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zoom RSS TOP-HAT New 第65号(2014年1月)

<<   作成日時 : 2014/02/05 00:52   >>

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        第65号(2014年1月)
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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発メールマガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。
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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部


◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

1 はじめに 「希望を買おうとした男」

2  HIV陽性者による第27回日本エイズ学会参加報告会

3 診療案内を更新 HIV/エイズ診療拠点病院

4 東京都エイズ診療協力病院初診受診案内

◇◆◇◆◇◆

1 はじめに 「希望を買おうとした男」
 米国の映画芸術科学アカデミーが1月16日、第86回アカデミー賞の候補作、候補者を発表しました。宮崎駿監督の『風立ちぬ』が長編アニメ賞にノミネートされたこともあって、日本でもけっこう報道されましたね。受賞作、受賞者の発表と授賞式は3月2日(日本時間3日)です。宮崎監督にとっては03年の『千と千尋の神隠し』以来となる朗報が届くことを期待するとして、ここではHIV/エイズの流行を取り上げたもう一つの話題作を取り上げます。

 日本では2月22日封切り予定の米国映画『ダラス・バイヤーズクラブ』は、作品賞、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞、編集賞、メイク・ヘアスタイリング賞の6部門にノミネートされています。ノミネートに関しては10部門の『ゼログラビティ』『アメリカン・ハッスル』の2作品に及ばなかったものの、本番はまだこれから。マルチ受賞もあるかもしれません。アカデミー賞の前哨戦とも言われるゴールデングローブ賞では、主人公でエイズを発症したカウボーイ、ロン役のマシュー・マコノヒーが主演男優賞、同じくエイズ患者でバイヤーズクラブの相棒となるトランスジェンダーのレイヨン役ジャレッド・レトが助演男優賞を受賞しています。

《1985年、アメリカで最も保守的とされるテキサス州で、HIV陽性により余命30日と宣告された男がいた。男の名前はロン・ウッドルーフ。同性愛者でもないのになぜ!? と怒りを周囲にぶつけるロン》

 映画の公式サイトは、このような書き出しで作品について説明しています。かなり刺激的ですね。「同性愛者でもないのになぜ」という怒りは1985年当時の米国の異性愛中心社会では、すんなりと受け止められてしまう種類の「怒り」でもありました。映画の名誉のために付け加えておけば、ロンの性的少数者に対するまなざしは自らの経験を通して少しずつ変化していきます。その控えめな変化の描写を通じ、観客はおそらく最初の怒りそのものの不当性にも気付いていくのではないでしょうか。

 ただし、映画ではこの点はサイドストーリー的な位置づけで、話の中心になるのはHIV/エイズの有効な治療法がまだ確立されていなかった80年代後半の厳しい現実でしょう。バイヤーズクラブというのは、未承認薬であってもとにかく効きそうなものがあれば試してみたい、密輸でも何でもして手に入れたいという当時の絶望的ニーズに対応し、全米各地に生まれた会員制の薬の供給組織です。主人公ロン・ウッドルーフは実在した人物で、テキサス州ダラスにおけるクラブの創設者でした。

地元の有力紙ダラス・モーニングニュースの公式サイトには昨年11月1日付で《時間を買う:ロン・ウッドルーフ 世界をまたにかけ治療薬―とエイズ患者の希望―を密輸する男》という、おそろしく長文の記事が掲載されています。1992年8月9日のダラス・モーニングニュース紙の日曜版付録の雑誌に掲載された記事の再録ということなので、映画の公開を機に地元で(そしておそらくは全米で)、彼の存在とあの絶望的なまでに死と直面していたエイズの時代がもう一度、注目されることになったのでしょうか。

 記事によると、ロン・ウッドルーフは1986年(映画の設定より1年遅い)にエイズと診断され、同時にHIV感染が判明したガールフレンドとともに「絶望的な時には絶望的な手段を選ぶこともある」とメキシコから未承認薬を密輸し、会員制のクラブ形式で会費を払ったメンバーに配布するビジネスを始めました。米国では最初のエイズ治療薬として1987年にAZTが承認されましたが、当初は用量が多かったこともあって副作用がきつかったうえ、単剤では1年ほどで薬剤耐性ウイルスが出てきて薬が効かなくなることもやがて分かってきます。有効な治療薬が登場するまで生き残れるか、それとも死が先に訪れるか、HIV陽性者にとっては薬の開発と衰えゆく自らの身体が生き残りをかけたタイムレースを続けるような日々でした。

 ロン・ウッドルーフは「リスクを取ることを望むか望まないかという問題ではない。取るしかなかったんだ」とインタビューに答えています。記事はまた、《あと何日か、何週間か生き延びるためにロン・ウッドルーフが密輸した薬を使う》ということには賛否の大きな議論があったことも紹介しています。米国には当時、大きなものだけでも9つのバイヤーズクラブがあり、ダラスはその中でも最も過激で危ない橋を渡るクラブという評判だったようです。新薬の承認を担当する連邦政府の食品医薬品局(FDA)や医学界などとの衝突もしばしばあり、手入れを受けたり、逆にFDAを訴えて裁判を起こしたりもしています。

 ウッドルーフは、致死的な病を抱える患者を食い物にする米連邦政府と巨大製薬会社と医学界の陰謀といった主張も繰り返し行っています。映画は実在の人物を描いているとはいえ、話をドラマティックに盛り上げるための脚色は当然あるでしょうし、架空の人物も登場しています。善玉と悪玉のキャラクターを登場人物に振り分けていくような作劇手法もシナリオを練っていく段階で意識的に採用されていったようで、それが映画のテイストに反映されている面もあります。

したがって、何とか一人でも多くの人を助けたいという使命感から治療研究に取り組んでいた医師の中には余りにも不当に扱われていると心外に思う人もいるかもしれません。最初のエイズ治療承認薬であるAZTに関しても、前提条件を抜きにして毒を処方するかのように描写されていることに憤りを感じる研究者もいるのではないでしょうか。ロン・ウッドルーフ自身、毀誉褒貶の激しい人物だったことはダラス・モーニングニュースの記事からもうかがえます。

ただし、そうしたことも含め、映画は1980年代後半から90年代初めにかけての米国の困難なエイズの時代の雰囲気をよく伝えている印象は受けます。なぜHIVに感染した人たちはあれほど激しい怒りを持ったのか。ニューヨークでは1987年に劇作家ラリー・クレーマーが激越な演説を行い、アクトアップNYが生まれています。「沈黙=死」。それが政治的な抗議活動で状況を変えようとしたアクトアップのスローガンでした。黙っていたら殺されてしまう。ロン・ウッドルーフはその頃、地下ビジネスとして未承認薬の密輸を続けていました。立場は異なりますが、怒りの中身は共通していたように思います。

この30年の間にHIV/エイズとの闘いを通して、米国社会の様々な仕組みが変っていきました。その変化を動かす大きな力の少なくとも一つが(すべてではありません)、こうした怒りであったことは否定できません。

ロン・ウッドルーフは1992年9月に死去しました。今回の映画の脚本家の一人であるクレイグ・ボーテンはその死の直前にカリフォルニアからテキサスまで車を運転してウッドルーフのもとを訪れ、20時間に及ぶインタビューを行っています。そのとき、あなたの話が映画になったらどう思うとボーテンが尋ねると、ウッドルーフは「ぜひ観てみたいね」と答えたそうです。つまり、映画化の話はその時点からスタートしているのですが、紆余曲折を経て、脚本の手直しも重ね、ようやく完成にこぎつけたのは20年後でした。

なぜ20年もかかったのか。1990年代の初めにエイズで死んだ男の物語がどうしていま、これほど話題になるのか。もちろん映画の力が大きいのでしょうが、でも、それだけなのでしょうか。そして、現在の日本では、その映画に触発されてどんな議論が起きるのか、あるいは起きないのか。2月22日の日本国内封切り、そして日本時間3月3日のアカデミー賞発表は秘かに注目しておきたいところです。



2 HIV陽性者による第27回日本エイズ学会参加報告会
 昨年11月に熊本市で開かれた第27回日本エイズ学会学術集会・総会について、HIV陽性者参加支援スカラシップ委員会の支援を受けて参加した人たちの報告会が開かれます。どなたでも参加できます。
日時:2014年2月16日(日)15:00〜17:00
場所:TKPスター貸会議室 お茶の水駅前(東京都千代田区神田駿河台2-1-18)
プログラム:
スカラシップ 実施報告
高久陽介(ジャンププラス/エイズ予防財団)
「学会参加者による報告〜HIV陽性者から見た日本エイズ学会〜」
 スカラシップ受給者(2〜3名予定)
「当事者による学会への参加の意義」
大平勝美(はばたき福祉事業団理事長)

 HIV陽性者参加支援スカラシップは、2006年の第20回日本エイズ学会学術集会・総会開催時に「医療従事者だけでなくHIV陽性当事者にも開かれた学会に」という趣旨で創設。学会参加登録料・宿泊交通費の一部を補助するかたちでHIV陽性者に学会参加の機会を提供しています。

社会福祉法人はばたき福祉事業団、特定非営利活動法人ぷれいす東京、特定非営利活動法人日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス、公益財団法人エイズ予防財団の4団体がHIV陽性者参加支援スカラシップ委員会を構成し、多数の企業、団体、個人からの寄付によりスカラシップ支援を実施しています。詳しくは下記サイトをご覧ください。
http://www.ptokyo.com/scholarship/aboutscholarship.html#reporting



3 診療案内を更新 HIV/エイズ診療拠点病院
 全国のHIV/エイズ診療拠点病院の情報を集めた拠点病院診療案内が最新版に更新されました。HIV感染症の医療体制の整備に関する研究班のサイトでWEB版を見ることができます。
 http://hiv-hospital.jp/

 《厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業「HIV感染症の医療体制の整備に関する研究」班では、HIV感染者患者の紹介、相談等にご利用いただけるよう、平成12年より全国のHIV/エイズ診療拠点病院の診療案内を作成し、関連各機関へ配付しております》
    (WEB版の「拠点病院診療案内とは」より)



4 東京都エイズ診療協力病院初診受診案内
 HIVの陽性告知を受けた人が安心して医療を受けることができるよう東京都エイズ診療協力病院運営協議会(エイズ診療協力病院、公益社団法人東京都医師会、社団法人東京都歯科医師会、東京都福祉保健局で構成)では「エイズ診療協力病院初診受診案内」を作成し、ウエブサイトでも公開しています。
 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/kansen/aids/iryo/annai/index.html

 東京都のエイズ診療協力病院は、都内にある
・ エイズ診療拠点病院(エイズに関する総合的かつ高度な医療を提供する病院)
・ エイズ診療連携病院(エイズ診療拠点病院と連携して、精神科、小児科、歯科等の専門分野における高度な医療を提供する病院)
 の総称です。

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