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zoom RSS TOP-HAT News 第51号(2012年11月)

<<   作成日時 : 2012/11/28 19:17   >>

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        第51号(2012年11月)
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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発メールマガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。
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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部


◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

1 はじめに エイズ学会の会場から

2 科学とコミュニティをつなぐ

3 市川誠一教授にアルトマーク賞

◇◆◇◆◇◆

1 はじめに エイズ学会の会場から
 「つなぐ つづける ささえあう」をテーマにした第26回日本エイズ学会学術集会・総会(名称がちょっと長いので以下、エイズ学会と略します)が11月24日(土)から26日(月)まで、横浜市港北区の慶應義塾大学日吉キャンパスで開かれました。このニュースが皆さんのお手元に届くのは11月の29日か30日ごろでしょうから「開かれました」と過去形にしましたが、実は原稿は開催中の学会会場で書いているので現在進行形です。

 今学会は特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議の副代表でもある慶應義塾大学文学部の樽井正義教授(倫理学)が会長でした。エイズ研究者や行政官、医師、看護師といった医療現場の実務者にとどまらず、さまざまな立場からHIV/エイズ対策に取り組むNGO/NPO関係者も多数参加しています。もちろんその中にはHIVに感染している人もいるし、していない人もいます。これは隔年で開催される世界レベルの国際エイズ会議や地域レベルのアジア太平洋地域エイズ国際会議にも共通して言えることですが、HIV/エイズ分野の学会や大会議の特徴ですね。

 エイズ学会は毎年、世界エイズデー(12月1日)前後に開かれます。今年は少し早めですが、慶應義塾大学の三田祭が開かれている間なら日吉キャンパスの施設が使用しやすくなるという樽井会長の戦略的かつ財政的発想から11月24〜26日となったようです。

その直前の20日には国連合同エイズ計画(UNAIDS)が世界のHIVとエイズの流行に関する最新報告書「Results」を発表し、さらにその前の週の15日には世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)の新しい事務局長が米ブッシュ(息子さんの方です)政権のもとで地球規模エイズ調整官として活躍したマーク・ダイブル氏に決定しています。つまり、そのう・・・11月はエイズ関係の話題が国際レベルでも盛りだくさんなので、あれもこれもと欲張って紹介していると収拾がつかなくなってしまいそうですね。

国際的な話題は次号以下でもおいおい紹介していくということにして、今回は第26回エイズ学会関連の話題を中心に報告したいと思います。悪しからず。


2 科学とコミュニティをつなぐ
 エイズ学会初日の24日午後には、プレナリーセッション(全体会議)で国連合同エイズ計画(UNAIDS)の前事務局長として1990年代から世界のエイズ対策を牽引してきたピーター・ピオット博士(ロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長)が過去30年のエイズの流行とその流行に対する世界の対応を総括する講演を行いました。また、公益財団法人エイズ予防財団の木村哲理事長(東京逓信病院院長)が長期にわたるエイズ診療の臨床経験も踏まえ、わが国のエイズ対策の総括的レビューと今後の展望を報告しています。空間的な広がりと長い時間軸を見据えてHIV/エイズの流行というパンデミックへの対応を考える貴重なセッションでした。

 ピオット博士は1996年から2010年までUNAIDSの初代事務局長として活躍されています。この期間に世界全体でみると、抗レトロウイルス治療(ART)のアクセスが拡大し、HIVの新規感染やエイズ関連の死者数が減少傾向を示すようになりました。HIV/エイズ対策は大きな成果を上げたといっていいでしょう。わが国にはUNAIDS発足以前の1994年に横浜で第10回国際エイズ会議が開かれた際、国際エイズ学会(IAS)の事務局長として準備のためにしばしば来日しており、日本の研究者やNGO/NPOのアクティビストらにも親しい友人、知人が多くいます。

 講演の冒頭でもピオット博士はこの点に触れ、「日本の決定プロセスは複雑で、苦労もしたが、そのためにいろいろな人と知り合うことができ、友好を深める機会にもなった」と思い出を語りました。世界のエイズの流行については11月20日にUNAIDSが発表した報告書の中から、エイズの流行状況を示す1985→95→2005→2011年の世界地図を示し、「歴史的に振り返るとウイルスは信じられないくらい早く広がった」と述べています。

UNAIDS推計によると、世界のHIV陽性者数は3400万人に達しており、すでにエイズで亡くなった人を含めるとこの30年余りの間にHIVに感染した人の数は6000万人を超えています。ピオット博士はこうしたデータを紹介しつつ、エイズの流行はまさしく世界が真剣に対応すべきパンデミックであったし、いまも依然としてあり続けていることを強調しました。また、多少のリップサービスはあるのでしょうが、エイズ対策を進めるうえで人権を重視する姿勢が不可欠であることに言及する中で、今学会の会長である慶應義塾大学の樽井正義教授(倫理学)については「エイズとの闘いに挑む世界でも希有な哲学者」と高く評価しました。

 さらに、冷戦終結後の複雑な国際的政治環境の中で、UNAIDSの初代事務局長として新たな安全保障概念を提示しつつエイズ対策を推進してきた苦労と経験から、エイズの流行という人類史上にまれにみるパンデミックに対応するには、(1)保健分野だけでなく広い視野で政治や政策をとらえること、(2)セックスやドラッグと関連した社会的な偏見や差別への対応が予防や治療の普及を進めていくうえでも重要な意味を持っていること、(3)ゲイコミュニティから始まったアクティビズムがエイズ対策を進めていく大きな原動力になってきたことなどを強調しました。

