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zoom RSS TOP-HAT News第17号(2009年11月)

<<   作成日時 : 2009/12/02 14:16   >>

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        第17号(2009年11月)
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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人AIDS&Society研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発メールマガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

AIDS&Society研究会議 TOP-HAT News編集部

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◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆
1.はじめに 新型インフルエンザの流行とエイズ対策

2.途上国の400万人以上が抗レトロウイルス治療

3.予防効果は限定的 タイのHIVワクチン臨床試験

4.文献紹介『成果を生み出すための共同行動』

     ◇◆◇◆◇◆

1.はじめに 新型インフルエンザの流行とエイズ対策

 新型インフルエンザの流行の影響で、国内のHIV検査やエイズに関する相談の件数が減っていることが厚生労働省のエイズ動向委員会への報告で話題になっています。9月25日の第118回動向委員会、11月24回の第119回動向委員会とも減少傾向が顕著に表れています。

第118回委員会で対象となった期間は、今年(2009年)3月30日から6月28日までのほぼ第2四半期に相当する3カ月間ですが、前年同期に比べ、抗体検査件数・相談件数ともに減少しており、まとめの委員長コメントでも次のように指摘していました。

1.感染経路別に見ると、同性間性的接触によるHIV感染が増加傾向であることに変わりはない。
2.地方自治体等の関係者の努力によりHIV抗体検査件数は第1四半期ではこれまでより増加したが、第2四半期では減少した。
3.各自治体においては、利用者の利便性に配慮した検査・相談事業を推進し、予防に関する普及啓発に努めることが重要である。
4.早期発見は、個人においては早期治療、社会においては感染の拡大防止に結びつくので、HIV抗体検査・相談の機会を積極的に利用していただきたい。

 この時期はちょうど、米国とメキシコで新型インフルエンザの発生が報告され、国内でも患者が確認されたことから厚生労働省で対策を急いでいた時期です。このため、検査・相談件数の減少には「保健所が新型インフルエンザ対策に人出をとられ、HIVの検査、相談業務に手が回らなくなった」「世の中に新型インフルエンザに対する流行への不安が広がり、相対的にHIV/エイズに対する関心が低下した」という2つの理由が考えられます。おそらく、その両方でしょう。

 11月24日の動向委員会では第3四半期にほぼ相当する6月29日から9月27日までの3カ月間が対象になりました。この間の検査・相談件数について委員長コメントは次のように指摘しています。
 
 《保健所におけるHIV抗体検査件数(速報値)は26,947 件(前年同時期速報値35,932 件)、自治体が実施する保健所以外の検査件数(速報値)は6,365 件(前年速報値7,800 件)。保健所等における相談件数(速報値)は43,549 件(前年同時期速報値57,792 件)》

 HIV抗体検査の件数は前年同時期のほぼ4分の3。つまり、25%も減っています。また、第3四半期の新規HIV感染者報告数は249件(前回266件、前年同時期294件)、エイズ患者数は96件(前回116件、前年同時期119件)でした。減少傾向がくっきり出ています。新型インフルエンザの流行により、HIV/エイズに関する検査・相談件数が減少し、それが新規のエイズ患者・HIV陽性者の報告数の減少にもつながったと考えるべきでしょう。

 第2四半期では「保健所が新型インフルエンザ対策に人出をとられ、HIVの検査、相談業務に手が回らなくなった」ということが指摘されていましたが、第3四半期では全国の保健所などのHIV抗体検査は通常通り行われているということです。したがって、第3四半期に検査・相談件数がさらに減少した主な理由は「世の中に新型インフルエンザに対する流行への不安が広がり、相対的にHIV/エイズに対する関心が低下した」ということでしょう。新型インフルエンザの国内の流行が本格化したのは10月以降だったことを考えれば、新規のエイズ患者・HIV感染者報告数への新型インフルエンザ流行の影響は現在進行形の第4四半期(10〜12月)にはさらに顕著になる可能性もあります。

 人々の関心が取りあえず、いままさに起きている急性期の感染症の流行に向かうのはやむを得ないことでしょう。したがって、重大ではあるが流行の拡大スピードはゆるやかなHIV/エイズに対して当面の関心が低下し、検査や相談を受ける人が減るのもまた、ある程度、やむを得ないのかもしれません。ただし、新型インフルエンザの流行に遠慮して、HIVが感染を控えておくなどということはない。この点はきちんと認識しておく必要があります。

日本語の「流行」には英語にすると「fashion」と「epidemic」の2つの意味があります。ファッションを「話題の流行」、エピデミックを「感染症の流行」と考えると、2つの流行は、必ずしも同じ時期に同じように広がったり、下火になったりするものではありません。

