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zoom RSS メルマガ:TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)第3号

<<   作成日時 : 2006/10/19 22:59   >>

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        第3号(2006年9月)
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 TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人AIDS&Society研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発メールマガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。AIDS&Society研究会議 TOP-HAT News編集部

◆◇◆ 目次 ◇◆◇
・はじめに エイズ動向委員会報告から何を読むか
  ・最近のニュースから
トロントの国際エイズ会議でフリッカ・チア・イスカンダールさんが基調演説
アジア太平洋エイズ委員会が発足
HIV関連の保健医療従事者の不足に対応する新たな計画が発進
・シリーズ HIV/エイズと企業の社会貢献3
    NGO−労働組合国際協働フォーラムの場合
    秘訣3 「HIV陽性者こそ最大のリソースである」

◆◇◆◇
◎はじめに エイズ動向委員会報告から何を読むか
 厚生労働省のエイズ動向委員会によると、今年第2四半期の国内のHIV感染者報告数は248人で、四半期ベースでは過去最多となりました。エイズ患者数は106人で、これまでで2番目に多くなっています。日本国内におけるHIV/エイズの流行の拡大傾向を反映した数字としてとらえる必要があります。
 8月22日の動向委員会終了後、同委員会の記者会見が厚労省でありました。また、報告概要は委員長コメントとともにエイズ予防情報ネットのウエブサイトでも公表されています。 http://api-net.jfap.or.jp/htmls/frameset-03.html
第2四半期の報告対象となった期間は2006年3月27日から7月2日までの約3カ月間で、正確には四半期には1週間分だけ長くなっています。
 ただし、HIV感染者の報告数はこれまで最も多かったのが平成16年6月末〜9月末の209人ですから、今回は1週間程度の誤差以上に突出して報告が多かったといえます。
 HIV感染者とエイズ患者の報告数を合わせると354人で、こちらも過去最高でした。
 今回の報告を男女別の内訳で見ると、男性が感染者(226人)、患者(97人)で、どちらも9割以上を占めています。
 その男性の年齢別では、感染者が20代、30代で全体の約66%(163人)、40歳以上は31%(76人)となっています。前回調査よりも20代、30代は11ポイント減少し、40歳以上は9ポイント増加しているということで、委員長コメントでも「40歳、50歳以上の増加が特徴的であった」と特に言及しています。若者の感染が増加していることのみをあまり数字の裏付けもないまま強調していた従来のコメントと比べれば、おじさんにも目を向けるようになったのは、大いなる進歩です。動向委員会のメンバーがちょっと変わったのかもしれません。
 しかし、残念なのは、同じ委員長コメントの中に「若年層の感染者および患者報告数の増加よりも、40歳以上の感染者及び患者報告数が大幅に増加したことは利用者の利便性に配慮した検査・相談事業を推進した結果によるものと思われ、HIV検査普及週間など、検査体制の整備について一定の成果が認められる」と、あまりにも大胆な推論を展開してしまっていることです。
 おいおい、本当かよと心配になってきますね。そんなに簡単に40歳、50歳の男性の方々が検査に行くのならHIV/エイズとの闘いで世界中が苦労することはないでしょう。HIV感染にまつわる偏見や差別をどう減らしていくのか。もう20年以上も同じような指摘がことあるごとになされ、いまなお繰り返されていることもなかったでしょう。
 検査の普及に力を入れました。したがって「今年は」HIVの感染を心配する人がたくさん検査を受けるようになり、HIVに感染していることを発症前に知る人も大幅に増えました。ああ良かった。わが国のHIV/エイズ対策はこれでいいのだといった結論にならないよう、動向委員会のメンバーや疫学の専門家には、より詳細な分析をお願いしたいところです。そのためには、HIV/エイズ対策のさまざまな現場で苦闘を続けている人たちの経験や意見も大いに参考になるはずです。
 感染経路別では、感染者報告の場合、同性間の性感染が160人(約65%)で最も多く、異性間の性感染53人(約21%)の3倍以上でした。エイズ患者報告では同性間の性感染と異性間の性感染はそれぞれ40人で同数です。
 このあたりも、ゲイコミュニティにおける感染の拡大状況とコミュニティ内部の予防対策や検査普及に向けた努力という両方の報告増加要因を視野において分析を試みる必要があります。日本のHIV/エイズの流行がゲイコミュニティではついに流行の第2段階とされる局限流行期(cocentrated epidemic)に入りつつあるのではないかということも最近は指摘されているだけに、この点は重要です。
 ところで、20代、30代と40歳以上の対比は委員長コメントに基づくものですが、40歳を境にするこの線の引き方もちょっと微妙です。
 試みに30歳以上と30歳未満で報告数を分けてみるとどうなるでしょうか。
 感染報告を10歳区切りの年齢別でみると、10歳未満1件、10代8件、20代67件、30代96件、40代42件、50歳以上34件となっています。つまり30歳未満は76件なのに対し、30歳以上は172件と圧倒的に30歳以上の方が多いことがわかります。
 30代は若者でしょうか。エイズ関係の国際会議などでは、ユースは25歳未満としてとらえられています。その感覚からすると、少なくとも統計上は、日本で若者の感染が多いと世上、言われているほど報告は多くありません。企業活動の中核を担うような働き盛りの年齢層の感染の方が圧倒的に多いのです。
 もちろん、若者の間に今後、HIVの感染が広がっていくであろうということは十分に予測可能ですから、若者がHIV/エイズの流行に関心を持ち、自らHIV感染の予防やHIV検査、エイズ治療などに必要な行動を取れるようにする条件を整えることは大切です。
 それと同時に、現在の感染の中心が少なくとも報告ベースでは30代、40代で占められていることも十分、対策に反映されていかなければなりません。そうした視点があれば、企業のHIV/エイズ対策もまた、自ずとこれまでとは異なるフェイズに入っていくことになるでしょう。


