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zoom RSS 第92回フォーラム報告『金融危機の中のエイズ対策〜激動の2008年の総括と09年への展望』

<<   作成日時 : 2009/01/08 22:03   >>

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第92回フォーラム報告
 『金融危機の中のエイズ対策〜激動の2008年の総括と09年への展望』

 エイズ&ソサエティ研究会議の第92回フォーラムは2008年12月17日(水)夕、東京都港区三田の慶應義塾大学三田校舎研究室棟A会議室で開かれ、約40人が参加した。フォーラムでは、国際エイズ学会(IAS)のクレイグ・マクルア事務局長を招き、『金融危機の中のエイズ対策〜激動の2008年の総括と09年への展望』をテーマに講演していただくとともに、質疑も含め世界のエイズ対策の現状について話し合った。

 ジュネーブに本部を置くIASは1988年、世界規模の国際エイズ会議を主催する学際的な組織として発足。マクルア氏は2004年にその事務局長に就任し、IASの改革を進めてきた。現在の会員は研究者、保健医療従事者、NGOのメンバー、各国政策担当者ら183カ国1万3000人で、マクルア氏就任当時の6000人から倍以上に増えている。

 フォーラムではまず、IASのアジア太平洋地区選出の理事である東京大学医科学研究所、岩本愛吉教授がマクルア氏のもとで進められているIASの改革などを紹介。続いてマクルア氏が、昨年8月にメキシコシティで開かれた第17回国際エイズ会議(AIDS2008)の成果と今後の課題を中心に最近のエイズ対策の動向について報告した。メキシコ会議には、取材にあたる2000人の各国ジャーナリストを含め、194カ国から2万4000人が参加し、その半数は国際エイズ会議には初参加だったという。

 マクルア氏はメキシコ会議からの主要メッセージとして、(1)治療がHIV感染の予防にも大きな役割を果たしている (2)HIV/エイズ対策を保健システム全体の強化につなげることが重要である (3)HIV陽性者やHIVに感染しやすい立場に置かれている人々の人権を守ることが予防の観点からも重視されている (4)地域ごとに異なる流行の状態を理解し、実情にあわせた対策をとる必要がある−の4点を強調した。

 (1)については、抗レトロウイルス薬投与がすでに母子感染予防、および医療機関の針刺し事故による曝露後感染予防に効果をあげていることを指摘したうえで、メキシコ会議では抗レトロウイルス治療の普遍的アクセス実現が予防対策にもたらすより大きな効果が議論されたことを報告した。現状では治療を必要とする人の30%程度にしか提供できていない抗レトロウイルス治療を必要な人ならだれでも受けられるようにするのが、HIV治療の普遍的アクセスである。マクルア氏は「2010年までに普遍的アクセスを達成することに国連の全加盟国が合意しており、その目標の実現に向けて新たに浮上しているのが予防戦略として治療をとらえる考え方である。治療の必要な人が早期に抗レトロウイルス治療を受け、HIVの量を個人の体内からもコミュニティ全体としても減らしていければ、新たな感染は起きにくくなり、新規感染の劇的な減少につながるのではないか」と述べた。

 (3)のメッセージにもかかわることだが、治療のアクセスを拡大するには、検査の普及をはかり、HIVに感染している人が自らの感染を知ることが必要になるとの考え方からも、人権の意識を高めることの重要性が指摘されているという。HIV陽性者の権利が保障されず、差別から守られない状態では、不安のために検査を受けることができず、HIVに感染していてもそれを知らないために治療は受けられない人が多くなるからだ。また、マクルア氏は治療の予防に対する効果を期待することは、コンドームの使用やきれいな注射針の確保といった他の感染予防の努力が必要ないということではまったくないとも強調した。

 (2)の保健システムの強化について、マクルア氏はまず、「HIV/エイズ対策の27年の歴史の中で、最初の20年余りは失敗の歴史であり、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)や米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)、日本を含む主要8カ国(G8)政府の援助、さらにゲイツ財団のような民間財団を通じ、巨額な資金が投じられるようになったのはこの5、6年のことだ」と延べ、最近のエイズ対策の大きな進展が逆に、途上国の保健基盤の脆弱さを課題として浮上させるようになったとの見方を示した。また、ここ数年の成果に関しては、 巨額の資金を治療や予防に活用する際、初めの2、3年はパイロットプログラムの実施が中心なので比較的、成果をあげやすいのに対し、次の段階になり、各国が対象を全国レベルに広げようとすると、脆弱な保健基盤という困難な現実に直面せざるを得ないことを課題としてあげた。

 こうした課題の解決に必要なのは、エイズ対策か保健基盤強化かという対立的な論争ではなく、エイズ対策の成果が途上国の保健基盤強化の動きにまで波及効果をもたらし、逆にHIV/エイズ対策も全体の保健基盤強化を抜きには遂行困難なところにまでレベルが上がってきたという認識を持つことだろう。

 (3)と(4)のメッセージは日本を含むアジアにも大きくかかわることであり、マクルア氏は、男性と性行為をする男性(MSM)、薬物使用者、セックスワーカーといったHIV感染のリスクに最もさらされやすい人たちの人権が守られないことから、感染が広がっている現状が世界にはあると強調した。また、「メキシコ会議の議論が示しているのは、同性愛行為に対しても売春に対しても、性行為の犯罪化が当事者のコミュニティの人々に情報やカウンセリング、コンドームなどの予防の手段に対するアクセスの確保を困難にしているということだ。薬物依存については、司法警察的な取り締まりからリハビリテーションや情報提供とカウンセリングに力を入れる公衆衛生的なアプローチへと焦点を移さない限り、薬物使用がHIV感染の拡大に拍車をかける状態は続くだろう」と述べ、人権を守れるようきちんとバランスの取れた法律や政策が必要であるとの見解を示した。

 一方、メキシコ会議後に世界を大きく揺るがせた金融危機の影響については、「世界の経済は非常に厳しい状態だが、HIV/エイズ対策の観点からすると、それでも過去5年に達成した成果は継続させていかなければならない。20年前なら、経済の発展があって初めて保健医療の基盤を整え、教育を充実させることができるというのが世界の指導者の考え方だっただろうが、現在の指導者たちはすでに保健医療や教育が開発の土台になることに気付いている」と語った。人々が健康であり教育を受けられることが発展の大前提であるとの認識から、IASの会員たちは現在、各国政府に手紙を出し、途上国の保健医療や教育への投資に理解を得る活動を行っているという。

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