自らの感染を知っているHIV陽性者は75% UNAIDSが最新報告書を発表

(解説) 世界エイズデーを前に国連合同エイズ計画(UNAIDS)が11月22日、新たな報告書『Knowledge is power』(知ることが力になる)を発表しました。そのプレスリリースの日本語仮訳です。今年のキャンペーンテーマ『Know your status』(感染の有無を知ろう)と連動して、検査推奨のトーンを強く打ち出した内容になっています。


自らの感染を知っているHIV陽性者は75% UNAIDSが最新報告書を発表
  感染に気付いていないHIV陽性者940万人、およびウイルス量が抑制されていないHIV陽性者1940万人への働きかけ強化を UNAIDSプレスリリース
http://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2018/november/20181122_WADreport_PR

 アビジャン/ジュネーブ 2018.11.22 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が新たな報告書を発表し、HIV検査と治療を受けているHIV陽性者が増えていることを明らかにした。2015年当時、自らの感染を知っているHIV陽性者は全体の3分の2(67%)だったが、2017年には4分の3(75%)となった。また、抗レトロウイルス治療を受けている人は、2015年に1720万人だったのが、2017年にはHIV陽性者全体の59%にあたる2170万人に増えている。一方で報告書は、940万人のHIV陽性者が自らの感染を知らず、この人たちがHIV検査と治療のサービスを受けられるようにすることが急務であることも指摘している。
 『知ることが力になる』と題された報告書によると、体内のウイルス量が抑制されているHIV陽性者の数は過去3年で10%ポイント増加し、2017年には全陽性者の47%に達したが、それでも世界のHIV陽性者のうち1940万人はウイルス量が抑制されないでいる。自らの健康状態を保ち、感染を防ぐには、抗レトロウイルス治療を継続して、体内のウイルス量を検出限界値未満、もしくは極めて低いレベルに下げる必要がある。このため、HIV陽性者は12カ月ごとにウイルス量検査を受けるようにしなければならない。
 「ウイルス量検査はHIV治療のモニタリングの基本です」とUNAIDSのミシェル・シディベ事務局長はいう。「この検査で、治療が効いているかどうか、治療を受けている人が健康状態を良好に保って暮らせるかどうか、ウイルスをコントロールできているかどうかが分かるのです」
 ウイルス量検査へのアクセスは地域によってばらつきがあることを報告書は示している。HIV治療の枠組みの中にきちんと位置付け、簡単に検査を受けられるところもあれば、国全体でウイルス量検査機器が一台しかないところもある。
 「ウイルス量のモニタリングは、リロングウェ(マラウィの首都)でもロンドンと同じように受けられるようにしなければなりません」とシディベ事務局長はいう。「HIV検査とウイルス量検査は、HIV陽性者が誰でも例外なく受けられるようにすべきです」
 コートジボワールでは、米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)がウイルス量検査拡大の国家計画を支援している。HIV治療を受けている人は3年間で倍に増え、新たに10カ所の検査機関でウイルス量検査を開始した。その結果、ウイルス量検査のカバー率は、2015年に14%だったのが、2017年には66%に拡大し、2018年末には75%に達する見通しだ。
 「UNAIDSの2018年世界エイズデーのテーマ(ポジティブに生きよう―HIV感染の有無を知ろう)は、HIV検査が依然、HIV感染の有無を知り、健康な暮らしへのライフプランを立てる唯一の方法であることを強調しています」とコートジボワールのユージン・アカ・アウエル保健公衆衛生相は語っている。

子供とHIVのウイルス量検査
 新生児の場合、HIV感染症は極めて進行が速いので、ウイルス量検査がとりわけ重要になる。HIVに感染した赤ちゃんの死亡時期は生後2、3か月以内がピークとなっている。標準的な迅速検査は生後18カ月までは有効ではなく、HIVの検査として実際に使えるのは、生後4~6週間以内に受けるウイルス学的検査のみとなる。しかし、2017年にはHIVの流行が厳しい国で、HIVに曝露された赤ちゃんのうち生後2か月以内に検査を受けたのは半数(52%)にとどまっている。
 重視すべき成果もあがっている。臨床現場即時検査-できるだけ検査を受ける人の前で行う検査-の新たな技術により、検査結果を赤ちゃんに返す時間が月単位から分単位に短縮され、生命を救うことができるようになっているのだ。

