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zoom RSS TOP-HAT News 第52号(2012年12月)

<<   作成日時 : 2012/12/31 01:32   >>

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        第52号(2012年12月)
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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発メールマガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。
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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部


◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

1 はじめに 「エイズから自由な世代」とは

2 今年もいろいろありました

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1 はじめに 「エイズから自由な世代」とは

世界エイズデーを2日後に控えた11月29日、米国のヒラリー・クリントン国務長官がワシントンDCで演説を行い、AIDS Free Generation(エイズから自由な世代)を実現するための「青写真」を発表しました。

《PEPFAR Blueprint: Creating an AIDS-free Generation》
 http://www.pepfar.gov/documents/organization/201386.pdf

 64ページもあるレポートなのでとても読み切れませんが、ひと言で説明すると《米国政府はどのようにして「エイズから自由な世代」の実現を助けるのかについてのロードマップ(行程表)》ということです。蛇足ながら付け加えると、PEPFARは米国大統領緊急エイズ救援計画。米国の国際保健戦略の重要な柱となっているプログラムですね。

 同じ日にオバマ大統領も声明を発表し、《私たちはこの病との闘いに大きな成果を上げ、エイズから自由な世代の実現も視野に入るようになりました》と述べるとともに、当面の成果に満足することなく、治療の普及などにさらに力を入れていく姿勢を示しました。大統領声明は、コミュニティアクション2012のサイトで日本語仮訳を見ることができます。
 http://www.ca-aids.jp/features/52_obama.html

ところで、AIDS Free Generation(エイズから自由な世代)とは何か。少しおさらいしておきましょう。

 先ほどの「青写真」のファクトシートによると、《エイズから自由な世代》は昨年11月8日、クリントン国務長官が米国のエイズ対策について演説した際に重要な政策目標として初めて登場しました。要約すると、次のような状態の実現を目指しています。

 (1)すべての赤ちゃんがHIVに感染することなく生まれ、
 (2)さまざまな予防手段により10代や成人してからも現在よりはるかに感染のリスクが低く、
 (3)HIVに感染したとしても、自らのエイズ発症と他の人への感染を防ぐことができるよう治療へのアクセスが得られる。

 つまり、HIVに感染している人が一人もいない世界にしようといった無茶苦茶を言っているわけではないようですね。TOP-HAT Newsでもこれまで「エイズのない世代」といった訳を使ってきましたが、「エイズから自由な世代」に変更します。

 ・・・ということで、日本の現状についても考えてみましょう。「エイズから自由な世代」の観点から米国(あるいは途上国)の状況と比較して考えてみると、以下のようなことが言えそうです。

 (1)ほぼ実現
 (2)いまのところ、(時系列でなく、各国との比較で見れば)かなり実現
 (3)自らのHIV感染を知ることができた人に関してはほぼ実現

 大きな流れを見れば、国内の新規HIV感染者・エイズ患者報告は依然、増加の傾向が続いています。その意味では、「ほぼ実現、ああ、よかった」と喜んでいられる状態では決してありませんが、「先進国で唯一、患者も感染者も増え続けている国」みたいな言い方も適切とはいえません。逆に米国をはじめとする諸外国から見れば、日本の現状はうらやましい限りでしょうね。ただし、治療へのアクセスは「自らのHIV感染を知ることができた人に関しては」という前提条件がつきます。

「そうでしょ、だからね・・・」といった調子で、困った人たちが変な結論を引き出すと話がまた、おかしな方向に進んでしまうかもしれませんね。実現したというよりもむしろ、過去四半世紀にわたって数々の失敗がありながらも、何とかかんとかこうした状態を維持してくることができたという方が現実に近いかもしれません。それが可能だったのはどうしてなのか。保健分野における社会基盤が整っていたこと、行政でもなく、医療でもない分野においても、予防と支援の両立を基本に据えた対策を支える希有な人たちが(希有ではあるけれど、しっかりと)存在してきたことが要因としては考えられます。

 そうした条件は日本にいるとけっこう、当たり前に存在しているもののように思えてきますが、国外に出ると、あまり当たり前ではないこともあります。明日はともかくとして何年か先にはどうなのか、最近は日本国内においてさえ少々、心細くなってきます。現状の問題点と近未来の課題にきちんと想像力をはたらかせながら、あまり元気の出ない現実にどう対応していくのか。これもまた、日本社会の中で心ならずも希有な存在であり続けているエイズ対策関係者にとっては、極めて困難かつ重要な使命というべきではないでしょうか。


2 今年もいろいろありました

 HIV/エイズ分野の主な出来事から2012年を振り返ってみましょう。十大ニュースだとか、トップ10だとかというわけではないので、そういえばこんなこともあったなあといった程度に受け止めていただければ幸いです。時節柄といいますか、最後に総選挙関係の1項を加え、全部で11項目をリストアップしました。

・改正エイズ予防指針厚労大臣告示
・世界エイズ・結核・マラリア対策基金10周年
・Living Together Loungeが新宿二丁目開催に幕。後継イベントとして【akta tag tour】スタート
・世界銀行新総裁にジム・ヨン・キム氏
・国内のエイズ患者報告が2年連続過去最多を記録
・2012年世界エイズデー国内啓発キャンペーンのテーマは《“AIDS” GOES ON...〜 エイズは続いている 〜》
・FDAがツルバダを曝露前予防投与薬として承認
・米国の首都ワシントンで第19回国際エイズ会議開催
・ミュージカル『RENT』東京公演
・第26回日本エイズ学会学術集会・総会で名古屋市大の市川誠一教授にアルトマーク賞、戦略研究に高い評価
《追加》
・総選挙でも見事なまでに注目されなかったエイズ政策、各党の姿勢は?

 以下、補足説明です。

・改正エイズ予防指針厚労大臣告示
 東日本大震災をはさみ、ほぼ1年がかりで見直し作業が進められた改正エイズ予防指針が1月19日、厚生労働大臣告示されました。感染症法のもとで今後ほぼ5年間のわが国のエイズ政策の方向性を示す指針で、全9章のすべてに行政、研究者、NGO/NPOの連携の必要性が強調されている点が注目されます。
見直し作業の中心となったエイズ予防指針作業班の班長で、公益財団法人エイズ予防財団の木村哲理事長は8月28日、東京・内幸町の日本記者クラブで会見を行い、連携のプラットフォーム創設に意欲を示しています。また、7月15日には、書籍『新エイズ予防指針と私たち』(エイズ予防財団編)が刊行されました。


・世界エイズ・結核・マラリア対策基金10周年
九州沖縄サミットにおける議長国・日本の提案が創設のきっかけとなった世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)が創立10周年を迎えました。世界基金支援日本委員会のサイトには世界基金10周年ページが開設され、さまざまな関係者の証言やショートフィルムなどが紹介されています。
http://www.jcie.or.jp/fgfj/10th/

 10周年は世界基金にとって組織改革の観点からも節目の年となり、3月にミシェル・カザツキン事務局長が辞任。世界基金理事会は公募を経て11月15日、マーク・ダイブル氏(元米地球規模エイズ調整官)を新事務局長に選任しました。
 2004年の世界基金支援日本委員会設立以来、委員会を主導してこられた山本正ディレクター(日本国際交流センター理事長)が4月15日、逝去されました。山本さんの多大な貢献に感謝するとともにご冥福をお祈りします。


・Living Together Loungeが幕。後継イベントとして【akta tag tour】がスタート
 「HIVに感染している人といっしょに生きよう!・・・というんじゃなくって、もうぼくらすでにいっしょに生きてるんじゃないの?」というコンセプトのもとで、2004年9月から続いていたLiving Together Loungeが4月1日のvol.88で新宿二丁目開催としては最終回を迎えました。日曜日の夕暮れ、HIV陽性者の手記のリーディングや音楽でGood Timeを過ごすというイベント。新宿二丁目では後継企画として8月から【akta tag tour】が始まっています。


・世界銀行新総裁にジム・ヨン・キム氏
 抗レトロウイルス治療普及のための3by5計画の推進者として知られるジム・ヨン・キム氏(ダートマス大学学長)が世界銀行の新総裁に選任され、7月1日に就任しました。
 7月22日にワシントンDCの第19回国際エイズ会議開会式で行った演説「エイズの流行と貧困に終わりを」は冒頭でこの30年のエイズ対策の歴史を振り返り、常にエイズアクティビストたちがHIV/エイズ対策を切り開いてきたことを強調して大きな拍手を受けています。


・国内のエイズ患者報告が2年連続過去最多を更新
 エイズ動向委員会は5月24日、2011年新規HIV感染者・エイズ患者報告数の年間確定値を発表しました。()内は前年。
 HIV感染者報告         1056件(1095件)
 エイズ患者報告          473件( 469件)
 HIV感染者・エイズ患者報告計  1529件(1544件)
 エイズ患者報告数は2年連続で過去最多となりました。HIV感染者報告数、および感染者・患者報告数合計には2008年以降、頭打ち傾向も見られますが、これが新規感染の拡大が止ったことを示すものか、HIV/エイズの流行に対する社会的関心の低下の反映なのかは即断できません。


・2012年世界エイズデー国内啓発キャンペーンのテーマは《“AIDS” GOES ON...〜 エイズは続いている 〜》
 国内啓発キャンペーンのテーマ策定は、東京と大阪で公開のフォーラムを開催し、HIV/エイズの流行の現状はどうなっているのか、いま必要とされるメッセージはどんなものかといった議論を経て現場の意見を踏まえるかたちでまとめられた候補案をエイズ予防財団が厚労省に提案する方法をとっています。


