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zoom RSS 国連ハイレベル会合に関するUNAIDSパンフレットに強い批判

<<   作成日時 : 2016/03/11 23:52   >>

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(解説) 世界のエイズ・サービス組織のネットワークであICASO(国際エイズ・サービス組織評議会: International Council of AIDS Service Organizations)の公式サイトに3月4日付で、国連合同エイズ計画(UNAIDS)のミシェル・シディベ事務局長宛の書簡が掲載されています。その日本語仮訳です。
 http://www.icaso.org/?file=24048

 UNAIDSは、6月の「エイズ終結に関する国連総会ハイレベル会合」に向けて2月にパンフレットを公表しています。書簡はこのパンフレットに見られるような最近のUNAIDSの主張について《エイズの将来展望に関して「流行終結」や「ゼロの実現」「高速対応」といったものを強調し、「お祝いムード」のトーンが強い》ということで批判的です。
《文書に書かれていることを読めば、各国の元首はHLM(ハイレベル会合)に出席しなくてもいいだろうと思い、代理の出席者にも重要なことは約束させず、私たちのことを考えもしなくなるのではないか。私たちはそうなってしまうことを恐れています》

かなり手厳しいですね。ICASOだけでなく、HIV/エイズ分野ではかなり著名な国際NGOや各国の国内NGOなども賛同の署名をしています。実は批判の対象となっているパンフレットについては、日本語仮訳を2月7日のHATプロジェクトのブログ、およびビギナーズ鎌倉のブログに掲載してあります。
HATプロジェクト http://asajp.at.webry.info/201602/article_2.html
ギナーズ鎌倉 http://miyatak.hatenablog.com/entry/2016/02/07/143035

 こりゃ大変ということで、それぞれのブログからUNAIDSサイトの英文パンフレットにアクセスしてみましたが、すでに原文のページは「Sorry, page not found」になっていました。詳しい事情は分かりませんが、いったん取り下げてしまったのかもしれませんね。経緯をご存じの方がいらしたらお教えいただければ幸いです。
 以下、書簡の日本語仮訳です。

    ◇

国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長、ミシェル・シディベ氏への手紙
 2016年3月4日
http://icaso.org/?file=24048


親愛なるミシェル

 世界的なエイズとの闘いに示されたUNAIDSにおけるあなたの指導力は目覚ましく、とりわけ弱い立場の集団やキーポピュレーションのために勇気をもって進めてこられた人権重視のHIV戦略、HIV資金の有効活用、HIV治療がもたらす利益への理解促進などの活動は素晴らしいものです。

 しかし、過去1年のUNAIDSによる政策擁護活動は、エイズの将来展望に関して「流行終結」や「ゼロの実現」「高速対応」といったものを強調し、「お祝いムード」のトーンが強まってきました。希望を打ち出したいという意図は理解できるものの、こうした構造のキャンペーンをメディアが報道し、それが会話の中で要約して引用されるようになると、すでに私たちはエイズ流行終結の一歩手前まで来ているような印象を与えてしまいます。保健サービスの効率的な配置の観点からすれば、もう優先課題から外してもいいのではないかといった見方さえされかねないのです。さらにこのような極端に単純化したキャンペーン・スローガンを繰り返していると、HIV陽性者にとっていま、現実に必要なものさえも近い将来、容赦なく切り捨てられてしまう危険があります。

 UNAIDSのキャンペーンによるこうした影響が拡大することを私たちは懸念しています。HIVの流行に深刻な打撃を受けている国の指導者たちが関心を失い、ただでさえ不足しがちな二国間および地球規模の支援のネットワークもさらに縮小してしまう恐れがあるからです。その一例がつい先日、ハイレベル会合に向けて発表されたUNAIDSの文書ではないでしょうか。

『世界のデータの分析によると、HIVへの投資を前倒しし、効果的な活動に結びつけることができる機会は今後5年間という短い期間に限定されている。コミュニティ、都市、国家レベルでの強いリーダーシップが求められているのだ。今後5年間に高速アプローチを採用することは、より急速に格差を埋め、取り残されている人びとを救うことにつながる。投資の有効活用により、年間のHIV資金需要は2020年以降、減少していくことになる。そうすれば世界は2030年までに公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行終結に向けた軌道を確実に進むことができるであろう』

 私たちは暗然としました。根強く続いている東部、南部アフリカの女性・女児のHIVの流行、そして世界各地のゲイ・バイセクシャル男性/男性とセックスをする男性、セックスワーカー、注射薬物使用者、トランスジェンダーの女性の間のHIVの流行に誠実かつしっかりと取り組むという未完の仕事にはまったく言及していません。世界的なHIV関連のターゲットを達成するにはいまなお、巨額の追加的資金が必要です。今後5年間は、最新のエビデンスに基づいてHIVの流行の現状を理解し、現代的かつ大胆な方法で対応していくために力を合わせる必要があります。貧しい言葉で、政治的な婉曲語法で貧しい言葉を使っているようでは、HIVおよびHIVの流行を最も大きく受けているコミュニティの真実が見えにくくなるだけです。最近発表されたUNAIDSの文書は、一層の効率化をはかることで世界のHIVターゲットの達成が可能になり、2020年以降は資金の必要額の減少が期待できることを示唆しています。こんなことでは誰も救えません。東部、南部アフリカの女性、女児のためにも、世界中のゲイ・バイセクシャル男性/男性とセックスをする男性、セックスワーカー、注射薬物使用者、トランスジェンダーの女性のためにもならないのです。

 最近出されたUNAIDS文書のテキストは、必要な資金を確保し、焦点をしぼってそれぞれの地域や集団の実情に合わせながら、エビデンスに配慮し、人権を尊重した対応を進めていこうとしてきたあなたたちの強いリーダーシップにも反しています。文書に書かれていることを読めば、各国の元首はHLM(ハイレベル会合)に出席しなくてもいいだろうと思い、代理の出席者にも重要なことは約束させず、私たちのことを考えもしなくなるのではないか。私たちはそうなってしまうことを恐れています。

 率直に言って、この文書はハイレベル会合に向けて現在、進められている政策提言の努力を妨げるものです。UNAIDSは市民社会と協力してより誠実に協議を行い、長期のHIV資金需要モデル、とりわけHIVの流行に取り組み続けてきたグループの手になるモデル(たとえばUNAIDSランセット委員会のHIV報告書に盛り込まれたモデル)を尊重することで、世界をいい方向に導いていくことが可能になります。

 UNAIDSは、2020年の高速対応目標を達成するには、2020年時点で年間313億ドルが必要だと試算しています。現状と比べると、不足額は年間90億ドルです。2030年までのエイズ流行終結には、多国間、二国間、そして国内の投資を持続的に拡大していかなければなりません。それが優先すべき重要課題なのです。そのためには世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)への資金拠出もきちんと行うべきです。今年開催予定の第5次増資会合は資金拠出者にとって極めて重要な会議であり、少なくとも130億ドルの拠出誓約が必要になります。

 エイズ運動が国連ハイレベル会合、ダーバンの第21回国際エイズ会議、グローバルファンドの増資会合に向けて準備を進めているときに、この文書が発表されました。最悪のタイミングです。

 90-90-90高速対応目標に対し、実現が可能なのかどうか、過度に単純化しすぎていないかといった懸念を抱いてはいる人は多いとはいえ、こうした野心的なターゲットを打ち出し、それを追求していくこと自体の必要性に疑問を差し挟んでいるわけではありません。曲がりなりにもUNAIDSの提案には連帯を表明し、その目標を掲げている人がたくさんいます。ただし、HIV対策の成功に導くこと、そして長期にわたるHIV陽性者の健康と福祉を維持することのためにはいま、何がいま必要なのか。この点について、UNAIDSが過剰なまでに単純化したメッセージを発信し続けているようでは、その支援の気持ちもくじけてしまいます。私たちはこの課題に関するUNAIDSの立場がHIV対策の大きな目標の実現を妨げているように感じています。ただし、UNAIDSがより明確で、エビデンスと人権を重視した戦略を進めていくのなら、喜んでそれを支援したいのです。

 私たちは友人として、そしてUNAIDSの使命の支持者として、現在の文書を撤回すること、そして、エイズ対策を成功に導くにはもっと多くの資金と政治的な指導力がいま、絶望的なまでに求められていることをきちんと呼びかけるものに差し替えることを強く要求します。

 人権を重視し、エビデンスに配慮して、世界的なエイズの流行に対応していくためには、資金をしっかりと確保する必要があります。今回の文書に見られるような有害な発言に対しては、断固とした行動をとらなければ、私たちが力を合わせて実現してきた成果も、無数の人の生命と将来も、危機にさらされてしまうのです。いまなにも行動しないでいれば、ただでさえ約束を果たさずに撤退しようとしかねない各国政府が、今後もエイズ政策を軽視することを許す結果になるだけです。そんなことを見過ごすわけにはいきません。

 深謝と連帯の思いをこめて




Letter to Mr. Michel Sidibé
Executive Director UNAIDS
Geneva, Switzerland


Dear Michel,

Your tenure at UNAIDS has been marked by remarkable leadership in the global fight against AIDS, particularly the courageous way you have promoted rights-based HIV strategies for vulnerable groups and key populations, efficient management of HIV funds, and greater awareness of the benefits of HIV treatment.

Over the past year however, UNAIDS’ advocacy has included a more “congratulatory” tone, with emphasis on “ending” and “getting to zero” and “fast track” when referring to the future of AIDS. While we understand that your intention is to promote hope, the framing of these campaigns – when reported in the press and shorthanded into conversations, imply to the broader world that we are near the end of the epidemic, and that efficiencies in health service delivery will get us there alone. Further, these overly simplified campaign slogans give dangerously short shrift to the ongoing needs of persons living with HIV for the foreseeable future.

We fear that the growing impact of this language by UNAIDS in its campaigns is resulting in apathetic leadership by countries most impacted by HIV and continued shortages in bilateral and global network support. One example of this is the text of the UNAIDS publication just released in the run up to the High Level Meeting:

“Analysis of global data shows that the world has a narrow five-year window of opportunity in which to front-load HIV investments and deliver focused and effective action. Strong leadership from communities, cities and countries will be required. Adopting a Fast-Track approach over the next five years will close the gaps faster and reach the people who are being left behind. By using investments more efficiently, annual HIV resource needs will begin to decline after 2020. From this point the world will be firmly on course to end the AIDS epidemic as a public health threat by 2030.”

We are stunned UNAIDS makes no reference in this document to unfinished business worldwide in meaningfully and respectfully addressing persistent HIV epidemics among women and girls in Eastern and Southern African, and gay, bisexual men/men who have sex with men, sex workers, people who inject drugs, and transgender women worldwide. There is still a critical need for significant additional funding to meet accelerated global HIV-related targets. Our response in the next 5 years will require modern, bold approaches more honestly aligned with up-to-date, evidence-based understandings of today’s HIV epidemic. Poorly worded, political euphemisms invisibilize the truths about HIV and the communities HIV are impacting the most. The recently released UNAIDS publication suggests accelerated global HIV targets can be achieved through further efficiencies alone, and that declining resources after 2020 are to be expected and welcome. This serves no one, least of all, women and girls in Eastern and Southern African, and gay, bisexual men/men who have sex with men, sex workers, people who inject drugs, and transgender women.

Text from the recent UNAIDS publication runs counter to your own strong leadership on the need to fully fund targeted, tailored, evidence-informed, and rights-based responses. We fear that language used in the document will likely deter heads of state from feeling compelled to attend the HLM or to commit to anything significant through their surrogates who may attend, and concerns us greatly.

Plainly put, this document undermines advocacy efforts currently taking place in the lead up to the High Level Meeting. UNAIDS could better serve the needs of the global movement by collaborating and consulting with civil society more carefully and by sharing respected modeling of long term HIV resource needs, particularly for groups that continue bearing the brunt of the HIV epidemic (e.g., those contained in the UNAIDS Lancet Commission on HIV Report).

UNAIDS has calculated that we need US$ 31.3 billion in 2020 to reach the UNAIDS 2020 fast track targets. At current levels, this means a gap of US$ 9 billion globally. Sustaining and scaling up investments from multilateral, bilateral and domestic resources is a critical priority to end AIDS by 2030. This should include a fully funded Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria. This Global Fund Replenishment Conference this year offers a critical opportunity for donors to start mobilizing at least 13 billion for its Fifth Replenishment.

The timing of the release of this document could not have been worse, as the AIDS movement prepares for the High Level Meeting, Durban and the Global Fund Replenishment.

While many haves about the feasibility and over-simplicity of the 90 90 90 Fast Track Goals, there can be no question of the ambition and enthusiasm of these targets. So much so, that most have embraced them, in solidarity with your leadership. But our support is being fractured by UNAIDS’ consistent oversimplification of what needs to be done to ensure the success of the HIV response and support the health and well-being of persons living with HIV in the longer term. We feel UNAIDS positioning on this issue undermines the larger goals of the HIV response. We stand ready to support UNAIDS in developing clear, evidence-driven and human –rights based implementation strategies.

As friends and supporters of the UNAIDS mission, we strongly urge you to withdraw this document and replace it with a more appropriate call for the significantly greater resources and political leadership still desperately needed to ensure the success of the AIDS response.

A rights-based, evidence-informed global AIDS response must be fully funded. Without decisive action to counter this harmful narrative, our collective achievements, countless lives and the future are at risk. Not to do so, would enable governments, who are already backtracking and lacking commitment, to deprioritize AIDS even further. We simply cannot afford to let this happen.

With deepest regards and in solidarity,

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