「TOP HIV/AIDS NEWS OF 2009」

 MedScapeという情報サイトがまとめた2009年のHIV/エイズ関係の10大ニュースです。JAIDSのサイトに投稿された広島大学、高田昇先生の日本語による紹介記事を転載します。治療関係のかなり専門的な話題が多いようですが、短いコメントが付けられているので助かります。高田先生、ありがとうございました。

    ◇

質の高い情報サイトであるMedScapeが、「TOP HIV/AIDS NEWS OF 2009」という記事を配信してきました。2009年のHIV業界のハイライトは何だっただろうか、という振り返りです。

1. HIV感染者の心血管障害が低く見積もられていた。
CVD Risks of HIV Infection Underestimated
July 8, 2009
http://email.medscapecme.com/cgi-bin1/DM/y/hCoOx0FjjOn0WQW0KcKi0Em&uac=68084PK
元々心筋梗塞で死亡する人が多いアメリカでは、確かにショッキング。有効な抗HIV療法の時代になって、HIV感染者はエイズで死ぬのではなく、心筋梗塞が増えるという報告でした。

2. HIV感染の思春期以上の大人に対する日和見感染症の管理についてのガイドラインの改訂版
Guidelines Updated for Management of Opportunistic Infections in
HIV-Infected Adults and Teens
March 27, 2009
http://email.medscapecme.com/cgi-bin1/DM/y/hCoOx0FjjOn0WQW0Ksgb0EP&uac=68084PK
すでに、ご紹介しました。私自身はこの本がHIVケアにあたっている医療者にとって、最も重要な文書の一つだと思っています。日本語への翻訳版は鳥居薬品が配布しています。お勧めです。


3. 早期の抗HIV療法は遅い治療に比べてエイズ発病や死亡を減らす
Early vs Deferred Antiretroviral Therapy May Reduce AIDS Progression and Death
May 26, 2009
http://email.medscapecme.com/cgi-bin1/DM/y/hCoOx0FjjOn0WQW0Ksgc0EQ&uac=68084PK
大規模なコホート研究。つまり数千人、数万人という規模のHIV感染者をさまざまなデータがおそらくコンピュータ上で記録されていれば、後から分析することによって、何が危険なのか、何が寿命を延ばすのに大切なのか把握できる、ということを示したキタハタらの研究。私などわずか200人未満の患者の分析でも、うまく果たせていないのに。。。日本にもしっかりした臨床研究、コホート研究、介入研究を打ち立てなければならないと実感した発表でした。

4. たった1回のネビラピン療法でも隠れたリザーバ細胞に薬剤耐性を引き起こす
A Single Dose of Nevirapine May Establish Antiretroviral Resistance
Within the Latent Reservoir
April 27, 2009
http://email.medscapecme.com/cgi-bin1/DM/y/hCoOx0FjjOn0WQW0Ksgd0ER&uac=68084PK
母子感染だけを減らしたい、ということで安いネビラピンを出産時に1回だけ使いました。確かに母児感染は、半分になったけど、その1錠だけで薬剤耐性を誘導するには十分だったという怖い話です。やっぱり治療は徹底してやらないといけません。

5. ヨーロッパ・エイズ臨床協会は、2009年11月20日にヨーロッパのHIV管理に関する新しいガイドラインを発表。
European AIDS Clinical Society Issues New Guidelines for Management of HIV
November 20, 2009
http://email.medscapecme.com/cgi-bin1/DM/y/hCoOx0FjjOn0WQW0KoiB0Ep&uac=68084PK
アメリカのガイドラインが、より早めに傾いていくけれど、ヨーロッパは慎重派です。

6. 包皮環状切除によってHIV-1とHIV-2とHPVの感染を減らすかもしれない。
Circumcision May Reduce Incidence of HIV, HSV-2, HPV Infection
March 25, 2009
March 25, 2009
http://email.medscapecme.com/cgi-bin1/DM/y/hCoOx0FjjOn0WQW0Ksge0ES&uac=68084PK
これも話題ですね。おちんちんの皮を切る手術も、血友病患者にとっては命を落とす出血に繋がります。資源のない国では血友病治療薬など手に入りません。衛生管理が良くなければ、傷口から細菌が侵入し、感染症を起こして生命を落とした子供がいます。また下手な手術で、結局おちんちんの皮だけじゃなく、おちんちん全体を切り落としたという悲劇もあるようです。

7. 抗HIV療法を経験したことがある患者には薬剤耐性検査をすることによって、今後の生存期間が改善されるかも知れない。
HIV Susceptibility Testing May Improve Survival Among
HAART-Experienced Patients
July 24, 2009
http://email.medscapecme.com/cgi-bin1/DM/y/hCoOx0FjjOn0WQW0KZyM0Ev&uac=68084PK
治療に失敗したら、どの薬が効かないのか検査をすれば、その後の薬剤選択に役立つだろう。だれでもそう思うけれど、それをちゃんとデータで示してしまいました。耐性検査をするにはウイルス量が1000コピー以上に増えている必要があります。

8. HIVの併用療法でラルテグラビルはエファビレンツに匹敵する効果と忍容性がある。
Raltegravir May Be a Well-Tolerated Alternative to Efavirenz for HIV-1
Combination Therapy
August 10, 2009
http://email.medscapecme.com/cgi-bin1/DM/y/hCoOx0FjjOn0WQW0KZyM0Ev&uac=68084PK
2009年はラルテグラビル躍進の年でした。早々と出たばかりの新薬に飛びついて良いのだろうかと、誰でも迷ったでしょう。長期間観察のデータはまだ足りないという人もいるでしょう。でも、10年以上ウイルスが消えたことがなかった患者で、すーっと消えていくのを見ると、凄い薬だと思います。。

9. HIV感染症のプライマリケアのガイドラインが改訂された
Primary Care Guidelines Updated for Management of HIV
August 20, 2009
http://email.medscapecme.com/cgi-bin1/DM/y/hCoOx0FjjOn0WQW0KZxA0Ei&uac=68084PK
これも、強くお勧めの論文です。ガイドラインを集めたガイドラインみたいです。これを見ると、アメリカ人はガイドライン作りが大好きに見えます。結局、私たちも無視できません。天才的にひらめく名医を育てるのは無理。むしろガイドラインを熟知して患者に接することができる良医なら育てられるでしょう。

10. FDAはセルゼントリの安全性についての情報を改変
FDA Safety Changes: Selzentry, Triglide, Neulasta
February 6, 2009
http://email.medscapecme.com/cgi-bin1/DM/y/hCoOx0FjjOn0WQW0Ksgf0ET&uac=68084PK
ケモカイン受容体であるCCR5を阻害しても、生物学的には害はないと思われてきました。セルゼントリは期待が持たれたのですが、肝障害がある人に使うと心血管障害の合併症が発生することがあるようで使用上の注意を書き換えることになりました。日本では、あまり使われていません。ちょっとブレーキがかかるか。

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