エイズ&ソサエティ研究会議・HATプロジェクト

アクセスカウンタ

zoom RSS 世界経済危機とHIV予防、治療プログラム : 問題点と影響

<<   作成日時 : 2009/07/10 00:18   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

(解説)世界銀行と国連合同エイズ計画(UNAIDS)が、HIV予防、治療プログラムに対する世界金融危機の想定しうる影響について調査した結果を報告書にまとめ、2009年7月6日に発表しました。同年3月時点で71カ国から集めたデータをもとに、金融危機がすでにHIV治療を受けている約400万人と緊急にHIV治療を開始する必要がある700万人に与える治療提供拡大に関する影響、および感染の高いリスクにさらされている人たちを中心にした予防対策プログラムへの影響を分析し、対応策を提言しています。

 
世界経済危機とHIV予防、治療プログラム : 問題点と影響
 報告書原文(pdf版)は  http://data.unaids.org/pub/Report/2009/jc1704_econcrisis_hivresponse_en.pdf

エグゼクティブ・サマリー

 途上国が保健と貧困対策の分野で達成した最近の成果が世界経済危機のためにおびやかされようとしている。 HIV陽性率の高い国では、経済危機がHIVプログラムにどんな影響を及ぼし、その結果、何が予想されるのか。どうすれば影響の悪化を回避できるのか。2009年3月に71カ国(これらの国で抗レトロウイルス治療を受けている人は340万人に達する)から集められた情報は以下のようなことを示している。

 ・調査対象国の11%が、経済危機はすでに抗レトロウイルス治療プログラムに影響を及ぼしていると答えている。
  これら8カ国で治療を受けているHIV陽性者は42万7000人である。

 ・調査対象国の31%(抗レトロウイルス治療を受けている人の数では180万人)が今年中に影響が出てくると予想している。
  治療の必要があるのに受けられずにいる3分の2の人々を対象にした治療拡大計画が失速するリスクがある。

 ・見通しが非常に不安定になっている。
  調査対象国の30%(21カ国)が治療提供に影響が出るかもしれないと答えている。とくにラテンアメリカとアジアにこうした国が目立つ。これらの国では経済危機の影響は確認できるものの、HIVプログラムの主要財源である政府予算に与える影響がどの程度なのかは把握できないでいる。


 ・いくつかの地域で治療プログラムの力が落ちているように見える。
  サハラ以南のアフリカ、中・東欧、カリブ諸国で影響が出てくるという回答が多い。北アフリカ、中東、ラテンアメリカではそうした予測をする国はなく、アジアでは2カ国だけだった。


 感染のリスクにさらされている人が増えている: 死亡率、発症率が増し、治療提供の予期せぬ中断や短縮があり,HIV感染のリスクは増え、将来の費用負担が高くなり、保健システムの中での負担が増し、経済成長や社会開発の成果が失われる(注1)

 ・死亡率、発症率の増加
  抗レトロウイルス治療の提供規模拡大に関するこれまでの資金的な約束が守られれば防げるのに、多数の人がHIV感染症(結核の増加を含む)を発症し、死亡することになる。調査の対象になった71カ国で治療を受けている人は340万人に達しているが、それは治療を必要とする人の3分の1に過ぎない。

 ・感染リスクの拡大
  HIV治療をやめると、感染した人から他の人への感染が起きやすくなるので、治療の中断はHIV感染の増加にもつながる。妊婦の抗レトロウイルス治療が中断すれば、HIVに感染して生まれる赤ちゃんが増える。

 ・資金負担の増加
  治療を勝手に中断したり、再開したりしていると、耐性ウイルスの出現や治療の失敗の確率が高くなり、より高価なセカンドラインの薬の組み合わせに切り替える時期が早まることになる。

 ・保健システムへの負担の増加
  治療の中断や短縮は、HIV関連の病気を発症する人の増加につながり、予算削減で市民病院の混雑は一段と激化することになる。保健医療の専門家が発症、死亡することから保健システムのサービス提供能力は低下する。