感染の有無を知ることを阻む根深いバリア
 報告書はスティグマと差別がHIV検査に対する最も大きなバリアのひとつであることを指摘している。女性、男性、若者、キーポピュレーションの人たちを対象にした調査によると、HIVサービスを利用するところを見られることへの恐れ、感染が分かった場合にその情報が家族や友人、性的パートナー、コミュニティに知られることへの恐れが、HIV検査を含むHIVサービスへのアクセスを妨げていた。
 ゲイ男性など男性とセックスをする男性、トランスジェンダーの人たち、受刑者など拘束状態にある人たち、移住者といったキーポピュレーションの人たちにとっては、こうしたバリアはより大きなものになる。社会や保健医療機関におけるスティグマと差別はキーポピュレーションの人たちが保健医療サービスを受けるのを妨げるし、刑法が差別や暴力被害の増加と相まって、逮捕や迫害への恐れといったさらなるバリアを生み出すこともある。
 「コートジボワールではセックスワーカーのHIV陽性率は11%、男性とセックスをする男性は13%、注射薬物使用者は9.2%です」と、コートジボワール・キーポピュレーション・ネットワークのペラジエ・クアメ代表はいう。「キーポピュレーションを置き去りにすることはできません。私たちが影の中から抜け出し、恐怖の中で暮らしていく必要がなくなるよう、世の中を変えていかなければなりません」
 その他のバリアとして、とりわけ若い女性、少女にとっては、暴力もしくは暴力にさらされる脅威がある。保護者の承諾を義務付ける法律や政策もバリアになる。18歳以下でHIV検査を受けるには親の同意が必要な国もあるからだ。加えてサービスを提供する場所が遠過ぎたり、費用が高過ぎたりすることもある。また、HIV検査の結果を返せなかったり、返すのが遅れたりすることもあるし、治療開始が遅れることもある。感染のリスクがないと思って人びとが検査を受けないこともある。マラウィの調査では、HIV感染の高いリスクに曝されていると考えられる思春期の少女や若い女性(15~24歳)の半数以上(52%)が自らにHIV感染のリスクがあるとは思っておらず、HIV検査サービスを受けようとしていなかった。

次世代検査オプション
 報告書は、コミュニティに拠点を置いた検査や家庭での検査など様々なオプションとサービスを提供することによって、HIV検査に対する流通面や構造的、社会的なバリアを軽減できることも強調している。保健医療サービス機関から遠く離れて暮らす人たち、サービスの提供時間に合わせられない人たちにも検査のオプションを用意できるからだ。このことは従来の保健やHIVサービスで感じられるようなスティグマと差別を避けられる点で、男性やキーポピュレーションの人たちにはとくに重要となる。
 「具合が悪くなるまで待っていることはできません」とエイズと闘うネットワーク・プラットホームのイマム・ハロウナ・コネ代表はいう。「コミュニティに入ってHIV検査と治療のサービスを提供していく必要があります」
 報告書は予防、ケア、治療の提供で重視すべきconsent, confidentiality, counselling, correct test results, connection/linkageの「5つのC」アプローチについても説明している。「HIV検査には、ひとつのやり方ですべてに対応できるような方法があるわけではありません」とシディベ事務局長は語る。「HIV感染のリスクに直面している人たちに検査を提供できるようにする戦略は数多くあり、その中には自己検査のように革新的な方法も含まれています。自己検査でプライバシーが守られると分かれば、安心できる人もいるのです」
 もう一つ重視すべきことは、母子保健サービスや結核対策のサービス、性感染症とウイルス性肝炎対策のサービスなど他の保健サービスとHIV検査サービスを統合して提供できるようにすることだ。結核はHIV陽性者の最も大きな死亡原因となっている。エイズ関連の死者の3人に1人は結核で亡くなっているのだ。それなのに、結核にかかっているHIV陽性者の推定49%は重感染に気付いておらず、ケアを受けていない。
 HIV検査へのアクセスは基本的人権であり、UNAIDSは人びとをHIV検査から遠ざけているバリアを取り除くよう呼びかけている。HIV関連のスティグマと差別をなくすこと、HIV検査や治療サービスにおける個人情報の保護を確実に果たすこと、検査が最も必要な人に届くよう最適な組み合わせの検査戦略で臨むこと、他の保健サービスとの統合を進めること、HIV検査と治療のアクセスを妨げる政策や法律のバリアを取り除くこと、低・中所得国におけるウイルス量モニタリングへのアクセスを拡大すること、新生児への早期診断を確保することなどが、そこには含まれている。
報告書はこうした方策の実施により、すべてのHIV陽性者およびHIVに影響を受けている人たちが自らの生死にかかわるサービスを受けられるようになるという目標に向けて大きな成果がもたらされることを示している。

