《キャンペーンテーマとその考え方》 「エイズとわたし ~支えることと 防ぐこと~」について 

(解説) 今年度の世界エイズデー国内啓発キャンペーンテーマに関する投稿がエイズキャンペーンテーマ作業班からありましたので以下に掲載します。作業班はAIDS & Society研究会議の理事2名を含むHIV/エイズ分野のNPO関係者を中心に構成される任意のグループです。



《キャンペーンテーマとその考え方》 
  キャンペーンテーマ作業班

12月1日の世界エイズデーを中心にした今年度の国内エイズ啓発キャンペーンのテーマが「エイズとわたし ~支えることと 防ぐこと~」に決まりました。エイズ情報ネット(API-Net)の《平成23年度「世界エイズデー」実施要綱》をご参照ください。
http://api-net.jfap.or.jp/

テーマの策定にあたっては、6月に東京と大阪で公開フォーラム「一緒にテーマを考えよう」を開催するとともに、API-Netを通じ意見募集を行いました。さらに7月にはフォーラムやAPI-Netで得られた意見を参考にしつつ、HIV/エイズ分野のNPO関係者、行政担当者による少人数の作業グループがテーマ案を作成し、厚労省に提案しました。

その結果、採用されたのが「エイズとわたし ~支えることと 防ぐこと~」です。したがって、このテーマは厚生労働省が主唱する世界エイズデーキャンペーンのテーマであると同時に、国内でHIV/エイズに持続的に関心を持つ人たちが12月1日前後に取り組む様々な活動の統一的なテーマとしても活用していくことができる。そうした幅広いキャンペーンのテーマであってほしいと作業グループは考えています。

また、作業グループの議論の中では、前年度テーマ「続けよう」についても、文字通り継続を呼びかけるメッセージであることから、複数年テーマとして今後もコンセプトを生かしていきたいとする意見が強く出され、そうした意見に対する明確な反論はありませんでした。

テーマが存在することで、これまで切り離されて行われてきた様々な活動が啓発のキャンペーンとしてひとつのつながりを持つような動きが出てくれば、これに増す喜びはありません。

 作業グループを中心とするNPO関係者の間では、「エイズとわたし ~支えることと 防ぐこと~」の採用が決定した後、一連の議論を集約するかたちで「エイズキャンペーンテーマ作業班」として、テーマを補完するメッセージ(ボディコピー)、およびテーマの趣旨を説明する文章(コンセプトシート)をまとめました。テーマをより有効に活用していただくため、参考までに報告します。非公式なものではありますが、趣旨をご理解いただき、キャンペーンの実施にあたってご使用いただければ幸いです。


◎平成23年度世界エイズデー国内キャンペーンテーマ
 
 「エイズとわたし ~支えることと 防ぐこと~」


◎ボディコピー

どこかでエイズの流行と触れあっている「わたし」。すれ違ったかもしれない「わたし」。だれが何を支え、何を防ごうとしているのか。いろいろな人たちの「エイズとわたし」を聴いてみたい。そして、語りたい。


◎コンセプトシート

《エイズとわたし》
 エイズの流行に対する社会的関心が低下している要因のひとつとして、自分とは関係ないという意識が指摘されてきました。「他人事ではありません」という標語が使われたこともありますが、「あんたも感染するかもしれないよ、気をつけな」と上からの警告的メッセージに矮小化され、かえって逆効果になった面もあります。もっと直裁に、私にとってどうなのかということを考える契機が必要ではないか。「エイズとわたし」はそうした認識に基づくメッセージです。

東日本大震災の復旧復興過程の中では、エイズの流行のように長期にわたる現象が不要不急の課題として扱われることもあります。しかし、現実には「不急」ではなく、「不休」の課題というべきでしょう。もちろん、「不要」ではありません。

エイズは開発や経済のグローバル化、冷戦構造の崩壊といった世界史的現象に伴って浮上した20世紀後半からの「新興感染症の時代」の中で、パンデミック(世界的大流行)に拡大した唯一の新興感染症です。わが国では比較的、流行が抑えられてきたとはいえ、病原ウイルスであるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染はゆるやかに拡大を続けています。そうした現象と日常の「わたし」はどう関係し、「わたし」にとってどんな意味を持つのでしょうか。