(注1)こうした見通しは、今回の調査から得られたものではなく、HIVの流行に関する他の医学、経済学的分析に基づくものだ。


 さまざまな事情により、各国の抗レトロウイルス治療提供能力が低下する。

 ・いくつかの国では、世帯収入の減少、および(為替の変動による)抗レトロウイルス薬の価格の上昇により、抗レトロウイルス治療の医療費が負担できなくなる。食糧安全保障が低下し、(抗レトロウイルス薬服用の前提となる)食糧の確保が困難になることから、治療を続けられなくなるリスクもある。  

 ・いくつかの国は抗レトロウイルス治療の提供が財政削減で危うくなっていると答えている。

 ・多数の国が、財源を主に海外からの援助に頼っている抗レトロウイルス治療プログラムについて、今後も続けていけるかどうか心配している。2009年には資金拠出者が援助額を大きく削減したという報告はない。しかし、調査対象の40%近い国が、現行の治療プログラムに関する資金援助の約束は2009年か2010年に終了すると答えており、それらの国の多くが、海外からの援助の増額は期待できず、むしろ減額されるのではないかと恐れている。


 予防対策はとくに厳しい状況に置かれている。

 ・調査対象国のうち、HIV陽性者数では75%を占める34カ国で、感染リスクの高い集団に対する予防対策が影響を受けると予測されている。
これは治療プログラムが影響を受けるだろうと予測する国よりはるかに多い。

 ・感染リスクの高い集団を対象にした予防対策は、政治的に削減しやすいことから、とりわけ脆弱である。
  この点は極めて心配である。予防対策が縮小すれば、それだけ感染が増え、将来の治療ニーズが拡大するので一段と莫大な費用がかかることになる。影響を受ける家族のために高額の福祉、経済コストがかかることも明らかだ。


 中心的課題は、いかにしてHIVの治療と予防のアクセスを維持、拡大するかである。以下のような介入策が必要となる。

 いまある資金をもっと有効に使う:

 ・とりわけ自国のエイズ対策予算の削減に直面している国に対しては、効果の低い予防、治療プログラムから効果の高いプログラムへと資金を配分し直すことができるよう技術的な支援を行う。

 ・すべての国で、資金を生かすためにより効果的で費用対効果の高いプログラムを追求していく。

 緊急の資金ギャップに対応する:

 ・海外からの援助資金に大きく依存している国では、政府機関と主要な国際資金拠出者との間の協力を強化する。何が資金の流れを妨げているのかを把握し、対応する。

 ・資金の流れが妨げられないよう必要ならブリッジ・ファイナンシングを提供する。

 ・緊急資金援助(注2)を受けている国には、社会保護パッケージの中に基本的なHIV対策資金が適切なかたちで確保できるようにする。

 プログラムの中断のリスクをモニターする:

 ・治療の中断を最小限に抑えるため、簡潔な警告システムを確立する。

 ・弱い立場にある国々を把握し、財政、および政策面でその国に適した支援を行えるようにするための調査をレギュラーで実施する。

 ・HIV感染の高いリスクにさらされている集団に対する予防プログラムなど効果の高い対策に対する資金カットを避ける。

 不安定な状況下での計画。多くの国が見通しの不確実性を指摘し、変化に対応した代替計画を求めている。

 ・代替計画は、変化を計算に入れ、想定しうる資金確保シナリオのもとで、治療のアクセスの継続と現実的な拡大計画、最も優先順位の高い予防プログラムの実施を可能にするものでなければならない。

 ・長期にわたり持続的に資金が得られるような資金確保戦略をまとめる。

 (注2)政府予算に直接、提供されるような資金援助。プロジェクト支援とは異なり、この資金には通常、特定の分野や目的などの使途指定はつかない。

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
世界経済危機とHIV予防、治療プログラム : 問題点と影響 エイズ&ソサエティ研究会議・HATプロジェクト/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる