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zoom RSS 各国エイズ流行状況の推計について

<<   作成日時 : 2006/06/27 01:31   >>

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 (解説)UNAIDSとWHOが発表する世界のHIV陽性者数の推計はこの数年、4000万人を超えたかと思うと、また4000万人弱に戻るというかたちで何度か下方修正されています。その理由を説明したステートメントの日本語仮訳。英文はUNAIDSのウエブサイトにUNAIDSとWHOのステートメントとしてPDF文書で公開されています。
http://data.unaids.org/pub/PressStatement/2006/20060410_PS_EPI_Estimates_en.pdf
 ただし、なぜかこのPDF文書には最初にステートメントが発表されたときには掲載されていた「4月6日付ワシントンポスト紙記事および4月10日付社説に対するUNAIDSの反論」は外れています。推測ですが、最初はワシントンポストの記事への反論として作成したものの、日がたてば当面の目的だった反論はあまり意味がなくなってしまったとの判断からではないか思います。さらに推測が続きますが、それでも文書が公開されているのは、下方修正が続く理由を説明し、HIV/エイズの流行は決して縮小に向かったわけではなく、世界全体としてみれば流行はいまなお拡大を続けていることをきちんと説明しておく必要があるとの判断からではないでしょうか。なお、ここでは最初にウエブサイトに登場した時のステートメントを用い、UNAIDSの反論部分も訳しておきました。




各国エイズ流行状況の推計について
UNAIDSによるステートメント  2006年4月11日

流行の現状
 世界のHIV陽性者推計数はここ数年、より詳細なデータが得られるようになったことや予防対策の努力が成果をあげていることの結果として減少を示している。UNAIDSの過去5年間の分析では、サハラ以南のアフリカ諸国の多くで数年前から年間の新規感染率は横ばいに抑えられている。ただし、それは受け入れがたいほど高いレベルでの横ばい状態である。
アフリカ南部における新規感染は1990年代後半の年間約150万人がピークだった。過去3年は年間110万人である。
しかし、流行は他の地域にも拡大しているため、世界全体としては、HIV陽性率は依然、上昇を続けている。
各国のHIV陽性率の推計に関して下方修正がなされているのは、それぞれの時点における最高レベルの推計手法を導入することによって各国情報の分析がこれまで以上に緻密になっていること、および国際機関による各国への技術的な支援が成果をあげていることを反映したものである。こうした推計方法の改善の成果に基づく下方修正は2004年7月、バンコクで最初に発表されている。

 サハラ以南のアフリカの2005年末時点における最新推計は、カメルーンのHIV陽性率5.4%からジンバブエの20%まで、この流行の厳しい影響がさまざまなかたちであらわれていることを示している。

図1 HIV陽性者推計2001−2005、AIDS epidemic update, December 2005.(略)

HIV陽性率の推計は発展途上の科学分野である
 エイズのような厳しい流行に直面する中では、HIV陽性者数の推計が論争の対象となることは避けられず、混乱を引き起こすこともしばしばある。推計が政治的な影響やその他の思惑に左右されることのないよう、UNAIDSは各国の疫学者および国際的な専門家と協力してきた。
第一に陽性者数の確認は非常に複雑な作業である。自らのHIV感染の有無を知らない人がほとんどなので、正確な数字を直接、(国勢調査などで)数えて出すことはできない。さらに、HIVに関しては、非常に厳しく、時には生命を脅かすような偏見と差別が存在することから、拒絶や過少報告を招くことがしばしばある。
 流行を把握する試みが始まったころには、研究者は首都における小規模な調査などによる極めて限られた情報をもとに流行全体のレベルを評価しなければならなかった。世界エイズ・プログラム(WHOが1987年に創設)が世界全体と地域ごとのHIV推計を行なうために「デルファイ法」を採用していた1980年代からみると、研究はかなり長い道のりを経てきている。デルファイ法は正確なデータがない中で、複数の専門家から最も適切と思われる推計を得ることに依拠するものである。
1996年以降、推計方法は進歩し、着実に改善されている。サハラ以南のアフリカの流行に関する現在の情報は産婦人科診療所のサーベイランス・データに負うところが大きい。データは年次的に集計され、都市部における推計の貴重な支えとなっている。
世帯・人口調査が利用できるところでは、そのデータも活用されている。世帯調査は農村部におけるHIV感染率の把握に適している。
各国は、UNAIDSの支援を受けながら、利用可能なすべてのデータを用い、流行の全体像の把握につとめている。たとえば、中国政府は最近、UNAIDS事務局とWHOの支援を受けてより精密な分析に取り組み、以前より低い推計値を発表した。
UNAIDSはこうした精密化の努力の中心として、国際機関や各国のさまざまなパートナーとの協力を進めている。UNAIDS事務局とWHOが使用している分析的手法は国際エイズ参照グループの提言に基づいている。このグループは米疾病対策センター(CDC)、米国勢調査局、ロンドン大学衛生熱帯医療学部など世界中から集まった疫学者、サーベイランス専門家、人口統計学者、公衆衛生専門家らで構成されている。グループは事務局を英国のインペリア・カレッジに置き、各国の疫学者とも定期的に会合を開いて新たな研究成果やサーベイランス・データを検証し、分析手法の改善をはかっている。
 こうした手法は科学文献として広く公表されており、科学的な批判のプロセスも経ている。UNAIDSは10年以上にわたり、各国のHIVデータの収集、分析能力の向上をはかるため、それぞれの関係者とともに働いている。新たな手法が開発されれば、常に各国のエイズ対策スタッフおよびHIVに関して研究を続けるさまざまな分野の専門家とその成果を共有している。

過度な単純化の危険
HIV感染者・エイズ患者数を正確に推計するために必要となるデータのすべてにアクセスできる国は少ない。年間ベースではまず、そんな国はない。単一の絶対に正しい情報源などはないのである。
 サハラ以南のアフリカでは何年もの間、利用可能なデータは妊娠女性のHIV陽性率の動向だけだった。HIV検査を含む初期のコミュニティベースの調査によって示される妊娠女性の感染動向はその国の成人のHIV陽性率を推測するいい材料になる。しかし、妊娠女性に対するサーベイランスのシステムが地方まできちんとのカバーできていない国も多かった。地方での陽性率は通常、都会より低い。最近になって取り入れられた人口ベースの調査で、男性や遠隔地、地方の陽性率のデータも追加的に得られるようになった。
しかし、それぞれの調査には長所と短所がある。産婦人科診療所のデータは男性や地方の感染のレベルを推定する際の有効性は低い。HIV検査を含む人口ベースの調査は過去5年以上にわたって約20カ国で行なわれているが、限界がある。世帯サンプルをとって行なうことから、調査を拒否する人が出てくるとバイアスがかかることがあるのだ。南アフリカとボツワナの調査では、HIV検査について尋ねると、無回答が50%近い高率に達した。ガーナの最近の調査では、検査を受けたくないと答えた人のHIV陽性率は1.9%で、検査を受けた人の陽性率(1.6%)より高かった。より詳しく分析することによって、陽性率は無回答の割合が高いと実際より低く評価されることが分かった。
さらに、人口ベースの調査には、独身成人、移住労働者、移民、セックスワーカー、薬物注射使用者、受刑者や兵士ら世帯員と定義されない人を排除してしまう問題点もある。これらの排除された人々は最も高い感染のリスクにさらされていることが多い。このため、ポピュレーションベースの調査は局限流行期に対しては推奨できない。
これまでの経験は、最も正確な結論を得るには、数種類の方法を同時に使い、分析に使えるデータはすべて活用しなければならないことを教えている。

エイズ推計の価値
 HIV陽性者の総数および年齢層、性別、地理的な分布などの推計方法を改善する第一の目的はエイズの流行に影響を受けている国のエイズ対策の効果を高めることである。
 政府が信頼度の高い情報を入手し、その情報を有効に活用する能力があれば、より効果的なHIV予防、治療、ケアの対策を実現するために限られた資金を的確に配分するための意思決定が可能になる。

数字の背後にいる人々 
 こうした推計値を構成している人々は、数字ではなく、人間である。25年間の流行を経てもなお、HIVが直接的または間接的に、個人の生命と将来に過酷な事態をもたらすことを直視し、それに対応することが大切である。陽性率の高い国で、あまりにも多くの成人が感染していることの影響は、彼らの家族や残された孤児たちに対するだけでなく、労働生産力や人材という社会資本として彼らに依存してきたコミュニティや社会にも及んでいる。南アフリカでは2004年に公立学校の先生の5人に1人以上がHIV陽性だった。

図2 公的部門の教育者のHIV陽性率 南ア2004 (略)

 もっと影響の小さな国にとっても、エイズが深刻な世界的課題であることを認識しなければならない。最新の推計は、緊急対応を迫られている過酷で巨大な流行を世界がすでに抱え込んでしまっていることを明確に示している。



ワシントンポスト2006年4月6日付け「アフリカのエイズはいかに過大に報告されていたか」に対するUNAIDSの反論

 最近のワシントンポスト紙のクレイグ・ティンバーグ記者の記事は、インタビューの相手からの情報を誤解するなど、不正確なために残念ながら台無しになっている。記事の中では異なるタイプのデータが比較されている。たとえば、UNAIDSが報告したサハラ以南のアフリカのHIV陽性者数の増加とアフリカの新規感染数は数年前にピークに達しているといった声明とを比べることは誤りである。前者はHIV陽性者全体の数であり、後者は単一年の新規感染数であるので、この2つの数字は明らかに比較の対象にならない。
記事に書かれているように「流行は・・・西アフリカでは予想されていた拡大を招くことはなかった」。UNAIDSは西アフリカが南部アフリカと同程度のHIV陽性率になるだろうなどと予想したことはなかった。ただし、2004年に産科クリニックの患者のHIV陽性率の中央値が8.4%だったコートジボアールなど、いくつかの国では非常に厳しい影響を受けているのである。記者が政府による全国調査の陽性率2.2%を引用しているガーナでさえ、米国の3倍を超える陽性率であり、それは受け入れがたい状態だと考えるべきだろう。
ティムバーグ氏は記事の中心としてルワンダを取り上げている。だが、この国は非常に多くの政治、および人口構成上の変化に見舞われており、例としてあげるには評価が難しい。1996年の人口動態調査ではHIV陽性率はキガリで23%から33%の間、村落部や地方の小都市では4%から9%の間と推定していた。妊娠女性のHIV陽性率の最近の動向を加えた新たな分析は、ルワンダの都市部、とりわけキガリにおいて長期的なHIV陽性率の低下が見られる一方、地方では横ばいか、わずかに上昇していることを示唆している。
UNAIDSが各国の過大な推計をあおってきたという指摘は、各国の推計を厳密かつ透明性の高いものにするための手法に対する理解不足を示している。そうした指摘はまた、多数の国の政府が拒絶を脱するために重要な国連の信頼性を傷つけるものでもある。


2006年4月10日付のワシントンスト紙の社説に対するUNAIDSの反論

 UNAIDSの予防政策は、セックスワーカー、男性とセックスをする男性、薬物注射使用者といった感染の最も高いリスクにさらされている人々に対し、包括的なHIV予防プログラムがきちんと届くようにしなければならないこと、さらに、そうしたプログラムは社会一般の人々も利用できるようにすべきであることを明確に述べている。
HIV感染を減らすための最も効果的な手法に関し、UNAIDSは、「何が機能しているか」について現時点で得られるすべてのエビデンスに基づいている。UNAIDSおよびその共同スポンサー、HIV陽性者、各国および市民社会パートナーは、乏しい資源を最大限有効に活用し、予防対策に関する情報を伝えることで、力を合わせて対策に取り組むことができるよう努力してきた。私たちはいま、多くの国でその成果がようやく上がってきたことを確認しつつあり、そうした成果を踏まえてさらに対策を進めていかなければならない。
マラリアに苦しむ人と比較して、エイズを発症している人に治療を提供することを否定的に論じることは、危険な二分法を生み出すことになる。どちらの患者も治療が受けられるようになって当然であり、医療提供に関し、各国はコストと治療の簡素化との間に妥協や取引の成立する関係などないということを認識すべきである。

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