◇◆◇◆ 最近のニュースから ◆◇◆◇

◇トロントの国際エイズ会議でフリッカ・チア・イスカンダールさんが基調演説
カナダのトロントで開かれた第16回国際エイズ会議の開会式(8月13日)で、HIV陽性者を代表してインドネシアのフリッカ・チア・イスカンダールさんがスピーチを行ないました。会議の模様をカバーするウエブサイトkaisernetwork.org/ の開会式のトランスクリプトにその演説が紹介されています。
http://www.kaisernetwork.org/health_cast/hcast_index.cfm?display=detail&hc=1791 
また、日本語仮訳はHATプロジェクトのブログ http://asajp.at.webry.info/ で見ることができます。
フリッカさんは演説の冒頭、アジア太平洋地域のHIV陽性者を取り巻く厳しい現実を指摘し、トロント会議のテーマである「Time to Deliver(約束を果たすとき)」の実現がいかに重要であるかを強調しました。
彼女はまた、「はっきりさせておきたいのですが、力づけること(empowerment)または参加すること(involvement)というのは、単に証言をすることではありません」とも語っています。
会議に出てHIV陽性者として証言すること、そして、それを聞くことで何かが完結したような幻想を持ってはいけないということでしょうか。
宣言や約束はたくさん出ているのに、HIV陽性者の多くが困難な日々を生き、過酷な死を強いられている。それは、なぜなのか。どうして、いまなお、「Time to Deliver」なのか。演説は厳しいトーンに貫かれています。
しかし、最後は「希望」について語り、「私は約束を果たすことができると思っています。あなたは、どうですか」とフリッカさんは問いかけています。
HATプロジェクトのブログには、2005年7月に神戸で開かれた第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議の開会式でのフリッカさんのスピーチも掲載されています。あわせてお読みください。

◇アジア太平洋エイズ委員会が発足
エイズ分野に関わるアジア太平洋地域の主導的な開発経済学者、政治家、公衆衛生の専門家、市民社会代表ら10人の委員で構成されるアジア太平洋エイズ委員会が2006年7月、インドのニューデリーで発足しました。トロントの第16回国際エイズ会議開会中に国連合同エイズ計画(UNAIDS)が発表したプレスレリースによると、「この委員会のゴールは、域内各国の指導者および政府に対し、緊急にエイズの流行に対応することを促すためのきちんとしたエビデンスに基づく政策提言を行なうことである」とのことです。神戸の第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議でも活躍したUNAIDSアジア太平洋地域サポートチームのプラサダ・ラオ氏が仕掛け人のようで、日本からは国際交流センターの山本正理事長が委員に入っています。山本さんは世界基金支援日本委員会の事務局長でもあり、HIV/エイズ対策の分野でもこれまで以上に存在感を発揮していただきたい方です。日本から自信をもって送り出すことのできる市民社会の代表といえるでしょう。プレスレリースの日本語訳はHATプロジェクトのブログ http://asajp.at.webry.info/、原文はhttp://data.unaids.org/pub/PressRelease/2006/20060814_PR_AsiaPac_en.pdf
でご覧ください。

