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zoom RSS 通貨取引税とはなにか HIV普遍的アクセスとミレニアム開発目標の達成のために

<<   作成日時 : 2009/10/04 12:37   >>

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(解説) 地球規模の保健課題の解決に必要な資金を確保するために、新しい財源として国際連帯税の創設をめざす動きが先進国で活発になっています。エイズ、結核、マラリアといった地球規模の感染症で大きな打撃を受けているのはアフリカやアジアの途上国ですが、その影響は先進国も免れません。対策が効果を上げるには先進国も途上国も応分の負担をしなければならない。そうした考え方は、貧困をなくすためのミレニアム開発目標(MDGs)やHIVの予防、治療、ケア、支援のための普遍的アクセスが国際社会の共通の目標となるなかで浸透していきました。その財源として「革新的資金メカニズムをどのように開拓していくのか」という議論の中で浮上してきたのが国際連帯税です。航空券税と並んで国際連帯税としての機能が注目されている通貨取引税について、エイズ&ソサエティ研究会議Project RINGのスタッフがこれまでの経緯を分かりやすくまとめました。



通貨取引税とはなにか 
 HIV普遍的アクセスとミレニアム開発目標の達成のために

国際連帯税と革新的資金メカニズム

 米ドルから円、円からEUROといった通貨の為替取引に課税しようという構想が注目を集めています。通貨取引税(Currency Transaction Levy, CTL)、通貨取引開発税(Currency Transaction Development Levy, CTDL)と呼ばれるものです。途上国の人々の健康権を擁護するために先進国が拠出するODAはいまだに需要には遠く及ばす、これを補完する目的の新しい資金メカニズム(Innovative Financing Mechanism)、あるいは国際連帯税(International Solidarity Levy)の一つとして、その創設が求められています(1)。

 金融市場はいわゆるグローバリゼーションの最大の受益者であり、為替取引は巨大化を続けています。したがって、市場への影響を極力抑えた僅かな税率でも、大きな資金獲得が見込まれます。これが注目される第一の理由です。市場規模は2004年に年間500兆米ドルだったのが、08年には1,000兆ドル超に膨張しています。税率としては0.005%(つまり10万円両替すると5円)という案が有力とされています(2)。

 ちなみに日本が導入したとすれば、2007年には56億ドルの資金が得られたと試算されています。同年のODA実績は77億ドルで先進国(OECD/DAC)中第5位、国民総収入(GNI)比0.17%で第20位(下から3位)でした。

 通貨取引への課税というこの構想は、1970年代におけるジェームス・トービン(James Tobin)の課税構想を連想させます。トービン税は投機的通貨取引の国際的規制が目的で、当初は税率1%をすべての通貨に課すという提案でした(3)。それは新たな通貨取引税構想では副次的とされ、第一の目的は開発のための資金創出です。そして、国際協調はむろん望ましいのですが、登記規制ではなく税収が主目的なので、一通貨だけでも実行可能です。

 加えて現在の為替市場は、多通貨同時決済(Continuous Linked Settlement, CLS)や銀行間国際通信協会(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication, SWIFT)といった国際的なITシステムないしネットワークに依存しています。このため、公的な管理が比較的容易かつ公正な課税が可能(つまり脱税が困難)です。このように導入可能性が高いことが第二の理由です。

 いま注目を集めているもう一つの理由は、2009年6月に2つの国際的イニシアティブが、相次いでこの税の導入の検討を始めたことにあります。その一つはフランスが主導したリーディング・グループ(LGS)(4)、もう一つはイギリスが提唱した国際保健パートナーシップ(IHP+)(5)に設けられた委員会(HLTF)です。

 2001年に国連ミレニアム開発目標(MDGs)が設定され、その実現のために翌年メキシコのモンテレーで開かれた国連開発資金会議において、ODA拠出の目途をGNI比0.7%とすることが再確認され、同時にODAを補完する資金調達源として革新的資金メカニズムも議論されました。LGSもIHP+/HLTFも、この流れを受けて形成されたイニシアティブです。この二つがときを同じくして、ODA増を補完する革新的資金源として、通貨取引税の検討に入ったのです。

リーディング・グループと国際保健パートナーシップ

 フランスのジャック・シラク(Jacques René Chirac)大統領は2005年のダボス会議で国際連帯税構想を発表し、翌06年にパリで革新的資金メカニズムの創出を議論する国際会議を開催しました。この討議を年2回継続するために、38カ国で設立されたのが「開発資金のための連帯税に関するリーディング・グループ」(Leading Group on Solidarity Levies to Fund Development)です。09年8月現在、オブサーバーを含む58ヶ国、それに国連合同エイズ計画(UNAIDS)(6)、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)(7)などの国際機関、NGOも参加しています。

発足の年に仏など5カ国は、エイズ、結核、マラリアの治療薬・診断薬の価格低下と供給拡大を目的に、「医療品購入ファシリティUNITAID」を設立しました(8)。1年後には計28カ国が参加し、3億ドル超の資金を80ヶ国以上に提供しました。財源は多様で、仏は前年に新設を決めた航空券税、ノルウェーは航空燃料CO2税、英はODAから拠出しています。

 同じ年にイギリスの提案で、「予防接種のための国際資金ファシリティ」(International Finance Facility for Immunization, IFFIm)も発足し(9)、途上国におけるワクチンの普及をはかるGAVIアライアンスに資金を提供しています。

 翌07年にイギリスのゴードン・ブラウン(Gordon Brown)首相の呼びかけにより、「国際保健パートナーシップ」(International Health Partnership + Related Initiative, IHP+)が設立されました。これは、05年のOECD/DACによるパリ援助効果向上宣言を受けて、各途上国(パートナー国)と先進諸国および保健関連国際機関(開発パートナー)とが協調して保健体制を整備することを目的としています。09年8月現在、途上国13、先進国11が参加しています。

 LGSは09年5月パリでの第5回総会で、通貨取引税の技術的・法的実現可能性を検討するワーキンググループの設置を決定しました(10)。パリでは同時にIHP+の「保健システムのための革新的資金調達に関するハイレベル・タスクフォース」(High Level Taskforce on Innovative International Financing for Health Systems, HLTF)が、3回の会合を経て報告書を出しました。これはブラウン首相とロバート・ゼーリック(Robert Zoellick)世銀総裁を共同議長として設置されたものですが、その報告書でも、通貨取引税の技術的実現性の検討が勧告されました(11)。

 日本は、超党派で08年に設立された「国際連帯税創設を求める議員連盟」の要請により、同年LGSの55番目のメンバー国になりました。IHP+のメンバー国ではありませんが、HLTFにはWHO/WPRO事務局長をつとめた尾身茂が外務省顧問として参加しました。
市民社会では、97年アジア通貨危機に触発されて翌年から仏そして国際的に反グローバル化運動を続けるATTAC、Make Poverty HistoryやGCAPの反貧困キャンペーンに05年から関わる英のStamp Out Povertyはじめ、多くのNGOによって通貨取引税の構想が提唱されてきました。日本ではATTAC Japanやaltermondeオルタモンドがトービン税、国際連帯税の唱導を続けており、09年には国際連帯税を推進する市民の会ACISTが発足しています。

(1) 通貨取引税の簡潔な紹介として、デービッド・ヒルマン(David Hillman), 開発のための革新的資金創出:モンテレーからドーハへ拡大に向けて. 国連開発資金会議サイドイベント(2008/11/29 ドーハ), http://blog.goo.ne.jp/global-tax/m/200812. 岡田幹治,“国際連帯税”の導入を急げ. 金曜日, 742, 2009/03/13. 金子文夫, 金融危機と国際連帯税. 世界, 2009/3.
(2) トービン税については、http://www.jca.apc.org/attac-jp/japanese/tobintax_index.html 、http://altermonde.jp/tobin1_html 参照。
(3) ロドニー・シュミット(Schmidt, Rodney, The Carrency TransactionTax: The Rate and Revenew Estimates. The North-South Institute, 2007)によれば、0.005%の課税で取引総額の約14%減少が見込まれます。金子全掲論文とソニー・カプーア(Sony Kapoor), MDG 資金不足および拡大する不平等の問題に対する、金融市場を利用した解決策. リーディンググループ会議(2007 /09/03 ソウル), http://altermonde.jp/pdf/0712118a.pdf 参照。なお、08年の通貨取引総額のうち貿易総額(輸出+輸入)は30数兆ドルにすぎません。
(4) http://www.leadinggroup.org/rubrique20.html 
(5) http://www.internationalhealthpartnership.net/en/home 邦語での設立のニュースは http://blog.livedoor.jp/ajf/archives/51000646.html
(6) http://www.unaids.org/en/ 
(7) http://www.theglobalfund.org/en/  日本語での情報は、世界基金支援日本委員会http://www.jcie.or.jp/fgfj/ およびProject RING http://www.project-ring.jp/ 
(8) http://www.unitaid.eu/  憲章の邦訳はhttp://asajp.at.webry.info/200611/article_4.html
(9) http://www.iff-immunisation.org/  邦語資料はhttp://www.iff-immunisation.org/jpn_files.html 
(10) 邦語でのニュースはhttp://blog.goo.ne.jp/global-tax/m/200906 
(11) 邦語でのニュースはhttp://blog.goo.ne.jp/global-tax/m/200907 報告書サマリーの邦訳はhttp://altermonde.jp/pdf/090706.pdf
(Project RING 小川亜紀 樽井正義 稲場雅紀)

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