中国におけるHIV/エイズ予防・治療・ケアに関する合同評価(2004) 要約

 (解説)中国政府と国連機関が合同でまとめた中国のHIV/エイズに関する合同評価報告書の2004年アップデート版。2004年12月1日(世界エイズデー)に発表された。
 中国でHIV/エイズ対策に取り組む国連機関の現地横断組織「HIV/エイズに関する国連テーマグループ」(UNTG)は2002年6月に「中国のタイタニック危機」と題する報告書をまとめた。しかし、この報告書は中国保健当局の反発を受け、短時日のうちに国連関係機関のウエブサイトから姿を消すことになった。その代替レポートが2003年12月1日発表の合同評価報告書であり、さらにそのアップデート版がこの報告である。今回は要約を翻訳。中国の機関名や地名やなど日本語訳の誤りがあればご指摘ください。できるけ手直しします。




 中国におけるHIV/エイズ予防・治療・ケアに関する合同評価(2004)

 中国国家協議会エイズ対策委員会事務局と中国のHIV/エイズに関する国連テーマグループ(UNTG)が協力して作成

 UNTGはUNAIDSの10のコスポンサーを代表
  国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
  国連児童基金(ユニセフ)
  世界食糧計画(WFP)
  国連開発計画(UNDP)
  国連人口基金(UNFPA)
  国連薬物犯罪事務所(UNODC)
  国際労働機関(ILO)
  国連教育科学文化機関(ユネスコ)
  世界保健機関(WHO)
  世界銀行(WB)
2004年12月1日


   目次

エグゼクティブ・サマリー
 1.中国のHIV/エイズ概要
  2.中国のHIV/エイズ対策の成果
  3.課題と提言

第1章 中国のHIV/エイズの状況
  1.1 流行の特長
  1.2 サブグループ内での流行
  1.3 HIV/エイズ推計

 第2章 HIV/エイズ予防・治療・ケアの成果
  2.1 リーダーシップの強化と責任の明確化
  2.2 サーベイランスと情報システムの強化
  2.3 包括的HIV/エイズ予防対策
  2.4 治療、ケア、サポートの提供
  2.5 HIV/エイズに関する投資と国際協力の強化

 第3章 課題と提言
3.1 リーダーシップの強化と責任の明確化
  3.2 サーベイランスと情報システムの強化
  3.3 包括的HIV/エイズ予防対策
  3.4 治療、ケア、サポートの提供
  3.5 HIV/エイズに関する投資と国際協力の強化


  略語
 AIDS   後天性免疫不全症候群
 ART   抗レトロウイルス治療
 ARV 抗レトロウイルス薬
 CARES 包括的エイズ対策
 CCM 国別調整メカニズム
 CDC   (中国)疾病対策センター
 CHAIN  中国HIV/エイズ情報ネットワーク 
 CUP コンドーム使用プログラム
 DFID 国際開発局(英国)
 ETG HIV/エイズに関する国連拡大テーマグループ
 GFATM 世界エイズ・結核・マラリア対策基金
 HIV ヒト免疫不全ウイルス
 IDU 薬物注射
 IDUs 薬物注射使用者
 IEC 情報、教育、コミュニケーション
 JAR 合同評価報告書
 M&E モニタリングと評価
 MMT メタドン療法
 MSM 男性とセックスをする男性
 MTCT 母子感染
 NCAIDS 国立エイズ/性感染症予防対策センター
 NGO 非政府組織
 NPC 人民議会
 OI 日和見感染
 PLWHA  HIV陽性者
 STD 性感染症
 STI 性感染症
 SCAWCO 国家協議会エイズ対策委員会事務所
 TB  結核
 UNAIDS 国連合同エイズ計画
 VCT 自発的なカウンセリングと検査
 WAD 世界エイズデー
 WHO 世界保健機関



エグゼクティブ・サマリー
 2003年12月1日、中国保健省とHIV/エイズ国連テーマグループは合同で中国におけるHIV/エイズ予防・治療・ケア評価報告書を公表した。以後の急速な変化を考え、国家協議会エイズ対策委員会事務局と国連システムは2004年12月1日までの間の合同評価報告最新版を作成することになった。

1. 中国におけるHIV/エイズの流行の概要
全体としては中国のHIV陽性率は低い状態にとどまっているが、地域および特定の人口層によっては高い陽性率を示す集団が存在している。2003年末までのHIV感染者数は累積で84万人であり、全体の陽性率は0.07%である。2004年9月末までのHIV陽性者報告数は累計で8万9087人であり、2002年以降、感染報告は大きく増加している。このことは流行の拡大を示すと同時に、河南省における売血の血液提供者、および雲南省の薬物使用者に対し、HIVスクリーニング検査を厳格に実施したことの反映でもある。

    雲南、ジンジャン、河南各省のいくつかの地域には、HIV陽性率が極めて高い小集団(サブグループ)がある。HIV症例報告はHIV/エイズの流行が社会全般に広がりつつあることを示している。ここ数年、HIVの性感染が増加し、女性のHIV感染例がかなり増えていることを明らかにする新たな報告も相次いでいる。

    これまでに確認されているパターンとトレンドに基づけば、流行はさらに今後数年間、急速な拡大を続けるかもしれない。逆に沈静化しはじめる可能性もある。それは、国全体で予防、治療、ケアのプログラムをどこまで拡充し、効果をあげることができるかにかかっている。

 2.中国におけるHIV/エイズ封じ込めの成果
    この一年、中国のHIV/エイズ対策は、国のリーダーシップを示し、HIV/エイズと闘う人たちへの支援を視野に入れた対策の枠組みをつくり、流行の主要因に対する理解を広げ、治療・ケア・支援を提供するといった面でとくに、相当な成果をあげている。大きなステップとなったのは2004年2月に新たに国家協議会エイズ対策委員会を発足させ、国家協議会記録ナンバー7(2004年3月)をまとめたことである。この文書は中国のHIV/エイズ対策の包括的な政策の枠組みを設定するものだった。こうした動きとともに、中国政府の指導者たちは、HIV陽性者と握手をしたり、エイズの流行で大きな打撃を受けているコミュニティを訪れたりといった具体的な行動によって、HIV/エイズの危機に積極的に取り組む姿勢を示していった。

    中国エイズ対策中長期計画(1998-2010)とHIV/エイズ対策5カ年計画(2001-2005)の中間評価も大きな成果を収めている。全体の計画進捗状況に関し、事実に基づく評価が行われているのだ。国の拠点サーベイランス地点が増え、HIV/エイズの全国的な疫学調査が実施され、行動学的なサーベイランスもさらに強化された。

    より包括的なHIV/エイズの予防介入に向けた努力も続けられている。情報・教育・コミュニケーションに関しては、ポスター、対面コミュニケーション、その他のHIV/エイズの感染と予防についての理解を高める手段を用いた密度の濃いキャンペーンが複数の省庁の多くの部局を巻き込み、展開されている。2004年7月には、リスクの高い行動をとる人口層でコンドーム100%使用を促すために6つの省庁による全国コンドーム促進戦略が発表された。薬物注射使用者の感染予防対策に関しては、メタドン治療や注射針交換プログラムも導入するなど戦略が劇的に変化している。また、いくつかの省で男性とセックスをする男性に対する様々な予防介入も行われている。若年男性労働者を中心にした中国の巨大な移住人口層でリスクの高い行動を減らすための様々な対策も試みられている。さらに血液供給の安全確保の面でもさらなる改善策がとられている。自発的な献血の割合は、1988年には22%だったのが、2004年6月には医療用に使用される血液の88%を占めるようになっている。

    治療、ケア、サポート分野におけるこの一年の最も大きな対策は、地方および都市貧困層の患者に対する無料の抗レトロウイルス治療(ART)の開始と中国CARESプロジェクトの拡大だろう。ARTの無料提供のためのガイドラインがまとめられ、ARTを提供できる医療保健施設が急速に増加したことから、1万人の患者にARTが提供されるようになった。2004年9月から国の健康保険で11種類の抗レトロウイルス薬がカバーされている。自発的なカウンセリングと検査サービスを提供するセンターは急速に増えている。エイズのために遺児になった子供たちの苦境が認識され、ケアと支援を提供する新たな政策がとられている。

    国のHIV/エイズ対策のための予算配分は拡大を続けている。2003年の中央政府によるHIV/エイズ対策への投資額は3億9000万元だった。2004年の中央政府のHIV/エイズ予算は8億1000万元で、前年の倍以上になっている。国際援助資金も2003年の2億5600万元から、2004年は4億2100万元に増えた。第2章では国のHIV/エイズ予算の配分と傾向に関する詳細な分析が初めて示されている。

    国際協力をより効果的にする努力はHIV/エイズに関する国連拡大テーマグループの全体的な調整のもとで続けられている。世界エイズ・結核・マラリア対策基金によるHIV/エイズ資金は2004年9月から支給が始まり、中国中部の河南省、およびその周辺6省における対策の拡大を支えている。

 3.課題と提言
    2004年の1年間で中国政府のエイズ政策の枠組みはかなり充実していったものの、その政策をどうすれば地方レベルで効果的に実施できるかという基本的な課題は未解決のままである。第3章では国の対策に関する以下の5つの戦略分野について主要な課題と提言を示している。(1)リーダーシップの強化と責任の明確化、(2)サーベイランスと情報システムの強化、(3)包括的HIV/エイズ予防対策、(4)治療、ケア、支援の提供、(5)投資および国際協力の強化-の5分野である。分野を超えた(ⅰ)情報の把握と提供、(ⅱ)重要なプログラムを各分野のそれぞれのレベルで効果的に実施する能力の確保、(ⅲ)すべての対策を対象にしたモニタリング・評価機能の強化-の3テーマも重視されている。

  主な提言
   ・HIV/エイズの流行に対する関心を高め、それぞれのレベルにおける責任を明確化し、モニタリングと評価をきちんと行い、HIV/エイズの予防、治療、ケア対策を充実させる。
   ・政策と法律の枠組みの整備、コミュニティに基盤を置いた組織の能力の強化、NGO参加の促進など、NGOの活動を活かせるよう環境の改善を進める。
   ・情報の把握と活用に力を入れ、分析力を高め、サーベイランスのデータを活かし、HIV/エイズの流行がもたらす社会経済的影響に関する研究をさらに進める。
   ・社会的な支援がより提供しやすい社会環境を生み出すために、HIV/エイズ予防対策に力を入れ、情報・教育・コミュニケーションのガイドラインを整備し、差別防止のための政策に積極的に取り組む。コンドーム普及、メタドン治療、注射針交換のプログラムを拡大し、男性とセックスをする男性を対象にした予防介入モデルをさぐる。
・保健システム内でのコミュニケーションとコーディネーションを強化するためのより効果的なメカニズムを導入し、治療とケアを充実させるために現場レベルでの医療保健の仕組みの改善を進め、治療の質的な向上と量的な拡大をはかる。
   ・資金投資を増やし、費用対効果を高め、中国の国家HIV/エイズ対策大綱の一翼を担えるよう国際協力を強化する。




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