 ◇HIV関連の保健医療従事者の不足に対応する新たな計画が発進
同じくトロントの第16回国際エイズ会議の会場で、2006年8月15日、世界保健機関(WHO)は医師、看護師など保健医療従事者の世界的な不足状況を解決するため、国際労働機関(ILO)、国際移住機構(IOM)と共同で新たなプログラムを開始することを発表しました。そのプレスレリースによると、保健医療従事者の不足はとりわけ途上国が深刻で、HIV/エイズの予防、治療の普遍的アクセスの実現に対する重大な脅威になっています。また、保健医療分野では専門的な教育を受け、経験の豊かな人材が、より高い収入を求め、途上国から先進国へと流出している現実も事態をより一層、深刻なものにしているということです。WHOはアフリカやアジアを中心に途上国57カ国で400万人以上の保健医療従事者が新たに必要だと推計しており、「Treat、Train、Retain」と名づけられた計画は「治療」「研修」とともに「確保と保持」が3本柱の一つとなっています。こちらもプレスレリースの日本語訳はHATプロジェクトのブログ http://asajp.at.webry.info/ で見ることができます。


◇◆◇◆ HIV/エイズと企業の社会貢献 その3 ◆◇◆◇

◎NGO−労働組合国際協働フォーラムの場合
   秘訣3 「HIV陽性者こそ最大のリソースである」

 NGOと労働組合が共通して抱える課題に取り組むことを目指し2004年9月1日に発足したNGO−労働組合国際協働フォーラムは昨年(2005年)、『働くHIVポジティブ 職場とHIV/エイズ』というパンフレットを作りました。そのパンフの裏表紙に印刷されているのが、この一言。
 「HIVはだれにでも降る雨の一粒」
いいねえ。雨がァ〜、小粒ゥのォ〜(古いか)と、鼻歌でも出てきそうです。わが国のエイズ対策史上、屈指の名コピーというべきでしょう。対抗できるのは、強いていえば、何年か前に開催されたポジティブ・ライブス写真展の「私たちは あなたです」くらいなのでは。
 いきなり話がマニアックになってきたので、先を急ぎましょう。
 このパンフレットは実は各企業の職場の安全などに取り組む労働組合の有志の人たちとHIV陽性者グループとの共同作業の結果、生まれました。その経緯についてNGO−労働組合国際協働フォーラムの見里朝士さん(国際食品労連日本加盟労組連絡協議会 IUF−JCC)、日本HIV陽性者ネットワークJaNP+の長谷川博史さんのお2人が2005年10月22日(土)の午後、東京都立駒込病院で開かれたAIDS&Society研究会議の第83回フォーラムで詳しく報告しています。
HIV/エイズと企業の社会貢献シリーズ第3弾の今回は、その報告も紹介しながら「企業や労働組合がエイズ対策に取り組もうとするとき、HIV陽性者は排除すべき対象などではなく、最も豊かなリソース(人的資源)であり、力強いパートナーである」ということを強調したいと思います。

