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zoom RSS TOP-HAT News第22号(2010年6月)

<<   作成日時 : 2010/06/30 12:00   >>

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        第22号(2010年6月)
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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人AIDS&Society研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発メールマガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

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AIDS&Society研究会議 TOP-HAT News編集部


  ◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

1 はじめに 感染報告の減少をどう受け止めるか

2 対策に複眼的な視点を 国連事務総長報告から

3 母子感染対策でレッドカード・キャンペーン

     ◇◆◇◆◇◆


1 はじめに 感染報告の減少をどう受け止めるか

 厚生労働省のエイズ動向委員会は5月27日、昨年(2009年)の年間新規HIV感染者、エイズ患者報告の確定値を発表しました。HIV感染者報告1021件、エイズ患者報告431件で、感染者・患者報告の合計は1452件となっています。

感染者報告数は08年、07年に次ぎ3番目で、前年比ほぼ1割減。患者報告数は過去最高だった08年と同数で、感染者・患者報告数の合計も08年、07年に次ぐ第3位でした。感染者・患者の合計報告数は7年連続で増加していましたが、09年は減少に転じています。

 動向委員会へのエイズ患者報告には、エイズ発症以前にすでにHIV感染者として報告されている人は原則として含まれません。現実には感染者報告と患者報告のダブルカウントもあるようですが、少数にとどまると見ていいでしょう。患者報告は、おおむねエイズを発症するまで自らのHIV感染に気付かなかった(もしくは、うすうす気付いていても確認できなかった)ケースと考えることができます。

これまでの研究の成果では、HIV感染を知った人は、他の人に感染しないよう注意を払う傾向が強くなること、抗レトロウイルス治療を受けている人は体内のHIV量が低く抑えられ、他の人への感染リスクが減ることなどが指摘されています。そうだとすれば、エイズ発症以前に自らのHIV感染を知り、治療を開始する人の割合が増えることで、社会全体のHIV感染リスクは低くなると考えることができます。逆にエイズ患者報告の割合が高くなることは、社会的に見てHIV感染の機会が増えることを示唆する指標なのかもしれません。そうしたことを念頭に置いて、エイズ動向委員会の2003年以降の感染者・患者報告数と報告全体に占める患者報告の割合(%)を見てみましょう。

       2003年  2004年  2005年  2006年  2007年  2008年  2009年
エイズ患者   336   385   367   406   418   431   431
HIV感染者   640   780   832   952   1082   1126   1021
  計     976   1165   1199   1358   1500   1557   1452
  割合   34.4%  33.0%  30.6%  29.9%  27.9%  27.7%  29.7%

 エイズ患者報告の割合は03年以降、低下を続け、08年には27.7%にまで下がりましたが、09年はリバウンドして、06年レベルに戻っています。

また、動向委員会によると、09年の保健所等におけるHIV抗体検査数は15万0252件、相談件数は19万3271件で、いずれも前年比15%程度の減でした。検査も相談も減り、その結果、HIVに感染した人が早期に感染を知る機会も失われたのだとすれば、09年の感染者報告の減少は、新規感染そのものの減少を示すのではなく、HIVに感染しているのにそれに気付かない人が増えていることの反映と考える必要があります。

検査や相談はどうして減ったのでしょうか。理由の一つとして昨年4月以降の新型インフルエンザの流行の影響が指摘されています。確かに新型インフルエンザ対策のために保健所の他の業務が滞る時期はあったようですが、昨年4月以降の全期間でそうだったわけではありません。また、動向委員会報告では、新型インフルエンザの流行が下火になった今年1〜3月期も減少傾向は続いています。新型インフルエンザの影響だけでは説明がつきません。報告に表れた見かけの減少は、HIV/エイズの流行の縮小ではなく、エイズ対策に対する関心の低下を反映したものであり、感染の拡大傾向が今後も続いていくことへの警告と考えるべきでしょう。



2 対策に複眼的な視点を 国連事務総長報告から

 2001年6月の国連エイズ特別総会で採択されたコミットメント宣言をはじめ、エイズ対策に関するこの10年間の国際的な約束はどこまで果たされているのか。その進捗状況を検証するため、国連では毎年、事務総長が各国からの情報を集約して総会に報告しています。2010年版の報告は6月9日、ニューヨークの国連本部で開催された第64総会のHIV/エイズに関する全体会合で、潘基文事務総長のスピーチをアシャ-ローズ・ミギロ副事務総長が代読するかたちをとって行われました。国連合同エイズ計画(UNAIDS)と国連事務局からそれぞれ発表されたプレスレリース(発表文)の日本語の仮訳がHATプロジェクトのブログに掲載されています。

UNAIDSプレスレリース
http://asajp.at.webry.info/201006/article_6.html
国連事務局プレスレリース
http://asajp.at.webry.info/201006/article_7.html

 2つの発表文によると、潘事務総長は、年間の新規HIV感染数(推計)がこの10年で17%も減少していることを成果として評価する一方、「HIV陽性者2人が新たに抗レトロウイルス治療を始める間に5人のHIV新規感染が発生している」という現状にも注意を喚起しています。対策は前進しているとはいえ、いまなお流行の拡大ペースに追いつける規模ではない。これが世界の現実です。事務総長は、世界的な経済危機により各国のエイズ対策への資金拠出が縮小傾向にあることも危惧し、「対策に必要な費用は巨額かもしれないが、不作為の費用はもっと大きくなる」と楽観を戒めています。

