第114回フォーラム報告 《HIV陽性者アンケート「Futures Japan」の目指すもの》

 第114回AIDS & Society研究会議フォーラム報告
シリーズフォーラム エイズとその課題2013 第1回
《HIV陽性者アンケート「Futures Japan」の目指すもの》

 7月17日(水)午後7時~9時
 ねぎし内科診療所(東京都新宿区四谷三丁目)
 お話 Futures Japanプロジェクト 井上洋士代表(放送大学教授)
 参加者8人。

Futures Japan(正式名:HIV Futures Japan プロジェクト)は、HIV陽性者が「自分らしくより健康的な生活」を実現すること、そしてそのために必要な「暮らしやすい社会環境づくり」を目指す研究プロジェクトだという。研究者だけでなく、HIV陽性者自身がプロイジェクトの企画段階から参加し、研究成果を実際の政策提言として反映させることが大きな特長となっている。

今年3月にHIV陽性者のための総合情報サイト『Futures Japan』を開設し、7月20日にはHIV陽性者のための大規模ウェブ調査を開始。調査は当面、2014年1月20日で締め切られるが、その後も引き続き第2次、第3次と継続していく予定だという。フォーラムでは調査開始に先立ち、井上さんにプロジェクトの概要や展望などをお話しいただいた。

 井上さんによると、プロジェクトの発端になったのは、2009年に名古屋で日本エイズ学会が開かれ、その中のシンポジウムでオーストラリアのHIV陽性者調査の報告があったことだ。Futures調査とよばれるこの調査では、2年に1度、1000人前後のHIV陽性者が参加し、その結果をもとにエイズ政策を考える仕組みができているという。設問が350~400問もあり、回答にはかなり時間がかかる。それでも、医療者側が実施主体となった調査では服薬率が高く出るのに、Futures調査だと低くなるといったこともあり、陽性者の本音により近い結果が得られる調査として注目されている。

 日本のプロジェクトはいわば、そのFutures調査をもとに日本の実情に合わせて設計されている。名古屋のエイズ学会直後にはまだ具体的な計画には結びつかなかったが、2011年1月にHIV陽性者を含む後の研究メンバー3人がオーストラリアのメルボルンを視察したことが大きな転機となった。

メルボルンでは、1日目に大学を訪れて研究者らの話を聞き、翌日は市内のポジティブ・リビングセンターやゲイメンズヘルスセンターなどを訪問。オーストラリアでも、プロジェクトは最初から問題なく進められたわけではなく、研究者間の争いもあり、ごちゃごちゃする中で何とかやっている感じだった。井上さんらはそうした話を聞くことで逆に、日本でもできるのではないかという感触を強く持ったという。

 調査によって期待できるのは以下のような点だという。

・施策の基礎資料になる。
  ・要求の根拠を示せる。
  ・継続的実施で動向が分かる。

 HIV陽性者のより広範な関与により、個別の語りを超えた数値的な「声」を集約し、それを陽性者自身の地位や能力の向上に役立てることができる。さらに波及効果として陽性者以外の人々の力づけにもなるという。

 2013年3月に開設した総合情報サイト http://futures-japan.jp はHIV陽性者にとっては以下のメリットがある(あるいは、メリットが生み出せるよう設計を工夫している)。
・情報に対するリテラシーを高める。
・陽性者に必要な情報を陽性者の目線で整理する。

 一方、調査の方はHIV陽性者が企画段階から参加することで、HIV陽性者にとって
  ・自分自身の位置確認を確認できる。
・ふりかえりのきっかけが得られる。
・他の人はどうしているのかが把握できる。
  ・支援体制について行政に提言するための基礎資料になる
 などの利益が生まれる。

質問項目は約300に達し、回答にはかなり時間がかかる。人によって答えずに飛ばせる設問もあるが、短い人で30分、長い人なら2時間くらいかかるだろう。そうした労力を補ってあまりある利益がもたらされると井上さんは言う。医師側が行う患者調査に回答しなかった人にも届きやすいし、回答者が医師の喜びそうな回答をしてしまうことがあるとされる患者調査のバイアスを減らすこともできる。地方居住者などで他の陽性者とのつながりが薄い人、感染告知を受けているが、医療支援サービスにつながっていない人などの声も反映できるのではないかと井上さんは期待する。

調査の回答者数は1000人前後を目標にしたいという。

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