 わが国では、「エイズパニック」と呼ばれる騒ぎが起きた1987年以降、「エイズは誰もがかかりうる病気です」「他人ごとではありません」「自分自身の問題として身にしみて感じてください」といったメッセージが繰り返し、うんざりするほど伝えられてきました。
エイズは1981年、米国の大都市のゲイコミュニティで不思議な病気が広がっているとの報告によって流行の存在が認識され、その結果として流行の初期にはゲイ(男性同性愛者)の病気という印象が非常に強く人々の心に植えつけられるようになりました。
 一方、日本国内では、例外的なケースを除けば、流行の初期段階にはHIVが混入した血液製剤の使用による血友病患者の感染が報告例の大半を占めていました。
 つまり、エイズは社会のごく一部のきわめて少数の集団に属する人たちのかかる病気という印象が強く、HIV/エイズ対策への関心が低いのもそうしたイメージのせいであると考えられていたからこそ、エイズ対策に関係する人たちからさかんに「誰もがかかりうる、他人ごとではない病気」というメッセージが強調されることになったのです。
 振り返ってみると、強いインパクトを残そうとするあまり、過度に不安や恐怖の感情に訴え、「あなたもいつ感染するのか分かりませんよ」といった警告のメッセージを発することに性急過ぎた感は否めません。「脅し」の効果に頼るようなこうした啓発の手法は短期的にはともかく、HIV/エイズの流行のような長期にわたる現象に対しては有効な方策とはいえません。一時的に危機の気分を作り出すことはできるにしても、予防のための息の長い対策を支える助けにはならないからです。

 「HIVはだれにでも降る雨の一粒」
同じことを言っているようでも、『働くHIVポジティブ 職場とHIV/エイズ』の裏表紙に印刷されたキャッチコピーは印象がまったく異なります。なによりも、恐怖に追い立てていくような押し付けがましさがありません。HIVに感染した人を排除していこうとするニュアンスも消えています。
表紙には傘を持った9人の後姿の写真が掲載されています。これもカラフルで、後姿だけど自然体という感じが伝わってきて、裏表紙のコピーとうまく連動しています。

見里さんによると、NGO−労働組合国際協働フォーラムは貧困削減、人権擁護、平和構築、環境保全など国連ミレニアム開発目標MDGsを達成するためのセクターを超えた協力を目指しています。HIV/エイズ対策も当然、重要課題のひとつに入ります。
 啓発パンフレットの作成は、NGO−労働組合国際協働フォーラムにとってHIV/エイズ分野の最初の活動でした。職場における啓発活動のツール作りを目的に土曜日の午後、JaNP+のメンバーらを講師に招いてワークショップを開催しました。パンフレットの作成過程そのものをHIV/エイズに関する理解を深めるための機会として重視し、12人の労組関係者が参加したワークショップは8時間に及んだということです。
また、実際に作成されたパンフレットにワークショップの参加者がモデルとして登場するための写真撮影会も開きました。表紙に登場する傘を持った9人の後姿は写真撮影会の成果であり、「HIVはだれにでも降る雨の一粒」もワークショップの中であれこれ意見を交わしながら生まれたキャッチコピーだということです。
パンフレットの内容もワークショップの成果を生かし、HIV/エイズの流行に関する基本的な情報に加えて、「職場では話せないHIV陽性者たちの声」「世界のHIV陽性者からのメッセージ」などが紹介されています。

わが国のHIV陽性者は厚生労働省のエイズ動向委員会に報告されているだけでも1万人を大きく超えています。自分のHIV感染に気づいていない人も含めれば、推定ですでに3万人から5万人に達しているのではないかと考えられています。その多くが働き盛りの年齢層の人たちです。
HIVに感染した人がすでに一緒に働いているという現実は、多くの企業で、まだはっきりとは見えていないにしても、厳然として存在しています。実際にHIV陽性者の話を聞き、何が必要なのか、職場のHIV/エイズ対策はどうすれば有効に機能するのかといったことを議論していかなければ、啓発の素材もこうした現実を反映したものにはなりません。
 その意味で『働くHIVポジティブ 職場とHIV/エイズ』の制作は、職場のエイズ対策を考えるうえで画期的な出来事でした。JaNP+代表の長谷川博史さんはAIDS&Society研究会議のフォーラムで、パンフレットのコンセプトはリアリティであるとして、「知識では行動は起きない」「リアリティを持つことが予防、啓発、支援のいずれにも必要」などと指摘しています。
 
 国際協働フォーラムはさらに、2005年7月に開かれた第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議(神戸)のコミュニティフォーラムにも参加するなど今後の職場における啓発活動のための基礎作りを進めてきました。緩やかに進行する危機に対応するには、見えない現実を見ようとする想像力が必要です。パンフレットがそうした想像力を養うツールとして普及し、HIV陽性者が自らの感染を明らかにした方が働きやすい環境が職場に整ってくれば、そのときこそ、わが国で本当に「他人ごとではないエイズ対策」が実現することになるはずです。

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