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<<   作成日時 : 2008/09/26 16:59   >>

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        第10号(2008年9月)
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 TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人AIDS&Society研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発メールマガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

AIDS&Society研究会議 TOP-HAT News編集部

◆◇◆ 目次 ◇◆◇

1 はじめに セプテンバーショック

2 この1年のエイズ対策をめぐる世界の動向と課題を報告

3 フォーラム案内「エイズキャンペーンとメディア」

4 用語解説で学ぶエイズ対策講座2 普遍的アクセス

     ◇◆◇◆◇◆

1 はじめに セプテンバーショック
 世の中、どうなっているんだろうと思いたくなる1カ月間でした。国内では9月に入ったとたん、福田康夫首相が記者会見で辞任を表明し、政局が一気に流動化しました。自民党総裁選、新内閣発足、そして総選挙の行方は・・・と政治の季節はいまなお、続いています。7月の北海道洞爺湖サミットでは国際保健が重要課題として取り上げられ、「国際保健に関する洞爺湖行動指針」が成果文書となりました。この指針の評価を含む最近の国際的な動きについては、《2 この1年のエイズ対策をめぐる世界の動向と課題を報告》の中で、稲場雅紀さんが分かりやすくまとめたものを紹介させていただきました。貴重なレポートです。どうかお読み下さい。

 洞爺湖行動指針については、外務省の実務担当者も、外務大臣も、首相も替わってしまい、そして誰もいなくなった状態ですが、国際的な約束は担当者が交替したからといって反故にできるものではありません。きちんとしたフォローアップが必要でしょう。

 2001年の9・11米中枢同時テロから7年。世界貿易センタービル跡地で行われた追悼式典の涙が乾く間もなく、ニューヨークの人たちは新たな悪夢に震えました。米証券大手リーマンブラザースの破綻が9月15日に明らかになり、ウオール街の金融危機は一段と深刻の度を増しています。ブッシュ米大統領は7月末に第2次PEPFAR(大統領エイズ緊急救済計画)を承認し、今後5年間でエイズを中心にした感染症対策と途上国の保健基盤強化のために480億ドルを拠出することを盛り込んだ法律に署名したばかりです。米国経済が今後、急坂を転げ落ちるように悪化していくとしたら、その拠出の約束はどうなるか。世界のエイズとの闘いの観点からは、そうした懸念もぬぐえません。

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)は9月2日、著名な公衆衛生学者であり、1990年代の世界のエイズ対策に最も大きな影響力を持っていた研究者であるジョナサン・マン博士の没後10周年にあたり、博士の業績をたたえるプレスレリースを発表しました。1998年9月2日、ニューヨーク発ジュネーブ行スイス航空機がカナダ東部ノバスコシア沖で墜落し、事故機の乗客だったマン博士夫妻も帰らぬ人となりました。プレスレリースには次のように書かれています。

 《マン博士は予見力に満ちた医師であり、人権と公衆衛生の密接な関係を強調する指導者、科学者でもあった。HIV陽性者が自らの命、およびエイズ対策にかかわるようなプログラムの作成に参加する権利を擁護するために博士は闘ってきた。彼は政治の指導者に対し、陽性者を対等なパートナーとして遇するなどHIV/エイズ対策が人権確保を基本としたアプローチをとるよう働きかけてきた》

 1992年にはHIV陽性者に対する米国の入国規制に抗議し、ボストンで開催予定だった第8回国際エイズ会議の会場が急遽、オランダのアムステルダムに変更されています。この劇的な変更劇を主導したのもマン博士でした。先ほどのブッシュ大統領が署名した法律の中では、米国のHIV陽性者に対する入国禁止条項の撤廃も盛り込まれています。ボストン改めアムステルダム会議から16年、マン博士の残したもの大きさを改めて認識させられる思いです。



