エイズ&ソサエティ研究会議第83回フォーラム報告

エイズ&ソサエティ研究会議第83回フォーラム報告
 「働くポジティブ ~ 企業、職場からメッセージを伝える」
《エイズと表現》シリーズ第3弾

 エイズ&ソサエティ研究会議の第83回フォーラム「働くポジティブ~企業、職場からメッセージを伝える」が10月22日(土)の午後1時から、東京都文京区本駒込の都立駒込病院会議室で開かれ、約50人が参加した。午後4時過ぎまで約3時間に及ぶフォーラムは、途中に休憩をはさみ、第1部「メッセージを作る」、第2部「メッセージを受ける」の二部構成で行われた。
第1部では、NGO-労働組合国際協働フォーラムの見里朝士さん(国際食品労連日本加盟労組連絡協議会 IUF-JCC)が、日本HIV陽性者ネットワークJaNP+の協力を得て作成した啓発パンフレットの紹介、およびパンフレット作成の経験を踏まえた今後の職場のエイズ対策の展望を中心に報告を行った。
 NGO-労働組合国際協働フォーラムは、NGOと労働組合が共通して抱える課題に取り組むため、2003年5月から始まった学習会を経て、翌2004年9月1日に発足した。貧困削減、人権擁護、平和構築、環境保全などの国連ミレニアム開発目標(MDGs)を達成するためのセクターを超えた協力を目指しており、HIV/エイズ対策もその中で重点課題として位置づけられている。
 見里さんによると、啓発パンフレットの作成は、HIV/エイズ分野の最初の活動であり、職場における啓発活動のツールを作ることを目的にして土曜日の午後、JaNP+のメンバーらを講師に招いてワークショップを開催した。パンフレットの作成過程そのものをHIV/エイズに関する理解を深めるための機会として重視し、12人の労組関係者が参加したワークショップは8時間に及んだという。
 また、実際に作成されたパンフレットにワークショップの参加者がモデルとして登場するための写真撮影会も行った。
 国際協働フォーラムではさらに、今年7月に神戸で開かれた第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議のコミュニティフォーラムにも参加し、今後の職場における啓発活動のための基礎作りが進められてきた。
 完成したパンフレット『働くHIVポジティブ 職場とHIV/エイズ』はワークショップの成果を生かし、HIV/エイズの流行に関する基本的な情報に加えて、「職場では話せないHIV陽性者たちの声」「世界のHIV陽性者からのメッセージ」なども紹介されている。表紙に登場する傘を持った9人の後姿は写真撮影会の成果であり、裏表紙の「HIVはだれにでも降る雨の一粒」もワークショップの中で生まれたキャッチコピーだという。
 補足コメントを行ったJaNP+代表の長谷川博史さんは、パンフレットのコンセプトはリアリティであるとして、「知識では行動は起きない」「リアリティを持つことが予防、啓発、支援のいずれにも必要」などと指摘した。

 第2部はサンスター広報室の鈴木久美子氏、吉田智子氏が企業として第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議(神戸会議)に参加した経験をもとに報告を行った。
 HIV/エイズに関する国内の社会的な関心が低下したままの状態が続いていることもあって、日本の企業もHIV/エイズ対策に関してはどちらかというと受身の対応が目立ち、積極的な対応は一部の外資系企業以外にはほとんど見られないのが現状である。
 そうした中でサンスターは神戸会議に企業ブースを出展し、鈴木氏や吉田氏ら企業広報のエキスパートがボランティアとして会議のメディアセンターの運営にも携わるなど際立った存在感を示した。
 この点について鈴木氏は、オーラルケアなどの分野で企業として社会貢献、地域貢献の蓄積があったことを指摘したうえで、学生時代からHIV/エイズ分野のNPO活動などの経験のある若手社員としての吉田氏の存在が大きかったことを強調した。
 また、神戸会議では、「外部の人と商売抜きで話ができる」「企業と社会とをつなぐ」といった性格を持っている広報という分野の専門性を生かした人的な貢献の舞台が用意されていたことも企業として参加しやすい条件になったという。
 一方、吉田氏はエイズ会議への参加については社内でも「企業にとってネガティブに働くのではないか」という慎重論があったが、「手を上げた人にはやらせてみよう」という企業風土に支えられ実現したこと、その結果、企業として支援していく機運が生まれてきているように感じられることなどを報告した。
 吉田氏の報告については、会場から、英語で言う「メイク・ア・ディファレンス(違いを作る、目覚しい成果をあげる)」であり、一人の社員の存在が企業を通じて社会的に大きなインパクトをもたらしうることを示しているとのコメントがあった。
また、環境分野などで社会貢献に対する企業の認識が深まる中で、HIV/エイズ分野における企業の貢献意欲がいまなお低下したままであることに関連して、企業の貢献を単に金銭的な支援としてのみ求めるのではなく、貢献の選択肢を広げ、企業が関与しやすい条件をつくることが必要だといった意見も聞かれた。
 一方で、企業の社会貢献(CSR)の議論の中で、「企業が出せるものは寄付ではない」といったことが過度に強調されることは、企業からNGOに提供される資金が減少する傾向がある現状では危険であるとの指摘もあった。
 
 今回のフォーラムでは、休憩時間が終わり、第2部が始まる前に、今後の行事予定などの告知希望者には1人1分弱の短いアナウンスメントの時間を設けた。情報を広げるためには小さな努力の積み重ねが必要であることはフォーラムの中でも指摘されており、いわばその実践編のかたちにもなった。今後のフォーラムでも定着させていきたい。

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