HIV/エイズに関するコミットメント宣言5年後の実施状況2

(解説)国連事務総長報告書の続きです。


II.主な判明事項と提言

9.総会の要請(決議60/224参照)に基づき、この報告書は2001年の国連エイズ特別総会以来の世界のエイズ対策の進展状況について更新して報告し、何が重要な課題なのかを把握したうえで、世界レベル、地域レベル、国レベルにおけるエイズ対策強化のための緊急提言を行なうものである。報告書に盛り込まれた情報の多くは、コミットメント宣言の実施状況をモニターするためにUNAIDSとその研究パートナーが作成した主要指標(コアインディケータ)に基づき、各国から提供されている。約120カ国が2003年の報告書のデータを最新のものに更新し、主要指標に基づき最近の傾向を把握することができる。国別報告書に加え、市民社会からの30以上の報告書、各国単位および世界規模の調査、介入プログラムの推定カバー率などによる情報も国連エイズ特別総会以来の世界のエイズ対策の全体像を把握するための補完材料になっている。

10.報告書により、以下のようなことが判明している。
 (a)ほとんどの国で効果的なエイズ対策を進めるための強固な基盤が存在している。国別報告書を提出した国の90%が国のエイズ戦略を策定しており、85%がエイズとの闘いをコーディネートするための統一された国の機関を有している。ほぼ40の途上国で国のエイズ対策は国家元首またはその代理人が責任者となっている。
 (b)エイズ対策の資金源は大きく増えている。しかし、エイズの流行を縮小に転じうる対策を支えるには一層の資金確保が必要になる。エイズ対策資金の拡大のペースは表1に示されているように、国連エイズ特別総会以来、加速している。2005年には低中所得国のエイズ対策に約83億ドルが使われた。コミットメント宣言で資金目標となった70億ドルから100億ドルのレベルに到達する額である。

 表1 エイズ対策のための年間資金総額推計、1996-2005 (略)

(c)治療へのアクセスは、目標には到達しなかったものの、大きく拡大している。世界は2005年末までに300万人に抗レトロウイルス治療を提供するという目標は果たせなかったとはいえ、いまや途上国の130万人が治療へのアクセスを得ており、「3バイ5」計画は結論的に資金の限られたところでも抗レトロウイルス薬を提供しうることを示すかたちになった(表2参照)。治療が必要な人の50%をカバーするという「3バイ5」の目標を超えている国も24カ国ある。

 表2 低中所得国で抗レトロウイルス治療を受けている人の数、2002年末-2005年末  (略)

(d)いくつかの国ではHIV予防プログラムへのアクセスが劇的に拡大している。70カ国以上の調査では、検査とカウンセリングのサービスの利用者は2001年の400万人から2005年の1650万人へと過去5年間で4倍以上に増えている。データを提供した58カ国では、小学校の74%、中学校の81%でエイズ教育が行なわれている。いくつかの国では約70%の妊婦に対し母子感染予防のサービスが提供されている(世界の平均は9%である)。ほとんどの国で輸血用血液はHIVのスクリーニング検査が義務付けられている。
(e)HIV予防、治療のアクセスが拡大しているにもかかわらず、HIV/エイズの流行は悪化を続けている。とりわけ女性と若い人たちにその傾向が顕著である。エイズはかつて男性を中心に流行が広がっていたが、いまは女性がHIV陽性者の半数を占めている。アフリカでは60%が女性である。HIVの新規感染の半分以上は15-24歳の若者で占められている。アフリカの一部およびカリブ諸国では若い女性(15-24歳)は若い男性より6倍もHIVに感染している。
(f)HIV予防プログラムは最も高いリスクにさらされている人口層にはとどかずに終わっている。男性とセックスをする男性で、2005年に何らかの予防サービスを得ている人は9%に過ぎない。東ヨーロッパ・中央アジアでは4%、最も高い中南米・カリブ諸国でも24%である。薬物注射使用者でHIV予防サービスを受けている人は5人に1人以下、とくに薬物使用が急激なHIV感染の増加を促している東ヨーロッパ・中央アジア(10%)が低い。24カ国が何らかの予防サービスを受けているセックスワーカーの割合を報告している。そのうち9カ国は50%以上に達していた。19カ国では、客との直近の性行為の際、コンドームを使用していたセックスワーカーが50%を超えていた。データはセックスワーカーの間での予防プログラムのカバー率が、男性とセックスをする男性や薬物使用者のカバー率より高いことを示しているが、この3つのグループのすべてに対し、適切なレベルのカバー率を実現させるにはさらなる努力が必要である。
(g)HIV新規感染の半分は若者によって占められているのに、若者を対象にした予防対策はとても適切に行なわれているといえるような状態ではない。それでも若者の間では行動変容の様子が見られるようになっている。 コミットメント宣言は2005年までに若者の90%がHIVに関する知識を得ているようにすべきだとしているが、調査ではHIVについて適切に教えられている若者は50%に満たない。期待の持てるデータとしては、サハラ以南のアフリカの13カ国を対象にした調査で、2000年と2005年を比べると、15歳以前にセックスを経験している若者の割合が減り、コンドーム使用率は高くなっている国が9カ国に達している。
(h)偏見と差別はHIVの予防、治療、支援プログラムに対する最も大きな障壁である。とりわけ偏見は、バルナラブルな人口層に対するサービスや母子感染予防をはじめとするHIV予防プログラムに対する重大な障壁である。30点を超える市民社会報告書によると、HIV陽性者に対する偏見と差別は広がっている。とくに女性は非常に大きな偏見と差別を受けている。
 (i)エイズ対策における人権の促進、保護、実現は十分ではない。UNAIDSに報告書を提出した国の半数は偏見にさらされた人々のためのHIV関連サービスを効率よく提供することを妨げる政策が存在していることを認めている。多くの国の法制度が、HIV/エイズに影響を受けている子供たち、およびその世話をする高齢者を適切に守ることができずにいる。保護法制が存在するところでも、実施能力はきわめて弱い。
(j)各国政府、国際パートナー、コミュニティはエイズで親を失った1500万人の子供およびエイズの流行によって立場が弱くなっている子供たちに対し、適切なケアと支援を提供できていない。サハラ以南のアフリカで深刻なエイズの影響を受けている国々はエイズによって立場が弱くなっている子供たちのための政策を打ち出しているが、基本的な支援サービスを受けることができているのは、そうした子供たちの10人中1人もいない。

11.この報告書の主な提言は以下の通りである。
 (a)政府
  ・国レベルでは:政府は、対策のための資金を大幅に増額し、社会のすべての分野の人々が参加できるよう積極的に取り組み、HIVに対する関心を高め、偏見をなくす努力をすることで国の対策を主導し、責任を持ってその対策について説明する役割を担わなければならない。国の対策プログラムはすべて、エイズ対策への関心を高め、偏見をなくしていくための効果的なコミュニケーション戦略を持たなければならない。保健医療従事者はこうした対策により積極的に関わるべきである。
  ・国際レベルでは:低中所得国、とりわけサハラ以南のアフリカ諸国のエイズ対策のための資金を提供することに加え、資金提供国は長期的な資金確保を約束することで財政の安定化に努め、同時に資金が必要なところに優先的に活用されるような融通性も認める必要がある。「三つの統一」原則と普遍的アクセスの実現に向けた動きは重要である。
 (b)市民社会:HIV陽性者および宗教関係団体、企業、労働団体などを含む市民社会の他のメンバーは、国の対策の策定、実行、モニタリングのための対等のパートナーでなければならない。政府と資金拠出者はコミュニティ組織およびHIV陽性者ネットワークがエイズの流行に対応する能力を獲得し、維持していけるようにするための計画を優先的に実行していかなければならない。
 (c)国連システム:国連システムは、各国が効果的なエイズ対策を実施、充実させていくのを支援するため、潜在力をフルに活用しなければならない。国連は自らの活動についてよりきちんと説明し、責任を持つとともに、各国の対策を促進し、資金拠出国が約束を果たすことを促すために思い切った行動を取らなければならない。また、各国の国内において、統合エイズチームを設立するなど多分野にまたがるパートナー間のコーディネートをより戦略的に進めていかなければならない。
   

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