2 この1年のエイズ対策をめぐる世界の動向と課題を報告 
エイズ対策について国際的にいま、大きな議論が展開されています。東京都新宿区四谷三丁目の「ねぎし内科診療所」で9月3日に開かれたAIDS&Society研究会議の第90回フォーラムでは、G8NGOフォーラム・保健医療ワーキンググループ・リーダーの稲場雅紀氏がこの点について報告しました。稲場氏は今年5月の第4回アフリカ開発会議(TICADW=横浜市)、6月の国連エイズ対策ハイレベル会合(ニューヨーク)、7月の北海道洞爺湖サミット(北海道洞爺湖町)、8月の第17回国際エイズ会議(メキシコシティ)と、国際保健とエイズ対策をめぐる最近の重要な会議のすべてに参加されてきました。21世紀に入ってダイナミックな展開を見せる国際保健分野の動きの中で、HIV/エイズとの闘いをどう位置づけるのか。国内のエイズ対策を考えるうえで不可欠でありながら、普段は見過ごされがちなこうした課題に関し、貴重な情報を提供していただける報告でした。

 稲場氏によると、エイズ対策分野の途上国向け援助資金は1990年代にはほとんど増えていないが、2001年以降、大きく増額されるようになりました。2007年には、その金額が円換算で年間約1兆円に達し、さらに2008年には米国で今後5年間に480億ドルの資金拠出を約束する第2次PEPFAR(米大統領エイズ緊急救済計画)が承認されています。そうした事情を背景に「国際保健の中で、エイズ対策の資金拠出が分不相応に多く、バランスを欠いている」「エイズはすでに《特別》な病気ではなくなっているのだから、特別扱いはやめ、他の疾患と同等の扱いをすべきだ」といったエイズ対策への懐疑論も一方で、語られるようになりました。

 また、こうした懐疑論がきっかけになって、垂直的アプローチ(個別疾病別対策)と水平的アプローチ(プライマリー・ヘルスケアの拡大と保健基盤の強化)のどちらを優先させるべきかという水平垂直論争が過熱化した時期もあります。ただし、この古くて新しい論争は、過去にもマラリア対策、結核対策などでそれぞれに部分的な成功と失敗を経験しながら今日に至っている経緯もあることから、最近は両者を対立的にとらえるのではなく、相互に補完するアプローチとしてとらえていく傾向が強くなっているそうです。

 稲場氏は懐疑論に対し、(1)90年代にエイズは黙殺されてきたことが見過ごされている (2)エイズ対策の額を下げることでは問題は解決しない という2つの問題点を指摘しています。1990年代には、必要な対策資金の増額がほとんどなされず、それがアフリカのHIV感染の急激な拡大の大きな要因のひとつとなったことは、途上国のHIV/エイズとの闘いの現場からも常々、指摘されてきました。稲場氏は《2000年代のエイズ援助資金増大は「遅きに失した」とはいえるが、「問題の巨大さに釣り合わない」とはいえない》と懐疑論に対する反論を要約しています。また、2000年以降の資金の拡大については、HIV/エイズ分野の当事者運動が大きなモメンタム(勢い)を作ってきたことの重要性を強調しました。

 報告の中で稲場氏はさらに、国際保健分野における最近の注目すべき動きとして北海道洞爺湖サミットにも言及しています。国際保健に関しては昨年11月、高村外相が東京都内で演説し、北海道洞爺湖サミットの重要課題として位置づけ国際的な指針作りをすすめる考えを明らかにしました。福田首相も年明けにその方針を確認し、サミットでは「国際保健に関する洞爺湖行動指針」が成果文書として採用されています。この指針の重要な点は保健システムの強化と感染症対策のバランスのとれた拡大を目指すことが方針として明確に打ち出されたことです。

 また、指針自体はG8各国政府の保健専門家が作成を担当した政府間の合意文書ですが、そこに盛り込まれた内容には、NGOの意見もかなり反映されています。稲場氏によると、指針はNGO側にとって必ずしも満足な内容ではなく、とりわけ資金面では踏み込んだ約束がほとんどなされずに期待外れだった面もありますが、それでも約束の履行状況を毎年検証する仕組みを作ることが決まるなど、今後につながる成果を残すかたちにはなったということです。

指針策定の準備作業の段階から、NGOのメンバーや保健分野の研究者らが積極的に関与の姿勢を示し、G8政府の方も幅広く意見を吸収できる枠組みを確保する努力をしてきたことは評価できるでしょう。ただし、約束の実現に向けたフォローアップの作業を今後、しっかりと進めることができるかどうかで評価は分かれてくるともいえそうです。


3 フォーラム案内「エイズキャンペーンとメディア」
第91回 AIDS&Society研究会議フォーラム「エイズキャンペーンとメディア」が以下の要領で開かれます。
 日時 10月25日(土)午後3時〜5時
 場所 コミュニティセンター「akta」
     (東京都新宿区新宿2丁目15−13 第二中江ビル301)
       http://www.rainbowring.org/contact/index.html
報告者
  張由紀夫(Rainbow Ring) 「戦略研究としての啓発活動」
  東島由幸(TOKYO FM「バイブル」ディレクター) 「キャンペーンに見る媒体特性」
  宮田一雄 (産経新聞編集委員)  「エイズ報道とキャンペーン」


4 用語解説で学ぶエイズ対策講座2 普遍的アクセス(Universal Access)
 エイズの原因となる抗レトロウイルス治療(ART)の普及のため、2005年7月に英国のグレンイーグルズで開かれた主要8カ国首脳会議(G8サミット)の共同宣言では、「普遍的アクセス」が打ち出された。宣言は「2010年までに治療を必要とするすべての人に対し、治療の普遍的アクセスを実現するとの目標に可能な限り近づくためのHIV予防、治療、ケアのパッケージの策定、実行」を約束している。「普遍的アクセス」を手短に説明すれば「治療を必要とする人なら誰でも必要な治療が受けられる状態」ということになるだろう。治療だけでは地球規模の深刻なエイズの流行に対応できないという認識から、対象が「HIV予防、治療、ケアのパッケージ」に拡大されていることも注目しておく必要がある。

 実はグレンイーグルズサミットの段階ではまだ、前回(TOP-HAT News 9)紹介した「3バイ5計画」が進行中だった。2005年末までに300万人に必要な治療を提供するという「3バイ5」は、緊急に治療が必要な人のせめて半数は治療を受けられるようにしようという計画だったが、2005年7月時点ではすでに目標達成は不可能なことが明らかになっていた。それなのにさらに目標のハードルを上げ、「普遍的アクセス」をぶちあげたのは、先へ先へと目標を延ばし、治療の普及の動きを持続させていこうという政治的な意図があったからだろう。こういうことがしれっとした顔で言えなければ、国際舞台で活躍する政治家にはなれないということなのかもしれない。

 もっとも、さすがに後ろめたさがあったのか、「目標に可能な限り近づくための」などというフレーズも滑り込ませている。国際政治の観点からはなかなか味わい深い文言ではあるが、こういうものは一度、ぶち上げたらもう後戻りできない面もある。翌2006年6月、ニューヨークの国連本部で開かれた国連エイズ対策レビュー総会では「包括的予防プログラム、治療、ケア、支援に対する普遍的アクセスの2010年までの実現」が盛り込まれ、「限りなく近づく」などという逃げのレトリックはあっさりと外されてしまった。その後、エイズ対策に対する懐疑論が蒸し返される局面もあったが、今年7月の北海道洞爺湖サミットでは、「国際保健に関する洞爺湖行動指針」の中で「2010年までにエイズに関する予防・治療・ケアと支援への普遍的アクセス達成の目標に向けた努力の強化を確認」している。あと2年ちょっとで目標を達成するのは極めて困難だが、各国が最善の努力を尽くすことを再確認した意義は小さくないだろう。

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