 現状に対するこうした認識は共通していますが、2つのプレスレリースは各論部分で強調点がやや異なるようです。UNAIDSは《事務総長は母子保健に焦点を当てたミレニアム開発目標(MDGs)の目標5をとくに強調し、「あまり知られていないことだが、HIV感染症は世界の出産可能年齢の女性の主要な死因の一つである」と付け加えた》と述べています。HIVの母子感染予防に焦点をあてた内容です。

 ミレニアム開発目標については、目標年の2015年を5年後に控え、9月にニューヨークで過去10年の達成状況を検証する首脳会合が開かれる予定です。UNAIDSはこの点を意識して発表のトーンを決定したのではないでしょうか。

 MDGsの8目標のうち、地球規模の感染症対策を対象にした目標6(HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止)は十分とはいえないまでも、それなりの成果が報告されています。これに対し、目標4(乳幼児死亡率の削減)、目標5(妊産婦の健康の改善)に関しては、成果がはかばかしくないことがしばしば指摘されてきました。途上国の母子保健政策への支援をどう強化するか。この点が国際的な課題として注目されるのは非常に大切なことですが、うっかりすると感染症対策はもう成果が出ているのだから、その資金を他に回そうといった議論も出てきかねません。これではせっかく見え始めた目標6の成果も台無しになり、目標4や5の達成もますます困難になってしまうでしょう。

 UNAIDSが「出産可能年齢の女性に与えるHIV感染症の影響の大きさ」と「HIV母子感染予防策への抗レトロウイルス治療の貢献」を強調したのは、そうした背景があるからだと思います。HIV/エイズの流行のような影響領域の広い現象では、メリハリの効いたメッセージを送り出すことが大切です。その意味でも、HIVの母子感染予防の重要性は大いに強調すべきですが、同時に母子感染予防に力を入れれば、HIV/エイズ対策の課題はすべて解決するわけではないということも認識しておく必要があります。

 国連事務局のプレスレリースは冒頭部分で以下のように述べています。

 《事務総長はその中で、人権を侵害するような社会的、法的な障害がHIV/エイズ対策の有効性を妨げる要因になることを指摘し、多数の国でいまなお存在するこうした障害を取り除くことがHIV/エイズの流行を克服する大きな課題のひとつであることを強調した》

 これは重要な指摘ですね。具体的な課題としては《社会から排除されがちな人たち》への支援があげられています。

 《「HIV感染の最も高いリスクにさらされている人たち(男性とセックスをする男性、薬物注射使用者、セックスワーカー)は流行に積極的に立ち向かう役割を担える層なのに、現状では社会から排除されていることが多い」と事務総長は述べ、そうした社会的対応がエイズの流行との闘いを大きく妨げていることを指摘した》

 HIVの感染の高いリスクにさらされている人々を排除して有効なエイズ対策を進めることはできないということでしょう。これは途上国だけに向けられたメッセージというわけではありません。

 《「ユニバーサルアクセスは、治療や予防のサービスを必要とする人がそうしたサービスを受けられるようにすることのみを意味しているのではない。社会から排除されがちであったり、犯罪者として扱われたり、権利を奪われたりしている人たちにサービスが届くよう特別の努力を払うことも含まれている」と事務総長は付け加えた》

 ユニバーサルアクセスというのは、HIV/エイズに関する予防、治療、ケア、支援のサービスが必要な人なら誰でも利用できる状態を意味しています。単に経済的に薬が手に入るかどうかということだけが課題なのではありません。報告書が指摘する《HIV感染の高いリスクにさらされている人々》は、日本のエイズ対策では個別施策層として位置づけられています。日本のエイズ対策にも大いに係わりのある指摘というべきでしょう。



3 母子感染対策でレッドカード・キャンペーン

 サッカーのワールドカップが開かれている南アフリカのヨハネスブルクで6月12日、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が《HIVの母子感染防止に取り組む「レッドカード」キャンペーン》の発表記者会見を行いました。世界中の視線が南アフリカに注がれていたW杯開会式の翌日に会見を設定し、2014年にブラジルのリオデジャネイロで次期W杯が開催されるまでの4年間に世界中からHIVの母子感染の発生をなくすことを目標に掲げています。

 UNAIDSの発表によると、世界全体でHIVに感染して生まれる赤ちゃんは年間43万人に達し、サッカーの試合時間90分の間にほぼ80人の赤ちゃんが新たにHIVに感染している計算になります。母子感染はとりわけアフリカに集中しており、《アフリカの多くの地区でエイズ関連の病気が乳幼児や小さな子供たちの死亡原因のトップを占めている》ということです。

 このキャンペーンを推進するため、UNAIDS親善大使で世界的に有名なサッカー選手でもあるドイツのミシェル・バラク氏、トーゴのエマニュエル・アデバヨール氏が今回のW杯出場チームの主将に「ソエトからリオデジャネイロへ、エイズにレッドカードを出し、赤ちゃんがHIVに感染するのを防ごう」というアピールへの署名を呼びかけました。記者会見が行われた6月12日時点で、出場32チーム中、開催国の南アフリカや前回優勝のイタリアを含む18チームのキャプテンがすでに署名を行っています。

 UNAIDSはプレスレリースの中で、《お母さんと赤ちゃんの命は、HIV検査と相談、抗レトロウイルス薬の治療と予防使用へのアクセス、安全な出産法、家族計画、乳幼児の適切な栄養指導などの組み合わせによって救うことができる》と強調しています。

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