 新型インフルエンザが流行しているので、それに気を取られ、エイズの流行についてはあまり話題にならなくなった。そんな時期も当然、あります。現にいまがそうなのかもしれません。HIVの感染は話題の流行とは別のメカニズムで拡大していくということは改めて、指摘しておく必要があるでしょう。わが国の新規HIV感染者・エイズ患者の報告数は過去6年、増加を続けてきました。

しかし、今年夏以降の報告状況を見ていると、2009年の報告数は前年の1557件を下回ることになりそうです。新型インフルエンザの流行の影響という変動要因を考えずに、その数字を受け止めるとどうなるでしょうか。

 《6年連続で増加していた新規報告が2009年は減少に転じた》 → 《流行の拡大に歯止めがかかったのではないか》 → 《ああ、よかった》 → 《エイズ対策にはもうそれほど力を入れなくてもいいのではないか》

 このような発想で報告減という見かけの流行の数字に引きずられてエイズ対策が後退するようなことがあれば、後で結局、しまったということになります。先回りするようですが、エイズの流行に対する最近の鮮やかな関心の低下ぶりを考えると、これから発表されるデータはそうしたことを考慮しながら見ていく必要がありそうです。


2.途上国の400万人以上が抗レトロウイルス治療

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)と世界保健機関(WHO)、国連児童基金(UNICEF)は9月30日、途上国の抗レトロウイルス治療(ART)普及状況などをまとめた報告書「普遍的アクセスに向けて〜保健部門におけるHIV/エイズ介入策の拡大」(Towards Universal Access 〜 Scaling up Priority HIV/AIDS interventions in the health sector)を発刊しました。

 報告書によると、途上国では2008年末時点で400万人を超える人が抗レトロウイルス治療(ART)を受けられるようになっています。これは「3バイ5」(2005年末までに300万人に抗レトロウイルス治療を提供)というかつての目標が、時間的には遅れたものの、着実に成果を上げていることを示す数字と見ることができます。ただし、HIVに感染し、一定の時間が経過して治療を必要とする人の数はそれ以上に増えているので、いまなお治療の普遍的アクセスは実現困難な目標のままです。低中所得国の08年の1年間の進展状況は以下の指標で示されています。

                07年12月       08年12月
ARTを受けている人数       297万人        403万人
              (268万〜326万人) (370万〜436万人)
ARTカバー率             33%          42%
                (30〜36%)     (40〜47%)
ARTが必要な15歳以下の子供  19万8000人     27万5700人
母子感染予防のART受診率      35%          45%
                (29〜44%)     (37〜57%)

 対策は進展し、成果もあがってはいるけれど、流行の拡大に追いつけるレベルには達していません。したがって、いまこそ対策の規模拡大に力を入れる必要があるというのが報告書の訴えたいところでしょう。報告書およびプレスレリースの英文pdf版と日本語訳は以下のサイトで見ることができます。
 報告書
 http://data.unaids.org/pub/Report/2009/20090930_tuapr_2009_en.pdf
 プレスレリース
http://data.unaids.org/pub/PressRelease/2009/20090930_pr_treatment_en.pdf
 プレスレリースの日本語訳
 http://asajp.at.webry.info/200910/article_2.html



3.予防効果は限定的 タイのHIVワクチン臨床試験

 タイで行われていたHIVワクチンの大規模臨床試験で一定の予防効果が認められたという発表が9月にあり、世界の研究者の注目を集めました。世界保健機関(WHO)と国連合同エイズ計画(UNAIDS)は《ワクチンが成人のHIV感染を防ぎうることをはじめて示す結果であり、科学的に非常に重要な成果ということができる》と歓迎の報道向けに歓迎声明を発表しています。ただし、感染予防効果は31.2%にとどまっているということで、実用化にはまだまだ道は険しいが、それでもいままでのHIVワクチンの臨床試験結果に比べると希望が出てきたということでしょうね。

 10月に入ると、国際会議や医学雑誌などで、今回の結果に対する詳細な報告が紹介されるようになりました。残念ながら、最初に伝えられたほどの成果ではなかったという評価が定着してきたようです。国際エイズ学会(IAS)のサイトには、そうした報告の一つとして、10月20日付のニューイングランド医学雑誌(NEJM)の論文が《タイのHIVワクチン臨床試験の結果によると、予防効果は限定的》というタイトルで紹介されています。今回の臨床試験の評価は《最もよくても、HIVに対しては、ほどほどの予防効果にとどまることが示されている。2つのワクチンの組み合わせ群とプラシーボ群を比較した3つの分析のうち、2つには統計的に有意な差は認められないとしている一方、残る1つの分析はかろうじて統計的に有意であるとしている》ということです。