2017年推計
世界のHIV陽性者数    3690万人[3110万~4390万人]
治療を受けている人     2170万人[1910万~2260万人]
年間の新規HIV感染者数   180万人[140万~240万人]
エイズ関連の年間死者数    94万人[67万~130万人]




New UNAIDS report shows that 75% of all people living with HIV know their HIV status
Report also calls for increased efforts to reach the 9.4 million people living with HIV who are not aware that they are living with the virus and the estimated 19.4 million people living with HIV who do not have a suppressed viral load

ABIDJAN/GENEVA, 22 November 2018—A new report from UNAIDS shows that intensified HIV testing and treatment efforts are reaching more people living with HIV. In 2017, three quarters of people living with HIV (75%) knew their HIV status, compared to just two thirds (67%) in 2015, and 21.7 million people living with HIV (59%) had access to antiretroviral therapy, up from 17.2 million in 2015. The report shows, however, that 9.4 million people living with HIV do not know they are living with the virus and urgently need to be linked to HIV testing and treatment services.
The report, Knowledge is power, reveals that although the number of people living with HIV who are virally suppressed has risen by around 10 percentage points in the past three years, reaching 47% in 2017, 19.4 million people living with HIV still do not have a suppressed viral load. To remain healthy and to prevent transmission, the virus needs to be suppressed to undetectable or very low levels through sustained antiretroviral therapy. And to effectively monitor viral load, people living with HIV need access to viral load testing every 12 months.
“Viral load testing is the gold standard in HIV treatment monitoring,” said Michel Sidibé, Executive Director of UNAIDS. “It shows that treatment is working, keeping people alive and well and keeping the virus firmly under control.”
The report outlines that access to viral load testing is mixed. In some parts of the world, getting a viral load test is easy and is fully integrated into a person’s HIV treatment regime, but in other places there may be only one viral load machine for the entire country.
“Viral load monitoring needs to be as available in Lilongwe as it is in London,” said Mr Sidibé. “HIV testing and viral load testing should be equal and accessible to all people living with HIV, without exception.”
In Côte d’Ivoire, the United States President’s Emergency Plan for AIDS Relief is supporting a national scale-up plan for viral load testing. In just three years, as the number of people on treatment doubled, 10 additional laboratories began viral load testing. Subsequently, viral load testing coverage increased from 14% in 2015 to 66% in 2017 and is projected to reach 75% by the end of 2018.
“This year's UNAIDS theme for World AIDS Day (Live life positively—know your HIV status) reiterates the fact that HIV testing remains the only way to know your status and to adopt a healthy life plan,” said Eugène Aka Aouele, Minister of Health and Public Hygiene, Côte d’Ivoire.

Children and HIV and viral load testing
Viral load testing is particularly important for newborns, as HIV progresses much faster in children—peak mortality for children born with HIV is within two or three months of life. Standard rapid diagnostic testing is ineffective up until 18 months of age, so the only viable test for HIV for very young children is a virological test, which they need to receive within the first four to six weeks of life. However, in 2017, only half (52%) of children exposed to HIV in high-burden countries received a test within the first two months of life.
Important advances are being made. New point-of-care testing technologies—testing that takes place in an environment as close to the person as possible—have been shown to shorten the time it takes to return children’s test results from months to minutes, which is saving lives.

The persistent barriers to knowing one’s status
The report shows that one of the biggest barriers to HIV testing is stigma and discrimination. Studies among women, men, young people and key populations have revealed that fear of being seen accessing HIV services, and if the person is diagnosed, fear that this information will be shared with family, friends, sexual partners or the wider community, was preventing them from accessing HIV services, including HIV testing.
For key populations—gay men and other men who have sex with men, transgender people, sex workers, people who use drugs, people in prisons and other closed settings and migrants—these barriers can affect access to an even greater extent. Stigma and discrimination, from society and health services, can deter members of key populations from accessing health care, while criminal laws can compound that discrimination, increase rates of violence and create additional barriers, including fear of arrest and harassment.
“In Côte d'Ivoire, HIV prevalence among sex workers is 11% and 13% for men who have sex with men and 9.2% for people who inject drugs,” said Pélagie Kouamé, President of the Network of Key Populations in Côte d’Ivoire. “We cannot leave key populations behind. Things must change and evolve so that we can come out from the shadows and no longer live in fear.”
Other barriers include violence or the threat of violence, especially among young women and girls. Parental consent laws and policies are also a barrier, since in some countries young people under the age of 18 years need parental consent to take an HIV test. In addition, services are often too far away and difficult to access or too expensive. There can also be delays or failures in returning HIV test results and delays in treatment initiation. In some countries, people do not seek HIV testing as they feel they are not at risk—in Malawi, one study found that among adolescent girls and young women (aged between 15 years and 24 years), considered to be at higher risk of HIV, more than half (52%) did not consider themselves at risk of HIV and so were unlikely to seek HIV testing services.

Next generation of testing options
The report highlights how providing a variety of testing options and services, such as community-based testing and home-based testing, can help mitigate many of the logistical, structural and social barriers to HIV testing. They offer testing options for people who live far away from health services, do not have the constraints of inconvenient opening hours, which is particularly important for men and people from key populations, and do not come with the stigma and discrimination often perceived in traditional health and HIV services.
“We cannot not wait for people to become sick,” said Imam Harouna Koné, President of the Platform of Networks in the Fight Against AIDS. “We must go out to our communities and offer HIV testing and treatment services.”
The report outlines the importance of taking a five Cs approach: consent, confidentiality, counselling, correct test results and connection/linkage to prevention, care and treatment. “There isn’t a one size fits all approach to HIV testing,” said Mr Sidibé. “There are a number of different strategies needed to reach people at risk of HIV, including innovative approaches such as self-testing, where people may feel more comfortable that their privacy is respected.”
Another important step to take is to integrate HIV testing services within other health services, including maternal and child health services, services for tuberculosis and services for sexually transmitted infections and viral hepatitis. Tuberculosis is the leading cause of death of people living with HIV, accounting for one in three AIDS-related deaths; however, it is estimated that 49% of people living with HIV and tuberculosis are unaware of their coinfection and are therefore not receiving care.

Access to HIV testing is a basic human right, and UNAIDS is calling for a global commitment to remove the barriers preventing people from testing for HIV, which include eliminating HIV-related stigma and discrimination, ensuring confidentiality in HIV testing and treatment services, deploying an optimal mix of HIV testing strategies to reach the populations most in need, integration with other health services, removing policy and legal barriers hindering access to HIV testing and treatment, expanding access to viral load monitoring in low- and middle-income countries and ensuring access to early infant diagnosis for newborns.
The report demonstrates that implementing these measures will hugely advance progress towards ensuring that all people living with and affected by HIV have access to the life-saving services they need.

In 2017 an estimated:
36.9 million [31.1 million–43.9 million] people globally were living with HIV
21.7 million [19.1 million–22.6 million] people were accessing treatment
1.8 million [1.4 million–2.4 million] people became newly infected with HIV
940 000 [670 000–1.3 million] people died from AIDS-related illnesses

"自らの感染を知っているHIV陽性者は75% UNAIDSが最新報告書を発表" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント