三つの統一(Three Ones):各国におけるエイズ対策の調整のための原則

(解説)「三つの統一(Three Ones)」は途上国のエイズとの闘いを効果的に進めていくための原則で、2004年4月25日に国連合同エイズ計画(UNAIDS)と英米両国政府が共催して開いたワシントン会合で承認され、注目を集めるようになった。
ワシントン会合の際のUNAIDSのプレスレリース、および「Three Ones」について解説したUNAIDSの《「三つの統一」の主要な考え方 「各国におけるHIV/エイズ対策の調整」:各国政府機関およびそのパートナーのための手引き》をあわせて紹介する。

 プレスレリースの原文(英文)はhttp://www.unaids.org/en/about+unaids/what+is+unaids/unaids+at+country+level/the+three+ones.asp

「三つの統一」の主要な考え方の原文(英文)は 
http://www.unaids.org/NetTools/Misc/DocInfo.aspx?LANG=en&href=http://gva-doc-owl/WEBcontent/Documents/pub/UNA-docs/Three-Ones_KeyPrinciples_en.pdf





 三つの統一:各国におけるエイズ対策の調整のための原則(UNAIDS プレスレリース)

・すべてのパートナーの活動をコーディネートするための基盤となる合意された一つのHIV/エイズ対策の枠組み
・広範な分野に権限が及ぶ一つはの全国的なエイズ対策コーディネート機関
・合意に基づく国レベルのモニタリングと評価のシステム

 2004年4月25日、国連合同エイズ計画(UNAIDS)と英米両国政府は、HIV/エイズの流行の影響が深刻な国が自ら責任を持ってエイズ対策を進めることを助けるために主要な資金提供者の間で交わされた約束を再確認することを目指した高級レベル会合を共同開催した。この会合では、資源を最も有効かつ効果的に活用し、迅速な行動を促すとともに実証的なマネージメントを可能にするための「三つの統一(Three Ones)」の原則が承認された。

 ますます悪化を続けている複合的なエイズ危機に対する世界の反応は目を見張るべきものがある。各国の対策はこれまで以上に広範かつ強力なものになっており、資金や必要な物資に対するアクセスも改善されている。当事国自身の取り組みも強化されているが、その一方で、世界エイズ・結核・マラリア対策基金、世銀の新たなエイズプログラム、資金提供国(とくに米国)からの拠出約束の拡大、民間基金の活動などにより、エイズ対策に対する資金は2002年に28億ドルだったのが、2003年には47億ドルに増えている。

 さらに多くの資金が必要ではあるが、同時に、深刻な影響を受けている国に対しては、資金の重複や無駄遣いを避けるための支援と協力も重要になっている。

 そうした課題のために作られたのが「三つの統一」の原則である。20年にわたる教訓に基づき、「三つの統一」は、途上国におけるエイズとの闘いの中で各国を単位として、資金提供者と途上国がより効果的に協力していけるようにすることを目指している。

 「三つの統一」および2004年4月のワシントン会合についてさらに詳しく知りたい方は以下の文書をお読みいただきたい。

 「三つの統一」の主要な考え方
   「各国におけるHIV/エイズ対策の調整」:各国政府機関およびそのパートナーのための手引き
 国際的なエイズ資金の調和に関する協議
   会合閉幕時の合意事項
 「三つの統一」合意への道
    会合に至る協議プロセスに関するINAIDS報告






「三つの統一」の主要な考え方
  「各国におけるHIV/エイズ対策の調整」:各国政府機関およびそのパートナーのための手引き

 はじめに

 HIV/エイズの世界的な流行は、毎日8000人の生命を奪い、さらに感染の拡大が続けば何千万人もの生命が脅威にさらされることになる。まさしく地球規模の緊急事態である。

 HIV感染者・エイズ患者とHIV感染のリスクにさらされている人たちが必要とするものに応じるには新たな資金は限られており、国際社会が調整に最善を尽くさなければ有効に活用することはできないだろう。資金を生かし、地球規模のエイズ対策に最大のインパクトを与えようとするなら、すべての利害関係者がエイズの流行で深刻な影響を受けている国が必要とする優先順位に基づき、重複や無駄をなくすように工夫しながらプログラムを遂行していく努力が必要である。

ICASA会合とそのフォローアップ

 2003年9月にケニアのナイロビで開かれた「アフリカのエイズ性感染症に関する国際会議」(ICASA)では、アフリカ諸国のエイズ対策調整および関連部門の職員、主要な資金メカニズム、多国間・二国間国際機関、NGO、企業代表らが集まり、途上国のHIV/エイズ対策の国レベルの政策調整のための原則を再検討する協議を行った。

 その原則は、UNAIDSを中心に世銀、世界エイズ・結核・マラリア対策基金が協力し、国際レベルおよび各国レベルでの検討を踏まえて準備されたものが基本になっており、さらに主要な資金拠出者との意見交換を経てまとめられた。

 資金メカニズムおよびHIV/エイズ対策のためのパートナーシップのあり方が多様化することによって、生み出されている多様な可能性と課題が、その中で確認された。また、こうした多様性と各国の各地域における対策の緊急性、それを可能にする政策の必要性などを考慮に入れ、それぞれの役割や協力関係をより明確にする必要があることが、会議参加者の間で強調された。

 各国レベルのHIV/エイズ対策において、すべての関係者に適用される以下の三つの主要原則に関し、強い意見の一致が見られた。
 
・すべてのパートナーの活動をコーディネートするための基盤となる合意された一つのHIV/エイズ対策の枠組み

・広範な分野に権限が及ぶ一つの全国的なエイズ対策コーディネート機関

・合意に基づく国レベルのモニタリングと評価のシステム

 この三つの柱を活用しつつ、関連した活動については独立の機関やパートナーシップ、資金メカニズムなどが協力しうる様々な方法がある。

 標準化された青写真や処方箋があるわけではないが、政府機関およびそのパートナーの間ではいくつかの基本的な考え方に関し、合意が形成されている。これらの原則は各国がHIV/エイズと闘ううえで、関係者の役割と協力関係を最大限に生かす目的で提案されたものである。

 主要原則1 
  ・すべてのパートナーの活動をコーディネートするための基盤となる合意された一つのHIV/エイズ対策の枠組み

  合意に基づき、HIV/エイズ対策を進めるために共有しうる政策の枠組みを作ることは、すべての参加者および資金メカニズムの間の調整を行い、全国レベルのエイズ対策機関が有効に機能するための基盤となる。

  そうした枠組みには、以下のものが必要とされている。
   優先順位
    ・資金配分の優先順位と資金の流れ、およびその結果が把握できるようにするための配分基     準および説明責任の明確化
   審査と協議
    ・すべてのパートナーが参加できる定例の合同審査、協議のためのシステム調整への関与
    ・外部の支援機関は各自の使命との整合性をはかりつつ対策の枠組内での調整に加わる。
   関連性
    ・HIV/エイズ対策の枠組みと、貧困削減、開発政策のための枠組みとの関連性を認識する。     また、付随する協力の取り決めについても関連性を認識する。
   サービス提供における官民協力推進の枠組み
    ・市民社会組織、民間企業がサービス提供に携わっていこうとする流れを確固たるものにし、     さらに拡大をはかる。

 主要原則2
   ・広範な分野に権限が及ぶ一つの全国的なエイズ対策コーディネート機関

  公式な任務
   全国的なエイズ対策コーディネート機関は法的に地位が裏付けられたものでなければならない。その公式な任務は以下のようなものになる。
   ・自主裁量の範囲を決める。
   ・内閣および政府行政機関が出す報告書の文言(情報および政策の支持)を明確なものにしていく。
   ・政策実施、パートナー参加、プログラム開発の成果について、説明責任を果たせるよう詳しく説明する。

  民主的な監視機能
全国機関は立法機関に対し、定期的に情報共有の機会を設けたり、報告を行ったりすることで、立法機関が民主的な監督機能を果たしうるような関係を保つ必要がある。

  各国の自立能力の強化
   全国機関は国のHIV/エイズ対策大綱に対する管理人機能を含む以下のような明確な役割を担うべきである。
   ・HIV/エイズ対策大綱の作成、検討、監視、評価。
   ・HIV/エイズ対策大綱の遂行のための連絡調整。
   ・合意された政策の優先順位に基づく資金配分要請の調整。ただし、財政管理と予算執行は他の機関が担当する。
   ・機関運営のための基本支出は政府予算から支援。

  様々なパートナーシップや資金メカニズムに対する「アンブレラ機能」
   全国的なエイズ調整機関はHIV/エイズ対策大綱のもとでのパートナー、資金メカニズムのそれぞれの役割と機能を受け入れるようなかたちで活動していく必要がある。この目的を達成するには以下のような考え方が重要である。
    -全国機関は幅広い市民社会、NGO、コミュニティ・ベースのグループ、HIV陽性者などが正規メンバーとして参加し、国際協力のパートナーも受け入れることによって信頼度を高めなければならない。
    -その一方で、すべての参加者は、活動を制限するものとしてではなく、協力を拡大していく土台として、国のHIV/エイズ対策大綱と全国的なエイズ対策コーディネート機関を受け入れ、尊重しなければならない。

・パートナーはそれぞれの組織としての使命を果たすために独立性を保障される。
・全国的なエイズ対策コーディネート機関に対しては、いかなるパートナーシップや資金メカニズムも、特権的な立場を要求することはできない。
   ・国のHIV/エイズ対策の枠組みにおける利害関係者は説明責任を果たすために共通のモニタリングと評価の枠組みを受け入れることを前提に参加する。

  国のHIV/エイズ対策パートナーシップ協定の発効
   多くの国で、全国的なエイズ対策コーディネート機関の政策およびアンブレラ機能
の運営と、HIV/エイズ対策の枠組みの実施との間を取り持つ幅の広い公式のコモン・アリーナや仕組みの必要性が高まっている。そうしたアリーナは誰もが幅広く参加できるものでなければならない。そうした協定の機能には、リーダーシップの発揮を促し、国の政策に関する情報の共有を広げるためのビジョンを提供し、手続きやシステムがうまく機能することを助け、すでに存在している資金メカニズムや新に発足する資金メカニズムについて紹介することなどが含まれている。

   対策に取り組みやすい環境を国際的および国内的につくる
    ・世界レベルでは富裕国と貧困国の両方の政府の積極的な関与、市民社会、民間企業の思いやりが不可欠である。
    ・流行の影響が深刻な国やコミュニティのレベルでは、良好なガバナンス、法と秩序、言論と結社の自由が、この世界的流行の試練に対し、社会が総体として最も効果的に立ち向かうことを可能にする環境を生みだす。

 主要原則3
  ・合意に基づく国レベルのモニタリングと評価のためのシステム

モニタリングと評価(M&E)に関しては、複数のシステムがあり、国連エイズ特別総会のコミットメント宣言に関連して主要機関は一連の指標を採用してはいるものの、各国の国レベルの対策に対する有効な「ベスト・プラクティス」のモデルはまだ、確立されていない。

  多くの国で、実用的な共通のM&Eの枠組みがないことが、対策を有効なレベルまで拡大し、全国的な配分に目配りし、政策を採用する際に適切なM&Eを実施することを困難にしている。

  現状では能力不足のために、データは欠落があったり、質が悪かったりすることになり、運用状況のモニタリングや実証的な政策策定のためのモニタリングを妨げる結果をもたらしている。各国はM&Eの必要性を明確に認識できていないだろう。また、資金拠出者もM&Eに投資することの重要性を認識できていないのかもしれない。強力な全国レベルのM&Eの枠組みを作るための原則には以下のものが含まれる。

  世界規模での連携
・資金および実証的なプログラムの実施に対する説明責任を果たすには、共通の基準によるM&Eが実現できるよう世界規模の協力が必要である。

  国のHIV/エイズ対策の枠組みと連動した中核的な全国システム
  ・各国のHIV/エイズ対策の枠組みは現行のM&Eシステムの評価を急ぐべきである。どのようにすればシステムが改善できるか、および国の実績を分析するための質の高いデータが得られるような中核的システムを設立することができるかという点に関しては、利害関係者の合意が必要である。

  国の能力向上のための投資
・各国政府、エイズ対策機関、および関連する開発、エイズ対策のためのパートナーシップは、全国的にM&Eを実施するために、必要な人材開発に対する投資を行わなければならない。


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