エルハッジ・アマドゥ・シィ国際赤十字・赤新月社連盟事務総長記者会見


エルハッジ・アマドゥ・シィ国際赤十字・赤新月社連盟事務総長記者会見
2014年10月29日、日本記者クラブ

 国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)のエルハッジ・アマドゥ・シィ事務総長が10月29日、東京・内幸町の日本記者クラブで、記者会見を行いました。世界の赤十字、赤新月社の活動には二つの国際組織があります。一つは1863年創立の赤十字国際委員会で、スイス政府をはじめ各国政府から主要な資金を得て紛争地における救護活動や国際人道法の順守・普及にあたっています。もうひとつが国際赤十字・赤新月社連盟で、189カ国の赤十字・赤新月社が加盟し、各国赤十字・赤新月社の育成、活動支援、国際救援活動の調整などにあたっています。とくに自然災害救援に強みを発揮する組織です。

 平たく言えば、戦争や内戦などの際の救護活動から出発し、自然災害の救援などにも活動領域を広げていった赤十字・赤新月運動の歴史的経緯を踏まえた棲み分けがなされてきたようです。ただし、現代社会において支援を必要とする現場はそうすっきりと境界線を引いて分けられるものではなく、両者が協力する領域も多くなっているのでしょうね。

 シィ事務総長は今年8月1日に就任。200人を超える候補者から公募で選ばれています。セネガル出身で国連合同エイズ計画(UNAIDS)ではピーター・ピオット、ミシェル・シディベ両事務局長のもとで事務局次長を務めてきた方でもあります。就任直後にギニア、シエラレオネを訪れ、西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行への対応が最初の大きな仕事になりました。もちろん、グローバル化する世界が対応すべき人道的危機はエボラの流行だけではなく、IFRCの活動も多岐にわたっていますが、その中でも緊急に対応すべき課題ということで、記者会見でも、質問はエボラの流行に集中しました。

 シィ事務総長はまず、IFRCの活動の特長として、コミュニティ内部で活動する1700万人のボランティアの存在をあげ、今回のエボラ対応でも流行の初期段階から2万人のボランティアが継続的に支援活動を続けていることを明らかにしました。そのうえで、当面の重要課題として、人々に正しい情報を伝えることをあげ、差別や偏見の克服、信頼の回復、治療センターの確保などの必要性を強調しています。

 また、エボラウイルスは感染して亡くなった人の遺体から感染することから、安全な埋葬法の普及が重要なことを指摘し、「誠意を尽くし、丁寧に遺体は埋葬することを説明するとともに、感染が広がらないようにするには、安全を確保できるかたちで埋葬しなければならないことを説明している」と述べました。

 死者を弔う行為には文化や伝統に基づくものであり、それを安全性の観点で頭から否定することは、大きな反発を招くもとになります。死者への礼を失することなく安全な埋葬の方法を具体的な選択肢として示すことは極めて重要で、流行国におけるIFRCの活動も埋葬が大きな柱になっています。

 質疑の中でシィ事務局長は、IFRCの2万人のボランティアの中で、これまでの活動によりエボラウイルスに感染した人はわずか1名であり、その1名も回復したため死者は1人もいないことを明らかにしました。また、セネガルやナイジェリアなど周辺国では患者の報告があったものの感染の拡大は防ぎ、封じ込めに成功していることにも言及し、「世界中でリスクに備えるようになっており、パニックになる理由はない。最貧国でも対応はできるのだ」と指摘しています。

 さらに各国に対しては「試練に対応することで知識も専門性も蓄積し、その蓄積を持ち帰って、新たな危機に備えることができる。流行国3カ国が国として取り組み、また、それを各国が支援することで、結局は世界中がエボラから守られることになる」と一層の協力を求めています。

 以下にシィ事務総長の発言の一部を要約して紹介します。会見録画はYoutubeの日本記者クラブチャンネルでご覧いただけますので、そちらをご覧下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=Vk-qKOybY-Y&list=UU_iMvY293APrYBx0CJReIVw

    ◇

 IFRCには189カ国が加盟しているが、その最も大きな力は、コミュニティに暮らし、コミュニティで活動する1700万人のボランティアの人たちである。危機が起きると、その人たちが初動対応にあたることになる。災害時には多くのボランティアが支援に入り、その支援が終わったら出て行くことが多い。だが、われわれの活動は初期対応に限定されたものではなく、開発の課題として支援を継続していくことになる。

エボラの流行国であるギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国では2万人のボランティアがすぐに対応に駆けつけた。エボラは間もなく克服できると期待しているが、その後も2万人はずっとコミュニティに居て保健システムをさらに充実させ、危機に強い体制をつくるために支援を続けていくことになる。

 いま私たちがエボラ対策の最前線で活動するのは、エボラの専門家だからではなく、第一線で常にコミュニティに対応し、いまそのコミュニティが直面している試練がエボラであるからなのだ。

 重要なことは、まず人々に正しい情報を伝えることだ。西アフリカにとっては初めて経験するエボラの流行であり、農村地域ではなく大都市圏に流行が広がったのも初めてだった。マラリア、コレラなどの他の熱帯病と症状が似ているので、人々には識別がしにくいということもある。したがって、コミュニティを総動員して正しい情報の周知徹底をはかることが、当面の最重要課題になっている。

 コミュニティは恐怖、スティグマ、差別を克服しなければならない。
 健康を守れるような行動を促さなければならない。
 症状が出たら、21日間の隔離を受け入れ、治療を受けられるようにしなければならない。
 残念なことに60%は死亡している。もっと信頼を勝ち取り、治療で助かるようにしなければならない。

そうしたこともコミュニティは理解する必要がある。癒やしも必要だし、支援と信頼も欠かせない。

 現地の保健システムを機能するようにしなければならない。シエラレオネでは治療センターを一つ作った。ギニアではフランス赤十字と協力して、リベリアではドイツ赤十字などと協力して設置を急いでいるところだ。

 また、コミュニティには、亡くなった人をこれまでと同じように弔うことはできないということを説得しなければならない。以前のようには服喪はできない、愛する人の死を悼み、悲嘆の気持ちを表明するために遺体に触れることもできない。

 亡くなった人の遺体は、生きている患者より10倍も感染力が強いからだ。

 誠意を尽くし、丁寧に遺体は埋葬することを説明するとともに、感染が広がらないようにするには、安全を確保できるかたちで埋葬しなければならないことを説明している。

 流行国の保健基盤の脆弱さは以前から指摘されていた。コミュニティの団結や信頼が回復できるのかということも大きな課題だ。

 しかし、救いがないわけではない。方法はある。我々は最も効果が出やすいところから行動を開始した。3カ国だけでなく、周辺10カ国でも対応している。セネガルやナイジェリアのように封じ込めに成功している。

 世界中でリスクに備えるようになっており、パニックになる理由はない。最貧国でも対応はできるのだ。

 赤十字、赤新月社は常に現場にいて、コミュニティとともに試練に立ち向かっている。その利益は2つある。

 第一は、危機がますますグローバル化する中で、連帯を示し、お互いに守ることができるようになる。

 試練に対応することで知識も専門性も蓄積し、その蓄積を持ち帰って、新たな危機に備えることができる。流行国3カ国が国として取り組み、また、それを各国が支援することで、結局は世界中がエボラから守られることになる。

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