 IASの記事によると、タイの臨床試験は、AIDSVAX(糖蛋白質120[gp120]B/Bワクチン)とALVAC-HIV(カナリーポックス・ベクター・ワクチン、vCP1452)という2つのワクチン候補を組み合わせて行われています。このうち、AIDSVAXは、単独では過去2回、臨床試験に失敗し、ALVAC-HIVの方は、HIVワクチン臨床試験ネットワークから、効果が弱く、さらに試験を行うメリットはないとの判定を受けていたそうです。つまり、単独では効果が期待できないとされていたワクチン候補ですが、組み合わせて使ってみたということですね。

 臨床試験の参加者は《18〜30歳の健康な男女1万6402人で、ほとんどが異性間の性行為がHIV感染のリスクと考えられる。臨床試験の担当者によると、47.5%がHIV感染に関しては低リスク、28.4%が中程度のリスクと判定している》ということです。この1万6402人をプラシーボ群とワクチン投与群にほぼ2等分し、ワクチン投与群には《最初にALVACワクチンを4回、その後でさらにgp120ワクチンを2回》という方式でワクチン接種が行われ、6カ月間にわたる一連のワクチン接種が終わった段階でHIV検査を受け、さらに3年間にわたって6カ月ごとに検査を受けていったそうです。

 臨床試験結果に関するIASの記事については、エイズ&ソサエティ研究会議のHATプロジェクトのブログに日本語で紹介されています。
 http://asajp.at.webry.info/200910/article_3.html

 また、WHOとUNAIDSの報道向け声明もHATプロジェクトのブログで日本語訳を見ることができます。
 http://asajp.at.webry.info/200909/article_3.html



4 文献紹介『成果を生み出すための共同行動』

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が7月に発表した『成果を生み出すための共同行動 2009〜11年におけるUNAIDSの成果目標の枠組み』は、普遍的アクセスの実現に向けて、2009年から11年までの3年間にどのようなことをすればいいのかをまとめた報告書です。

 HIVの予防、治療、ケア、支援の普遍的アクセスの達成は、国際的なエイズ対策の重要な目標ですが、最近はUNAIDSも2010年を普遍的アクセスの達成目標年次として掲げることは控えているようです。あと1年ちょっとしかないので、実現は到底、困難という判断でしょう。

しかし、それでは、普遍的アクセスの実現はあきらめるのかというと、そういう話にはなりません。2010年は無理にしても、今後も実現に向けて努力していきましょうということですね。UNAIDSは国連10機関が共同スポンサーになって作られている組織であり、報告書では、各機関がそれぞれの強みを生かしつつ、各国の流行の実情にあわせて、お互いに協力し合うこと、さらに国連の枠を超えて、市民社会組織やHIV陽性者のネットワークとの協力が必要なことを強調しています。また、成果を上げることが求められる9つの優先分野も示されており、国連システムの内部だけでなく、国際的なエイズ対策の動向を把握する上でも貴重な資料といえそうです。

 報告書の日本語訳はHATプロジェクトのブログに掲載されています。
 http://asajp.at.webry.info/200909/article_1.html

 少し内容を紹介しましょう。報告書によると《エイズ対策への将来の投資》は以下に挙げられている考え方に基づいて行われるということです。

 ・HIV陽性者およびHIVに影響を受けた人々の力になる
 ・新規感染の予防や当事者への成果が測定できる
 ・人権、ジェンダーの平等を促進する
 ・現時点で得られる最善の科学的根拠と知識に基づいて実施する
 ・HIVの予防、治療、ケア、サポートを統合し、包括的に対応する
 ・開発課題の面から幅広い視野のもとで成果を追求する
 ・外部資金を最も効果的に活用できるよう整合性のある対策を進める

 また、9つの優先分野は次のようになっています。

 ・HIVの性感染を減らす
 ・HIV陽性の母親の死と赤ちゃんのHIV感染を防ぐ
 ・HIV陽性者が確実に治療を受けられるようにする
 ・HIV陽性者が結核で死亡するのを防ぐ
 ・薬物使用者のHIV感染を防ぐ
 ・エイズ対策の妨げになる懲罰的な法律や政策、行動、偏見と差別を排除する
 ・女性、女児に対する暴力を止める
 ・若者が自らをHIV感染から守れるようにする
 ・HIV感染の影響を受けている人たちを守る社会の仕組みを強化する
 

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