TOP-HAT News 第146号(2020年10月)

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 TOP-HAT News 第146号(2020年10月)
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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。
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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部


◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆
1 はじめに 報告数の減少が見せる2つの顔

2 ティモシー・ブラウンさんが死去

3 『Inside/Out ─ 映像文化とLGBTQ+』(早稲田大学演劇博物館)

4 TOKYO AIDS WEEKS 2020

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1 はじめに 報告数の減少が見せる2つの顔
 厚生労働省のエイズ動向委員会が2019年の年間新規HIV感染者・エイズ患者報告確定値を9月15日に発表しました。概要がAPI-Net(エイズ予防情報ネット)の『日本の状況:エイズ動向委員会』のページに掲載されています。
 https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/index.html
 四半期報告2020年[令和2年]の9月15日発表分の委員長報告をみていただきましょう。PDF版の前半は2020年上半期の速報、後半が2019年確定値です。確定値の合計報告件数は次のようになっています。

 新規HIV感染者報告数  903件(過去20年で14番目)
 新規エイズ患者報告数   333件(過去20年で17番目)
 合計報告数       1236件(過去20年で14番目)

前の年(2018年)の年間確定値と比べると、新規HIV感染者報告は37件減、エイズ患者報告は44件減で、計81件の減少となりました。数字ばかり並んで恐縮ですが、直近の4年間の合計報告数をみていくと次のようになります。

2016年 1448件
2017年 1389件
2018年 1317件
2019年 1236件

 あくまで報告数ベースでの比較ですが、4年前には1400件台でしたが、その後2年連続して1300件台となり、昨年は1200件台の前半まで下がっています。
 また、報告総数に占める新規エイズ患者報告数の割合は、HIVに感染した人が早期に自らの感染を知り、治療につながることを示す指標とされていますが、2016年には30.2%でした。それが2017年29.7%→2018年28.6%→2019年26.9%と低下しています。
つまり、検査を受けやすい環境を整え、感染が分かった人や感染を心配する人への支援体制の充実をはかり、安心して治療を受けられるようにする。直近の4年間の報告数の推移は、そうした複合的な予防対策の積み重ねがようやく成果をあげてきたとみることができそうです。
 ただし、注意しておかなければならないのは、この報告があくまで2019年末時点での確定値だということです。2020年に入ると、新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行で様相が一変しました。
 最初に書いたように9月15日の動向委員会報告では、2020年第1四半期と第2四半期の報告数(速報値)も公表されています。それを合計した上半期の速報値は次のようになります。()内は前年同時期。
 新規HIV感染者報告数 347件(428件)
 新規エイズ患者報告数  154件(147件)
合計        501件(575件)
 一見すると、感染の減少傾向が続いているようにも見えますが、COVID-19対策の影響を考えると解釈は変わってきます。
今年に入ってHIV検査や相談の件数が大きく落ち込んでいることを考えると、新規HIV感染者報告の減少は、自らの感染に気付かずにいる人が、検査の機会を逃していることの反映かもしれません。エイズ患者報告数は昨年同時期よりわずかながら増えています。
こうした傾向について、エイズ動向委員会の白阪琢磨委員長は委員長コメントの中で「エイズで発見された患者の割合は、令和2年第2四半期において、約36%であった」「新型コロナウイルス感染症の影響による検査数の変化等含め、このような状況を注視していく必要がある」と述べ、やや遠回しの表現ながら、COVID-19の影響に懸念を表明しています。
 一方で、これまでのHIV/エイズ対策の蓄積から得られた教訓をCOVID-19対策に生かし、逆にそれをHIV/エイズ対策の基盤の強化にもつなげるという相乗効果への期待もあります。前回も紹介した国連合同エイズ計画の年次報告書『この機会を生かす』でもこうした認識の重要性が強調されています。報告書概要版の日本語訳もAPI-Netに掲載されているのでご覧ください。
 https://api-net.jfap.or.jp/status/world/sheet2020_GlobalAidsUpdate.html
 その発想を日本の文脈の中でどう生かすか。これもまた、HIV/エイズとCOVID-19という2つのパンデミック対策に共通する課題になっています。



2 ティモシー・ブラウンさんが死去 
「ベルリン・ペイシェント」と呼ばれ、HIV感染からの治癒を果たした最初の症例として世界の注目を集めたティモシー・ブラウンさんが9月29日、白血病のため米カリフォルニア州パームスプリングスの自宅で亡くなりました。54歳でした。
参考までにAFP通信のニュースです。
 https://www.afpbb.com/articles/-/3307438?cx_part=search
 また、国際エイズ学会(IAS)公式サイトのブログでは、アディーバ・カマルザマン理事長が『HIVの治癒に道を開くという重要なコンセプトを医学者たちが共有できるようになったのは、ティモシーさんと主治医のゲロ・フッター氏のおかげです。そのことに深く感謝します』と追悼の言葉を述べています。
 https://www.iasociety.org/The-latest/Blog/ArticleID/255/IAS-bids-sad-farewell-to-Timothy-Ray-Brown-the-%E2%80%9CBerlin-patient%E2%80%9D
 ブラウンさんはドイツのベルリンに住んでいた1995年にHIV感染が分かり、その後、急性骨髄性白血病も発症したため、2007年には白血病治療のための骨髄移植を受けています。この時のドナーの骨髄では『HIVが細胞に侵入して感染する際に必要なタンパクであるCCR5をつくる遺伝子が変異していたため、HIV感染を阻む耐性が自然にあった』(IASブログ)ことからブラウンさんの体内からもHIVが長期にわたって検出されなくなりました。
IASのブログにはさらに『別の言い方をすれば、彼は治癒したのです。このことはHIVがいつか治癒可能になることを示唆するものでした。HIVの治癒研究に取り組む研究者や研究機関には大きな刺激を与えました』と書かれています(ブログは英文ですが、参考までに引用部分だけ日本語仮訳を作成しました)。



3 『Inside/Out ─ 映像文化とLGBTQ+』(早稲田大学演劇博物館)
 新型コロナウイルス感染症対策のため休館していた早稲田大学の坪内博士記念演劇博物館が9月28日(月)に再開しました。再開後初の企画展示『Inside/Out ─ 映像文化とLGBTQ+』は2021年1月15日(金)まで開催の予定です(入場無料)。
 https://www.waseda.jp/enpaku/ex/10407/
 『本展では、戦後から2020年初めまでの映画とテレビドラマを主な対象に多様なLGBTQ+表象に着目し、製作ノート、パンフレット、スチル写真、台本、映像などの多彩な資料とともに歴史を振り返ります』(公式サイトから)
 展示は6つの章で構成され、第3章は《「1980〜1990年代 エイズ・パニックと『ゲイ・ブーム』以前以後」》となっています。



4 TOKYO AIDS WEEKS 2020
 2015年に第29回日本エイズ学会学術集会・総会が東京で開かれたのを機にスタートしたTOKYO AIDS WEEKSが今年も実施されます。
 【TOKYO AIDS WEEKS 2020 】
2020年11月15日(日)~12月15日(火)
 公式サイト: https://aidsweeks.tokyo/
 《12月1日の世界エイズデーの前後の期間に様々なNGOやグループと連携しながら情報発信を行います。この時期にぜひHIV/エイズに関する最新の知識やリアルな声に触れてみてください》
 AIDS WEEKSの目的は以下の二つです。
 ・市民のHIV/エイズ、性感染症などへの関心を高めて感染拡大を抑止します。
 ・感染した人々も安心して暮らせる社会の実現を目指します。
 TOKYO AIDS WEEKSのwebへの掲載などを通して、上記の目的に合う情報の拡散をします。

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