エイズ資金需要見通し

   エイズ資金需要見通し
     AIDS funding needs in 2006-2008
 http://www.unaids.org/en/default.asp


1.エグゼクティブ・サマリー               3
2.はじめに                       7
 3.利用できる資金                    9
 4.予防                         13
 5.治療                         16
 6.孤児・弱い立場に置かれた子供             18
 7.基盤整備への投資を含む対策に必要な費用        20
 8.エイズ対策に必要な人材                21
 9.結果の検討                      23
 10.展望                         26
付録1 予防について                   27
 付録2 治療とケアについて                28
 付録3 孤児・弱い立場に置かれた子供への対策       31
 付録4 実施費用について                 32
 付録5 人材について                   34
 付録6 2004年時点の各国の2国間援助の約束、世界基金の貢献、
     および2005年―2007年の資金獲得見通し      35 

 謝辞
  これほど短期間に報告書をまとめた資金需要委員会のすべてのメンバー、とりわけ共同議長の1人であるビクトリアン保健振興財団のロブ・ムーディと資金需要作業部会に対し、国連事務総長は感謝の意を表す。またフューチャーグループ・インターナショナル、国立メキシコ公衆衛生研究所、ユニセフ、WHOには、エイズ対策の新たな資金需要推計に必要なさまざまな分野の資料を提供していただいたことに感謝したい。利用可能な資金の章ではカイザー・ファミリー・ファンデーションとUNAIDSの資金追跡コンソーシアムから重要なデータを提供していただいた。最後にわれわれはロイヤル熱帯研究所のフィル・コンパノールがデータ分析および重要な部分の執筆に主導的な役割を果たしたことに特に感謝したい。こうした協力を得てはいるが、この分析に関する責任はすべてUNAIDSが負うものである。

1.エグゼクティブ・サマリー
  2005年3月のハイレベル会合「地球規模のエイズ対策:資金を有効に ― 3つの統一の実現」から4カ月の間に、エイズ対策の資金需要見通しはより正確かつ詳細なものになった。修正は新たに得られた情報と最近つくられた資金需要委員会および資金需要技術作業部会(注1)からの貴重な報告に基づいている。UNAIDSはこうした専門家からの支援を高く評価しているが、推計のプロセスには本質的な限界がある。現時点では世界のエイズ対策の資金需要に関する最良の推計ではあるものの、国際的なエイズ資金に関するさらなる検討のたたき台となるものであることを踏まえ、報告書の内容についてはUNAIDSが責任を負うものと考えている。ここで分析されているサービス提供のレベルは合意されたターゲットというわけではなく、資金供給が可能なら達成が期待されるものとしてとらえるべきである(注2)。

  修正された推計によると、必要な資金の総額は、予防、治療とケア、孤児や弱い立場の子供たち(OVC:注3)への支援、管理運営・人件費を含め、2006年に150億ドル、2007年に180億ドル、2008年に220億ドルである。人件費および管理運営経費は暫定的に計上したものであり、今後のより詳細な推計が必要である(注4)。

  表1.エイズ資金需要(略: http://www.unaids.org/en/default.asp の「AIDS funding needs in 2006-2008」をご覧ください)

  ここでの資金需要見通しは2006-2008年に限定されているが、推計は包括的な予防対策、孤児や弱い立場の子供(OVC)への支援、2010年までに治療のユニバーサルアクセスにできるだけ近づけるための世界規模の努力など、より長期的な対策拡大を見通して行なっている。これまでのエイズ対策資金需要予測においても、現在のスタッフのトレーニングや新たなスタッフの採用などによる保健・社会保障分野における各国の能力向上のための投資はある程度、見込まれていたが、今回はそれがさらに詳細になされている。必要な社会基盤の確立のための資金投資を推計に組み込んだのは今回が初めてである。このエイズ資金見通しはミレニアム開発目標(MDGs)の達成に必要とされる資金というより広い観点からとらえることも重要である。

  資金に関しては2004年のすべてのエイズ活動に対し、61億ドルが確保されたと推計されている。2005、2006、2007年については、これまでの傾向とすでになされている誓約に基づけば、それぞれ83億ドル、89億ドル、100億ドルが確保される見通しであると推測されている。必要額と確保見込み額の間には2005-2007の3年間で180億ドルのギャップがある。しかも、この金額にしても過小な見積もりである可能性が高い。

 2006-2008年の資金需要は以下の成果を踏まえて推計された。
  ・現在の予防サービスのカバー範囲や介入等の最新の普及率から判断して、エイズの流行の拡大に歯止めをかけるような包括的な予防対策を2010年までに整えることは可能だし、現実的でもある。そのためには、対策の規模拡大を可能にする能力強化(人件費、管理運営費)をエイズ資金需要見通しの中に組み込む必要がある。予防介入にはバルナラブルグループのリスク行動を減らす、乳幼児の感染を減らす、保健医療施設の安全性を高めるといったことが含まれる。効果を最大限に高めるには、低陽性率期、特定層における集中的流行期、社会全体への流行拡大期という流行の3段階によって異なる予防対策のカバー率を想定していく必要がある。
  
・治療とケアに関しては、2004年レベルのカバーの増加率を維持することで、2008年までに抗レトロウイルス治療(ART)を最も緊急に必要としている人(注5)の75%(2006年時点末の300万人を2008年に660万人に拡大)に提供する。2010年にはカバー率を80%に延ばすことが可能である。すでに治療のユニバーサルアクセスが実現している国(先進国および中所得国の一部)でも抗レトロウイルスを受けられる人は80%に達していないことを考えると、これは世界全体でユニバーサルアクセスがほぼ実現に近づいた状態を意味している。「3バイ5」計画と同様に、対象を広げて2年以内に死亡のおそれのある発症者とすれば、達成可能なカバー率は2008年に63%、2010年に68%となる。

  ・孤児および弱い立場の子供に対する支援は現在、ごく一部にしか提供できていないが、2010年には完全なカバー(注6)を実現する。この中にはサハラ以南のアフリカで支援を必要としている子供のすべてと他の地域の低・中所得国のエイズ遺児が含まれる。

  ・サービスを拡大するには人材育成のための大きな投資が必要である。したがって、資金需要予測には低所得国および南アフリカ、ボツワナにおける医学生、看護師養成費用が含まれる。2009年には看護師、2012年には医師がそのための研修を卒業して働けるようになるだろう。看護師、医師への給与は保健分野への人材確保の手段としてとらえる必要がある。コミュニティ・ヘルスワーカーの人材確保も同様である。必要な人材の確保に関する予測の充実、改善は将来にわたって進めていかなければならない。その中には保健医療従事者、とりわけ看護師、医療事務職、検査技師などの増員に必要なコスト分析を含むべきである。

  ・プログラムの管理運営費用も推計には含まれている。それは保健医療提供の現場以外の管理レベルで必要な費用と規定されている。プログラム管理運営費用はエイズプログラムの管理、モニタリングと評価(M&E)、アドボカシー、検査設備やテレコミュニケーション設備の購入による施設整備費などが含まれている。保健センターの建設、整備のための投資に関しては、2006年から2008年までの投資計画に基づき、2010年までに2700カ所以上の新しい保健センターが利用できるようになる見通しである。また、保健センター1万9000カ所と800病院が治療とケアの拡大に対応できるよう充実がはかられる。この数字は実際に新設されるセンターや整備拡充される既存センターがこれだけあるということではなく、エイズの治療とケアの需要予測に合わせれば、これだけ必要になるという数字であるということは注意しておく必要がある。

  将来は不確実であり、いま利用可能なデータは限られている。このため推計には限界があることは認識しておかなければならない。たとえば、資金見通しは資金拠出者、政府、さまざまな関係者(企業、家庭、個人)の将来の行動やカバー対象の拡大が単価に及ぼす影響などを一定の仮定の下に計算している。さらに不十分なデータを補うための仮説や一般化した数字を用いて推計を行なっている部分もある。専門家によって認められたものであっても、そうした数字の不確定性は否定できない。このため、プログラムの実行者との連携を密にし、それぞれのコストや対象となる人数と活動などを算定するための追加データが常に利用できるような体制を整え、継続的に推計の見直しを行う必要がある。

  最新のデータを得るために大きな努力をはらっていることから、UNAIDSは現在の資金推計が2006年にもまだ有効であろうと確信している。しかし、常によりよい推計を行なうために以下のことを提案する。
  ・UNAIDS世界資金追跡コンソーシアム、UNAIDS経済レファレンスグループ、UNAIDS推計レファレンスグループなどすでにある調査グループを活用し、長期にわたる体系的かつ包括的な推計の方法を確立する。 
  ・運営委員会と技術的な作業部会からなる新たな仕組みを作る。運営委員会は各国および国連システム、国連機関とデータの交換を進める。作業部会は新たなデータの解釈、モデル化のための新たな方法、包括的な介入パッケージの相乗効果などに焦点を当てる。
  ・上述のグループを拡大し、エイズ資金需要推計の作業に途上国代表の参加を増やすとともに複数の専門家機関を置く。
  ・すべての病気に対してサービスの拡大がはかれるようWHOやその他のパートナーと協力し、保健分野全体の強化に必要となる資金推計、および疾病別の推計などとの関係付けも重視する。
  ・国内資金需要に関する情報の収集、交換と資金確保能力の強化を目指し、各国の専門家を集めた地域レベルのワークショップを開催する。
  ・現在あるツールをもとに各国がそれぞれの資金需要推計を行なえるよう新たな方法を開発する。
  ・利用可能な資金に関する報告を毎年、公表するとともに、2010年までの資金需要見通しについては2年に1回、改訂版をまとめ公表する。
  ・資金に関する拠出約束と支払い実績についてドナーからの報告がより詳細かつ正確になるよう改善の努力を続ける。

(注1)これらのアドバイザリーグループは3月9日の会合を受けて作られ、資金拠出国および途上国の国際エコノミスト、エイズ専門家、市民社会代表、国連機関その他の国際機関の代表らがメンバーに入っている。
(注2)この分析で示されたカバーの水準は合意された目標というわけではなく、資金が効果的に活用されれば結果として期待されるものとしてとらなければならない。さらに資金拠出者、各国政府、その他の公的および民間エイズプログラムによって決定される資金配分は、必ずしもここで示されるような世界全体の数字に基づくものではないことも強調しておく必要がある。
(注3)孤児および弱い立場の子供に対する支援には、教育、保健医療ケアに関する援助、家族や家庭に対する援助、コミュニティへの援助、管理運営経費などが含まれる。
(注4)予防、治療とケア、OVCサポートの費用はすべての低・中所得国で必要なものだが、人材確保に必要な費用はいまのところ低所得国および南アフリカ、ボツワナに限定されている点に留意してほしい。この点は2006年3月の世界保健報告で修整されることになるだろう。
(注5)「最も緊急に治療を必要としている人」は、治療を受けなければ1年以内に死ぬと考えられている人と定義する。
(注6)「完全なカバー」とはサハラ以南のアフリカで両親を失った孤児、貧困ライン以下の生活で父親か母親のいずれかを間もなく失う子供の全員と片親を失った子供の半数である。

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