社会との強力な対話は、患者とコミュニティからの要望を収集するために不可欠である。

UNITAIDはこれらのパートナーと緊密に連携し、プロジェクト運営方法を探ってきた。医薬品の価格を下げることと、治療薬および診断薬などの医薬品の購入を活動の中心としており、患者のための活動を推進するためにも、UNITAIDはパートナーとの連携関係を重視する。医薬品の調達と供給の管理は、医薬品の在庫と各国政府の受け入れ状況により変更する。受け入れ側はUNITAIDから供給される医薬品を要望する場合もあれば、自国の生産品を使用する場合もある。どのような場合においても、UNITAIDは費用対効果が高く、高品質な医薬品を安価で提供できるメカニズムでの活動を行う。

UNITAIDの管理モデル

ミッションを満たし、目標を到達するため、UNITAIDは以下の概要に沿って組織の立ち上げを行う。

 UNITAIDは効率的な事務局により資本を最大限に活用し、費用対効果の高いプロジェクト運営を行うことによりミッションと目標の達成を目指す。
 活動を機敏に行うため、現在必要とされている予算に合わせ組織作りを行う。活動開始の初めの年の終わりに、詳細は決定される。

これらの業績を生み出すため、UNITAIDは以下の取り組みを行う

 理事会と事務局による組織作りを行う
• 理事会はUNITAIDの目標、活動範囲、ワークプランを決定、修正、また認可する責任を負う。具体的にはプロジェクト進展状況のM&E、需要に対するギャップや不足具合の特定、パートナーへの活動要請、年度ごとに理事会により用意される会計結果の監査及び予算の認可、事務局長の任命と再検討(必要な場合には他の事務局員も同様)である。理事会は患者への負担を最大限減らすよう努力する。
• 理事会は、市民社会(NGOや病気と共に暮らすコミュニティ)を含む政府およびその他の関係者により必要な能力と代表制をもって形成される。暫定理事会はジュネーブでの会合により決定される予定で、資金供給国から5名、アフリカ、アジアから1名ずつと、NGOから2名による合計9名により形成される。アフリカ代表はアフリカ連合から1名を選出し、アジアからは類似したメカニズムのもと1名を選出する。NGOは先進国から1名、途上国から1名の計2名を選出するよう要請される予定である。理事会は関係者協議会を設立し、決定事項の連絡および報告を行う。
• 10人から15人で形成される事務局の役割は以下の通りである。(1)製品、受益者、供給戦略とパートナーについての提案(2)理事会の決定事項を施行しパートナーとの連携関係を維持する(3)M&E情報の収集と結果の報告(4)管理人への予算支出の指示(5)上記の事項に必要な事務処理。

 受益者組織を設立する:UNITAIDは以下の項目の管理者としてWHOと連携し設立を行う(1)資金の受託、管理、支払と基金と財源管理機能を通じた資金の返還(2)資金は責任もって管理されているとの公的信頼度の供給(3)契約書などの保護機能をつけた資金の供給(4)理事会および一般のためにすべての予算取引を透明性が高く監査可能な方法で記録する。受益者の活動はUNITAIDの理事会の決定により定められる。

 WHOの正統性により保健分野での重要な役割を果たすため、WHOの受託者としての組織設営の最終確認を行っており、この間UNITAIDの事務局を組織する。

UNITAID南北連携関係

UNITAIDは北の援助国と南の被援助国間の連携関係強化を目指す

 UNITAIDの暫定理事会において、途上国は、被援助国としてのみならず、航空券税を導入した国としても適切に参加する。暫定理事会に参加する9カ国のうち、アフリカ諸国から1名、途上国のNGOから1名が参加する。UNITAIDの決定事項が被援助国側の要望を十分に汲み取って形成されるよう保証するためである。
 UNITAIDは、予算を拡大し、予測可能性を高め、目標を達成するために、参加の意思のある国々との交渉を今後も続ける。UNITAIDは幾つかの会議において中心国グループと緊密な連携を取った最貧国との交渉を続行し、必要な要望を組み込む取り組みを行う。

適正資格

2001年の貿易関連知的所有権協定の規定により途上国とされるすべての国は、UNITAIDとの交渉により医薬品を購入することが可能なアクセスを持つ。

UNITAIDのプログラム施行には的確な連携パートナーが必要である。中心は世界基金であり、他の機関が参加する可能性もある。UNITAIDは途上国やNGOから直接企画提案を受け入れる予定はない。

UNITAIDの資金の最低でも85%は低所得国(LICs)で使用されるべきである。

資金の10%以上を低中所得国(LMICs)で使用してはならない。

資金の5%以上を高中所得国(UMICs)で使用してはならず、使用する場合には、流行中の疾病で、プロジェクトの年間費用のうち援助国側が、1年目は20%、4年目は40%までを負担する場合のみを対照とする。(世界基金の規約と同様)

LMICsとUMICsは同様に、脆弱な人々を対象とした既存のプログラムを支援する(UNITAIDの定義どおり)。

次のステップ

UNITAIDは以下の点を次の課題とする
 UNITAIDは2006年9月19日の国連総会において公式に発足する
 UNITAIDは途上国のNGOや病気と共に暮らすコミュニティを含めたパートナーとの連携関係を続行し、計画策定を行う。9月に初めての暫定理事会が開催され、プログラム計画が提出され、審議される予定である。
 UNITAIDは10月1日までに活動を開始する。

邦訳:日本リザルツ
校正:オルタモンド

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック