結核予防法廃止?

(解説) 厚生労働省は結核予防法を廃止し、感染症法に統合することを検討しています。アフリカやアジアでは結核とHIVの重複感染が非常に大きな対策課題となっているだけに、エイズ対策の観点からも気になる動きです。参考までに2005年10月23日付け産経新聞の主張(社説)「結核予防法 廃止論は唐突すぎないか」を紹介します。

 結核予防法  廃止論は唐突すぎないか(2005年10月23日産経新聞朝刊)

 厚生労働省が結核予防法を廃止して感染症法に統合する方針を示した。バイオテロ対策の観点から感染症法の改正案を検討していることの副産物であるが、唐突な提案に結核対策の現場で反発と戸惑いの声が上がっている。
 過去の病気と思われがちだが、結核はいまも毎年三万人程度の新規患者が報告され、死者も年間二千人を超えている。結核予防法は昭和二十六年に施行され、戦後の結核対策に貢献してきたが、それでも現状は制圧されたとは到底いえない状態だ。
 世界保健機関(WHO)によると、日本の結核罹患(りかん)率は人口十万人あたり二十五人と先進国で最も高く、今年四月には新たな対策のための改正結核予防法が施行されたばかりだった。
 厚労省によると、統合案はテロに使われるおそれのある病原体の管理規制を可能にする感染症法の改正案を検討する中で浮上した。研究機関などでの管理規制を強化すべき病原体の中に、治療薬の効かない薬剤耐性結核菌が含まれる見通しだからだ。
 感染症法は平成十一年に伝染病予防法、性病予防法、エイズ予防法の三法が廃止、統合された法律で、結核予防法だけが時期尚早として統合されなかった。厚労省は今回、単一の病気の予防法を残すことは患者に対する人権侵害を招く恐れがあること、統合を機に結核対策を一段と充実させることなども理由に挙げ、廃止の方針を厚生科学審議会の感染症分科会に示した。
 しかし、感染症対策や結核医療の専門家からは「現場の実情を無視している」と、反発が相次いだ。テロ対策を理由にした提案の仕方にも「あまりに唐突だ」と戸惑いを見せており、ほぼ全委員が反対を表明した。
 四月の改正予防法施行を機に、厚労省はそれまで事実上、容認していた単身者に対する公費での治療を認めない方針を出した。条文を正確に解釈した結果だそうだが、治療費を払えない外国人患者やホームレスの患者が無料で治療を受ける機会がなくなり、予防対策の面からも混乱が生まれている。
 結核のような慢性感染症は治療の提供が最大の予防対策にもなる。統合案を頭から否定する必要はないが、少なくとも政策の意思決定には、治療の現実を反映させるべきだろう。

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