《支えること》《防ぐこと》
 予防と支援の両立は、国内で見直し作業が進められているエイズ予防指針や6月の2011国連総会エイズハイレベル会合の政治宣言でも強調されているエイズ対策の基本的な考え方です。

〈支えること〉
1 HIV陽性者への治療、ケアの提供
2 HIVの流行に影響を受けている人たちへの支援

〈防ぐこと〉
1 HIVの新規感染の予防
2 HIVに感染している人のエイズ発症の予防

予防と支援なのに、「支えること」が先なのはどうしてなのか。「予防」の重要性を否定するわけではもちろんありませんが、そもそもHIV陽性者が社会生活を続けていける条件が整わなければ、予防対策もうまくいきません。この30年のHIV/エイズ対策の最大の推進役は、HIVというウイルスに感染した人たち、エイズの流行に大きな影響を受けた人たちであり、その人たちの闘う力を支えなければ、予防のメッセージを社会により広く届けることもまたできない。そうした事情を重視しました。


《エイズとわたし 支えることと 防ぐこと》
 HIVの流行に影響を受けている人たちとは多くの場合、HIV陽性者の家族、恋人、友人、知人といった人たち、そして、HIV感染の高いリスクにさらされやすく、そのために社会的な差別や偏見を受ける恐れもある人たちを想定して使われます。

 しかし、考えてみれば、日本国内でHIVに感染している人はエイズ動向委員会の報告ベースでも年間1500人前後に達しています。累積報告数から判断すれば、少なくとも2万人を超えるHIV陽性者がすでに、会社などで働き、学校で勉強し、映画を見に行ったり、ときにはバーで一杯飲んで帰ったり、テレビでなでしこジャパンを応援したりしている現実があります。

そのリアリティ(現実)を受け止める想像力さえあれば、「流行を受けている人たち」はもっともっと大きな広がりを持ってきます。その中でもう一度、「エイズとわたし」の関係を考えてみたい。だれが何を支え、何を防ごうとしているのか。どこかでエイズの流行と触れあっている「わたし」。すれ違ったかもしれない「わたし」。いろいろな人たちの「エイズとわたし」を聞いてみたい。紹介できる機会を作りたい。そんな思いが「エイズとわたし 支えることと 防ぐこと」には込められています。

 「支えること」と「防ぐこと」はまた、東日本大震災の被災地支援や今後の防災対策につながるメッセージでもあります。エイズの流行のようにゆるやかに進行する危機に対応することは、予測困難な突発的事態に備え、社会基盤を整備する観点からも重要です。エイズ診療体制の整備や恐怖・不安・喪失・悲嘆に対する心理ケアの充実、NPO/NGOと行政機関との連携協力の強化などは、未知の危機に遭遇したときの即応体制に備えることにもなります。

すでに保健所や自治体と連動したかたちで「エイズとわたし 支えることと 防ぐこと」というテーマを具体化していく動きが生まれているところもあります。まだ動きは生まれていなくても、きっかけさえあれば、というところもあるでしょう。いまこそ、その蓄積を生かすときです。


《流行の現状とその背景》
 HIV/エイズの流行は1981年6月の最初の公式症例報告以来、今年で30周年を迎えました。この間に世界では約3000万人がエイズで死亡し、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の最新推計では、2010年末時点のHIV陽性者数は3400万人に達しています。また、現在も平均すると世界で毎日7000人が新規にHIVに感染していると推定されています。

 国内では予防と支援の両方に目配りしたこれまでの対策の成果もあり、全体のHIV陽性率は低く抑えられているものの、新規感染はゆるやかに拡大を続けていることが厚生労働省エイズ動向委員会の報告から推定できます。流行は終わったわけでも、終息に向かっているわけでもありません。

エイズ動向委員会の報告では、感染経路は同性間の性感染が多数を占めており、対象層としてのMSM(男性と性行為をする男性)への予防、支援策の充実が依然、緊急の課題となっています。また、報告数こそ少ないものの、異性間の性感染は対象層の規模が大きく、性的に活動的な若年層には、異性間、同性間を問わず、性感染のリスクが他年齢層に比べて大きいという事情もあります。将来の感染の拡大を回避ないしは緩和するための施策が、比較的陽性率の低いときにこそ重要です。

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