・FDAがツルバダを曝露前予防投与薬として承認
 米食品医薬品局(FDA)が7月16日、抗レトロウイルス薬のツルバダをHIV感染の予防薬として承認しました。抗レトロウイルス薬はこれまでHIVに感染している人の治療用に使われていましたが、HIVに感染していない人の曝露前予防(PrEP)目的での使用が認められたのは初めてです。
 ツルバダのPrEPについては製薬会社ギリアドから承認申請があり、FDAの抗ウイルス薬諮問委員会が5月10日、承認するようFDAに勧告しています。ただし、諮問委の審議は8時間半におよび、かなり議論は分かれたようです。
 http://miyatak.iza.ne.jp/blog/entry/2689089/
 このため、FDAは副作用のモニターをどうするかなど、時間をかけて慎重に検討していましたが、2カ月後に結局、承認の結論を出しました。


・米ワシントンDCで第19回国際エイズ会議開催
 HIV陽性者に対する入国規制がなかなか撤廃できなかったため、米国では1990年の第6回サンフランシスコ会議を最後に国際エイズ会議が開けないでいました。7月22〜27日のワシントン会議は実に22年ぶりの米国開催でした。
最終日のプレスレリースの見出しは《AIDS 2012 Ignites Momentum for the Beginning of the End of the AIDS Epidemic(AIDS2012がエイズ流行の終わりの始まりに向けた動きに点火)》となっています。抗レトロウイルス薬の予防効果から「予防としての治療」に対する期待感がことあるごとに強調される最近の国際動向を反映した見出しですね。ただし、11月に来日したピーター・ピオットUNAIDS前事務局長は世界のエイズの流行の現状について《「終わりの始まり」などではなく、「エイズは続いている」という日本のキャンペーンテーマの方が正しいだろう》と語っています。
ワシントン会議では、世銀のジム・ヨム・キム総裁やロックスターのエルトン・ジョンさんの演説も注目を集めました。


・ミュージカル『RENT』東京公演
 1996年冬、NYのオフブロードウェーの実験劇場で始まったエイズの時代のミュージカル『RENT』はたちまちのうちにブロードウェーに進出し、トニー賞の主要部門を獲得するなど大ヒットミュージカルになりました。ブロードウェーのロングラン公演終了後も世界各地で上演されています。東京・日比谷のシアタークリエで10月30日から12月2日まで上演された東京公演も質の高い舞台で観客を魅了しました。
11月20日(火)〜25日(日)には《「「RENT」 LGBT Pride Week》としてHIV/エイズ分野と深くかかわる様々なイベントが会場で行われました。また、11月14日にはプロデューサーの小嶋麻倫子さんをゲストに招いてエイズ&ソサエティ研究会議の第112回フォーラム『RENT 小嶋プロデューサーに聞く 〜RENT & “AIDS” goes on…〜』も東京・渋谷区のカフェgossipで開かれています。
 サンスターの《「ネイルにレッドリボンを」〜指先からつながるエイズ啓発キャンペーン2012〜》(11.1〜12.1)、ザ・ボディショップの《第19回エイズキャンペーン「エイズはみんなの問題です」》(11.2〜12.25)など企業が中心になったロングラン・キャンペーンも存在感を発揮しています。音楽業界を中心にしたエイズ啓発運動AAA(Act Against AIDS/アクト・アゲインスト・エイズ)は1993年の活動開始以来、今年で20年目になりました。まさに継続は力ですね。


・第26回日本エイズ学会学術集会・総会で名古屋市大の市川誠一教授にアルトマーク賞、戦略研究に高い評価
 「つなぐ つづける ささえあう」をテーマにした第26回日本エイズ学会学術集会・総会は11月24日(土)〜26日(月)の3日間、横浜市港北区の慶應義塾大学日吉キャンパスで開かれました。25日午後には日本エイズ学会の最高賞であるアルトマーク賞を贈られた名古屋市大の市川誠一教授が「男性とセックスをする男性(MSM)を対象にした国内の予防、ケアの拠点づくり」をテーマに受賞記念講演を行っています。
1996年以来、東京や大阪など大都市圏のゲイコミュニティ当事者との緊密な協力と信頼関係のもとで進められてきた研究の成果は素晴らしいものですね。2006年から5年間にわたって進められた「エイズ予防のための戦略研究」など一連の研究は国内で高い評価を受けているだけでなく、ベストプラクティス事例として国際的にも注目されています。


・総選挙でも見事なまでに注目されなかったエイズ対策、各党の姿勢は?
12月16日の総選挙投開票を前に日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラスが各政党に送ったエイズ対策に関する公開質問の回答を公式サイトで公表しました。
http://www.janpplus.jp/

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