第12回HIV陽性者国際会議の中止決定について

(解説)ペルーの首都リマで2006年3月12日から16日まで、5日間にわたって開催される予定だったLIVING2006の中止が決定されました。LIVING2006は第12回HIV陽性者国際会議と第7回在宅・コミュニティ・ケア国際会議を同時開催する注目の機会でしたが、大会議の費用をまかなう資金が必要額の4分の1しか集まらない厳しい財政状況の中で最終的に中止の決断をせざるを得なかったようです。LIVING2006のウエブサイトに掲載されたHIV陽性者の世界ネットワーク組織The Global Network of People Living With HIV/AIDS (GNP+)の「LIVING 2006/ VIVR 2006 CANCELLED」を翻訳して以下に紹介します。
余談ながら訳者は、2003年ICAAPの2年延期という苦渋の決断を強いられた第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議(神戸エイズ国際会議)の組織委員の一端に連なっていました。神戸エイズ国際会議の場合、延期は新型肺炎SARSの流行に対する懸念が理由だったとはいえ、資金確保もまた困難を極め、支出の抑制に苦労しました。地元のリマでLIVING2006の開催準備に当たっていた人たちの無念は他人事とは思えません。このGNP+の文書でもIFRCのバーナード・ガードナー氏が最後に指摘していますが、ペルーの会議関係者の信頼が失われるようなことがないようHATプロジェクトからも「くじけることはない。次を考えよう」とささやかながら声援を送りたいと思います。



LIVING 2006は中止  
「リビング2006の中止が意味するのは、予定表から会議がひとつ消えたというだけのことではない」

 The Living with HIV Partnershipは、ドナーからの十分な資金協力が得られない見通しであることから、LIVING2006の中止という困難な結論に至った。この決定は困難ではあるが、会議の4カ月前になっても最低限必要な資金の4分の1しか、資金拠出約束が得られない状況では、決断せざるを得なかった。
 会議の計画に参加したすべての組織にとって、中止は非常に残念である。The LIVING 2006はHIV陽性者国際会議と在宅・コミュニティ・ケア国際会議をあわせて開催するという極めてユニークな会議になる予定だった。
 The LIVING 2006の中止決定により、HIV/エイズと共に生きる人々(PLWHA=HIV陽性者)は、私たちが生きていくうえで重要な課題に取り組み、今後の戦略を立てていくための貴重な機会と新しいアクティビストの能力開発のための討議の場を奪われた。
 HIVとともに生きる陽性者は、世界中でHIV/エイズの流行がもたらす打撃を軽減するための対策の最前線に立っている。過去の会議は、PLWHAがすでに得ている知識と経験を今後の活動の強化のために共有することを可能にした。
 コミュニティ・在宅ケアの提供者がエイズの流行の最も深刻な国で担っている重要な役割を認識する機会も失われた。ほとんどの国で、こうしたケア提供者は保健システムの重要な担い手であるのに、低い評価しか与えられてこなかった。在宅ケアやコミュニティ・ケアがなければ、HIV/エイズと闘うための国際機関の戦略は成立せず、対策は目標を達成できないまま失敗に終わるだろう。
 The Living with HIV Partnershipは、HIV陽性者に対するケアを改善する努力を続ける在宅およびコミュニティ・ケアの提供者(その多くは自らもHIV陽性である)への投資は価値があると考えている。こうした投資は、財政的にも投資効果が高く、HIV/エイズ治療薬が効果を保つための治療のコンプライアンス支援や家族に対する基本的な看護指導などのボランティアのための業務と比べても小さくてすむ。ドナーが公式の保健ケアシステムへの投資のみを選択するなら、治療のユニバーサルアクセスは今後も夢にとどまったままだろう。
 The Living with HIV Partnershipのメンバーのひとつである国際赤十字/赤新月連盟(IFRC)のバーナード・ガードナー氏は「連盟は医師に対し、不必要な苦しみをなくし、生命を救うために戦略を見直し、市民社会の進歩にあわせた対応をするよう訴えている」と語る。
 HIV/エイズと生きる国際女性コミュニティ(ICW)のフィオーナ・ペティト氏は「ICWにとっては最も困難な選択の一つだった。二つの会議はともに、以前から開かれ、HIV感染がもたらす打撃の緩和にそれぞれの役割を果たしてきた。ICWのメンバーにとっても、他のHIV陽性の女性にとっても、その価値は極めて大きく、新たな活動を促すインスピレーションを与えてくれることも多かった。ドナーはこうしたカンファレンスへの資金を提供すべきである。開催することによってもたらされる価値は、かけた費用を大きく上回るだろう」と話している。
 国際エイズサービス組織評議会(ICASO)のリチャード・ブルジンスキー氏は「この会議を失うことがHIV/エイズの世界的な流行の中でどのような意味を持つのか。私たちはみな、このことを緊急に検証しなければならない。PLWHAとケア提供者が、連帯を築き、経験と教訓を共有し、最も影響を受けている人たちを基準にして戦略を立てるための主要な国際会議の場を失うことで、何が起きるのか。中止は単に予定表から会議がひとつ減るという意味ではない」と指摘する。
 ペルーおよびラテンアメリカのHIV陽性者とともに働いてきたLIVING 2006のパートナーの関与はこれで終わったわけではない。パートナーシップにより、ラテンアメリカの人たちの声と課題は、各国、地域、そして世界全体の協議事項の中にきちんと反映させなければならない。
 LIVING 2006が中止となったことで、The Living with HIV Partnershipがなくなるわけではない。パートナーシップの目的に沿って中止された会議に代わる活動を模索する動きはすでに始まっている。主要な課題とトピックスは他の地域会議および世界規模の会議で、より協力に取り上げられることになるだろう。
 すでに2005年12月のはじめには、関与の欠如の背景要因を分析し、PLWHAの運動と将来の会議(どこで開かれるかにかかわりなく)に向けて長期の強力な関与を求めるためのドナー連合の会合が計画されている。
 最後にThe Living with HIV Partnership自体も、ペルーHIV陽性者ネットワークによって獲得された知識と能力を失うことのないよう、体制の強化をはかっている。 IFRCのバーナード・ガードナー氏は「連盟のHIV/エイズ戦略世界会議とHIVワーカーのチームビルディング会議を2006年にリマで開催できるかもしれない。地元のネットワークのこれまでの準備を活用した具体的な動きがすでに現れている。中止によって、彼らの信頼が失われたり、彼らが後退したりするようなことがあってはならない」と語る。 (GNP+)

参考 Background information:
The Living with HIV Partnership  HIV/エイズとともに生きる人たち(HIV陽性者)を力づけるための活動に取り組む組織の新たな連合体。パートナーシップはGNP+、 HIV/エイズと生きる国際女性コミュニティ(ICW)、国際エイズサービス組織評議会(ICASO)、国際赤十字/赤新月連盟(IFRC)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、世界保健機関(WHO)で構成されている。
HIV陽性者世界ネットワーク(GNP+)  HIV陽性者のためのHIV陽性者による世界規模のネットワーク。GNP+の使命は HIV/エイズとともに生きる人の生活の質を改善するために活動することである。GNP+はアドボカシー、キャパシティ・ビルディング、コミュニケーション・プログラムなどを通して、その使命を達成している。これらの活動を引き出す戦略は以下の考え方に基づいている:
ADVOCATING for Inclusion, Visibility, Access, Rights; LINKING by Networking, Mentorship, Dialogue, Education; SHARING of Capacities, Knowledge, Strength, Resources.           (GNP+)

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