エボラウイルス疾患(EVD)に対する未承認治療の使用に関する倫理的検討


(解説) 西アフリカのエボラの流行に対応するため、臨床試験を終えていない未承認の実験的な治療やワクチンを使用することが認められるかどうか。世界保健機関(WHO)が11日に行った専門家による協議のサマリー(要約)が発表されました。その日本語仮訳です。ちょっと、ごちゃごちゃした言い回しで訳に自信がない部分もありますが、結論は

《あくまで今回の流行発生という状況のもとで、一定の条件に合えば、効果や副作用がまだ明確でない未承認の方法を治療や予防目的で提供することは倫理にかなうということで協議参加者は合意に達した》

 ということです。その一定の条件は、ケアの透明性の確保、インフォームドコンセント、自由意思に基づく選択・・・といったことですから、そもそも治療を行うときの原則でしょうというような感じもします。したがって、実質的には事態の重大性、緊急性に鑑みてゴーサインを出したということでしょうね。アメリカでもう治療を始めちゃっているのだから、アフリカはダメよとは言えないでしょうといった感じもあります。

 ただし、流行に対応できるだけの提供体制は、少なくとも短期的には取れないという現実もあり、誰に、あるいはどの国に、優先的に提供するのかといった課題については、今後さらに検討していかなければならないということで結論を避けたかっこうです。



エボラウイルス疾患(EVD)に対する未承認治療の使用に関する倫理的検討
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2014/ebola-ethical-review-summary/en/
パネルディスカッション要約 2014年8月12日 WHO声明

 西アフリカが直面しているエボラウイルス疾患(EVD)のアウトブレーク(流行急拡大)は、エボラ流行史上、最大かつ、最も複雑で厳しいものとなっている。エボラのアウトブレークは、早期発見と隔離、接触者の追跡調査とモニタリング、厳格な感染防御策の順守といった実施可能な手段によって封じ込めることができる。しかし、特定の治療法やワクチンもウイルスと闘う有効な手段となり得る。

 過去10年にわたり、エボラウイルス疾患の治療薬やワクチンの開発の研究が進められてきた。そのうちのいくつかは、研究室レベルでは期待の持てる結果を示しているが、人に対する安全性や効果は確かめられていない。2014年の西アフリカにおけるアウトブレークでは非常に多くの人が発症しており、致死率も高いことから、患者の生命を救い、流行を抑えるために実験的な治療の使用を認めるよう求める声が高まっている。

 したがって、WHOは2014年8月11日、未承認の治療を実施するかどうかを判断する際の倫理課題について検討と評価を行った。

 あくまで今回の流行発生という状況の下で、一定の条件に合えば、効果や副作用がまだ明確でない未承認の方法を治療や予防目的で提供することは倫理にかなうということで協議参加者は合意に達した。

 このような手段の提供は倫理基準に基づくものでなければならない。すべての面におけるケアの透明性の確保、インフォームドコンセント、自由意思に基づく選択、個人情報の秘密保持、人に対する敬意、尊厳の保持、コミュニティの関与などがそうした基準には含まれる。

 医療手段の安全性と効果を理解するために、協議参加者は、患者に治療を提供するかどうか、するとしたらいつか、「人道的な観点からの治療提供」(未承認治療法の臨床試験以外でのアクセス)も含め、使用に伴うすべてのデータは収集、共有する道義的な責務があることなどをアドバイスしている。

 協議グループは、こうした実験段階の手段の安全性や効果について、適切で正確な情報を得られるようにするための医学的な評価方法についても検討した。また、(治療や予防のための)こうした手段に対する臨床試験に可能な限り最善を尽くし、安全性と効果を最終的に証明するか、あるいは使用をやめるためのエビデンスを提供する道義的な義務があることも全員一致で合意した。

 こうしたアドバイスに加え、委員会は以下の領域について、より詳細な分析と議論が必要であることも指摘している。

・流行発生時に適切なケアの提供に努めつつデータを収集するための倫理的な方法
・未承認の実験的治療やワクチン提供の際の優先順位を決めるための倫理基準
・新たな手段の候補が増え、そのどれもが短期的には要求を十分に満たすことができない場合に、コミュニティや各国間で公正に分配できるようにするための倫理基準

 協議報告書は2014年8月17日に発表される。



Ethical considerations for use of unregistered interventions for Ebola viral disease (EVD)
Summary of the panel discussion
WHO statement
12 August 2014

West Africa is experiencing the largest, most severe and most complex outbreak of Ebola virus disease in history. Ebola outbreaks can be contained using available interventions like early detection and isolation, contact tracing and monitoring, and adherence to rigorous procedures of infection control. However, a specific treatment or vaccine would be a potent asset to counter the virus.

Over the past decade, research efforts have been invested into developing drugs and vaccines for Ebola virus disease. Some of these have shown promising results in the laboratory, but they have not yet been evaluated for safety and efficacy in human beings. The large number of people affected by the 2014 west Africa outbreak, and the high case-fatality rate, have prompted calls to use investigational medical interventions to try to save the lives of patients and to curb the epidemic.

Therefore, on 11 August 2014, WHO convened a consultation to consider and assess the ethical implications for clinical decision-making of the potential use of unregistered interventions.

In the particular circumstances of this outbreak, and provided certain conditions are met, the panel reached consensus that it is ethical to offer unproven interventions with as yet unknown efficacy and adverse effects, as potential treatment or prevention.

Ethical criteria must guide the provision of such interventions. These include transparency about all aspects of care, informed consent, freedom of choice, confidentiality, respect for the person, preservation of dignity and involvement of the community.
In order to understand the safety and efficacy of these interventions, the group advised that, if and when they are used to treat patients, there is a moral obligation to collect and share all data generated, including from treatments provided for ‘compassionate use’ (access to an unapproved drug outside of a clinical trial).

The group explored how the use of these interventions can be evaluated scientifically to ensure timely and accurate information about the safety and efficacy of these investigational interventions. There was unanimous agreement that there is a moral duty to also evaluate these interventions (for treatment or prevention) in the best possible clinical trials under the circumstances in order to definitively prove their safety and efficacy or provide evidence to stop their utilization. Ongoing evaluation should guide future interventions.


In addition to this advice, the panel identified areas that need more detailed analysis and discussion, such as:

ethical ways to gather data while striving to provide optimal care under the prevailing circumstances;
ethical criteria to prioritize the use of unregistered experimental therapies and vaccines;
ethical criteria for achieving fair distribution in communities and among countries, in the face of a growing number of possible new interventions, none of which is likely to meet demand in the short term.
A report of the meeting proceedings will be available to the public by 17 August 2014.

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