 治療面では1996年にバンクーバーで開かれた第11回国際エイズ会議で、抗レトロウイルス薬の多剤併用療法(HAART)の高い発症防止、延命効果が大きな話題になったことが紹介されました。ピオット博士はバンクーバー会議開会式のスピーチで、このHAART、現在はARTと呼ばれる治療法を途上国の人たちも受けられるようにしなければならないと演説したそうです。

 しかし、当時のHAARTは患者一人の薬代が年間で1万2000〜1万4000ドルもかかる高価な治療法であり、「そのような治療の普及など、途上国では無理だ」と多くの医師や研究者が主張していました。

 「エイズムーブメントはそれでも諦めなかった」とピオット博士は振り返ります。「治療を受ける権利は、基本的な人権として尊重されるべきであり、国際社会はこのささやかな正義を実現する責務がある」という考え方がそうしたムーブメントの大きな支えになり、治療薬の価格を下げて途上国でも入手可能にする努力が続けられてきました。

 ピオット博士によると、ウガンダでは年間の治療薬のコストは患者一人当たり7000ドル、1500ドルと段階的に下がっていき、インドのジェネリック薬の活用もあって、最近では途上国におけるファーストライン(治療開始時)の治療薬の組み合わせなら年間150〜200ドルとなっています。

 予防に関しては、タイやブラジルなどで、トップリーダーシップ(政治指導者の意思)と市民社会のアクティビズム(現場に根ざした活動)の組み合わせが大きな成果を生み出してきたことをピオット氏は紹介しています。また、2001年の国連エイズ特別総会におけるコミットメント宣言、02年の世界エイズ・結核・マラリア基金(世界基金)の設立など21世紀初頭から国際社会が積極的にエイズ対策と取り組んできたことの意義を強調し、「途上国で抗レトロウイルス治療を受けているHIV陽性者の数は2011年末時点で800万人に達しています。10年前は20万人以下だったことを考えると、これは国際的な協力と連帯の大きな成果ということができます」と語っています。

 ただし、UNAIDSは途上国で抗レトロウイルス治療が緊急に必要なHIV陽性者数を約1500万人と推計しているので、この800万人という数字は必要な人のほぼ半数にようやく到達したという状態を表わすものでもあります。ピオット博士は「エイズはもう終わったというような発想があるが、終わりが近いと考えるのは間違いである」と警告しています。

世界のエイズ対策資金は2001年以降、大きく増え、2009年には160億ドルに達しています。ただし、その後は国際的な経済危機の影響で、頭打ちからやや減少の傾向にあり、治療の普及をこれからも進めていくことが困難になりつつある現実も一方ではあるからです。「現状は、終わりの始まりなどといえる状態ではなく、日本のキャンペーンテーマで指摘されているようにAIDS Goes onと考えるのが正しいだろう」とピオット博士は指摘し、「エイズとの闘いは短期的対応から、長期的な対応へと移っていかなければならない」との認識を示して講演を締めくくっています。


3 市川誠一教授にアルトマーク賞
 エイズ研究やエイズ対策に大きな功績を果たした研究者に贈られる日本エイズ学会のアルトマーク賞と若手研究者を励ますECC山口メモリアルエイズ研究奨励賞の授賞式が25日、学会会場で行われました。アルトマーク賞は名古屋市立大学の市川誠一教授(公衆衛生)、ECC山口メモリアルエイズ研究奨励賞は佐藤佳氏(京都大学ウイルス研究所)と西島健氏(国立国際医療研究センター)に贈られています。

 アルトマーク賞の市川誠一教授は「男性とセックスをする男性(MSM)を対象にした、国内の予防、ケアの拠点づくり」をテーマに受賞記念講演を行い、涙で声を詰まらせながら1996年以来の研究の成果を報告しました。

市川教授の研究は東京や大阪など大都市圏のゲイコミュニティの当事者との緊密な協力と信頼関係のもとで進められてきました。名前の「誠」の字の通り、コミュニティ当事者を裏切らない誠実で持続的な研究姿勢があって初めて可能となった信頼関係であり、2006年から5年間にわたって進められた「エイズ予防のための戦略研究」など一連の成果は、国内で高い評価を受けているだけでなく、ベストプラクティス事例として国際的にも注目されています。

 また、戦略研究の成果は2011年以降、東京・新宿二丁目のコミュニティセンターaktaをはじめ、MSMを対象にした全国6カ所の予防啓発拠点で「HIV/AIDS予防啓発のためのコミュニティセンター」事業に引き継がれています。こうした事業について、市川教授は「中長期的な計画を持ちながら進めていく必要がある」と述べて受賞講演を締めくくりました。国内のコミュニティレベルでの対策から得られた教訓と前日のプレナリーセッションでピオット博士が強調した「短期的対応から長期的な対応への移行の必要性」とはほぼ共通の認識を示しており、この時期に市川教授がエイズ学会の最高賞を贈られたことの重要性が改めて際立つかたちにもなりました。

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2013/04/01 16:00

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